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①アテンション!アオイ×聖女(予)魔王養うの2作品コラボ小話:○○しないと出られない部屋~アオイ×ルーティエ&セーラ×マオ

新作の「聖女にされる予定だった私、召喚を阻止した魔王を現実世界で養う」が完結したので、コラボさせてみたものです。

アオイ×ルーティエと新作の主人公セーラ(聖良)×マオ(魔王)の四人が登場。

よって、文量も会話も多め。。。


※アテンションの時系列的には第一章の終わったところの魔国学園入学前辺りの二人です。


******


「ルティ、ホントごめんね。あんまり可愛い扉だったものだから、つい……」

「ハァ、思わず追い掛けて正解でした。こんなところにアオイだけが入ったらと思うと……なんと恐ろしい。それにしても、落ちている物に触らないようとあれほど――」



 今回は落ちていたというよりも、【開けてみてね→】と書いてある看板の隣に、すごくポップなデザインのどこ○もドアのような扉だけが立っていたもので、これはウケ狙いにガチャッと開けて『異世界~!』とかやってみようかと思っただけなのに。


 まさか、こんなテンプレのような『○○しないと出られない部屋』なんてところに来ちゃうなんて誰が想像できます? って話でしょ。


 お題のプレートは出ているけれど、肝心の「○○」が埋まってなくてどうしたらいいのかよくわからない。その間、私は正座でルティのお説教を受けているんだけど、そろそろ足が辛い。


 ルティ、そろそろ……と声を掛けようと思ったところで、複数の足音が聞こえてきた。ルティも私より先に気付いていたので、少し警戒している。



「だから我は開けぬ方が良いと言うたではないか。どう見てもセーラの(マンション)の扉ではなかったであろう?」

「でも部屋番号は合ってるし、マオさんが実はサプライズでリメイクしたのかなって思ったの! それにあまりに開けるなと言われると、逆に開けてみてっていうフリなのかなって思うじゃない」



 マンションのドアをあんなポップな感じにリメイクしてもいいのだろうかという疑問と、あのレベルを果たして素人がDIYできるのか? という疑問が浮かぶも、今は打ち消す。


 なにやら揉めながら歩いてきたのは、私に馴染みのある日本語を話す女性。そして瞳の色が薄紫で少し耳が尖っている「外国人」で片付けるには少々ファンタジーな匂いを醸した、ルティとはまた違ったタイプの美丈夫。

 見た感じどちらも(見た目だけで言えば)私達よりも年上に見える、大人カップルだ。


 まずは、同郷っぽい女性に声を掛けてみる。



「こ、こんにちは~」

「こんにち……え? 日本人……と、えぇ!? 耳が尖って!! え、マオさん! 私また異世界召喚されちゃったの!?」


「セーラ、取り乱すでない。ここは……ふむ、時空の狭間のようなもの、か?」

「やはり……あなたもそう思いますか? サーチを掛けても何一つ掛からないので元々いた世界でもないようだとは思っていたのですが」



 全くの初対面で、多分違う世界から来た者同士のはずなのに、どうして男性二人はあっさりと普通に分析し合っているのだろうか? 肌色はダークエルフっぽいけど、耳がハーフとも違うし、顔つきも違うんだよね。


 あ、ルティがあちらの男性と話すなら、今の内にかつての故郷の人と話しておかなきゃ!



「さっきは急に話し掛けてごめんなさい。私、(あおい)って言います。あなたは日本人、ですか?」

「あ、ええ。私も取り乱しちゃってごめんなさい。やっぱりあなたも日本人? わぁ~良かった、一人でも仲間がいるって安心感が違う! 私は聖良(せいら)よ。ところで、あのパネルだけど……よくテンプレでも見るアレなのかしら?」



 ええ、アレでしょうね。そして聖良さん達が来たことでパネルのお題に変化が起きた。「○○」部分がぐにゃりと形を変え、文字が現れる。

 ということは、私達二組に課せられたお題ということなのだろう。



「「【嫉妬】しないと出られない??」」



 どういうこと? この場合、誰が落胆する側なのかという問題があるよね。ルティだったら一番楽勝なんだけどなぁ、なんなら『あの人カッコいいね』と言っただけでもできそうな勢いだし。

 ただ、これが逆だったらとか、全員とか、相手のカップルにだったりすると話はまた変わるよね。



「嫉妬……難題だわ。私が、なら多分……。でも、彼が嫉妬なんてする場面が全く思いつかない」

「え、そうなんですか? あの方は聖良さんのお付き合いしている方、なんですよね?」



 そうか。私も嫉妬はあるけどルティの比ではない上に、ルティを標準で考えるような脳みそと化していて気付かなかった。あんな美丈夫と付き合っていたら普通は女子側の方が嫉妬しちゃうよね。

 いいのか悪いのかルティのお陰で感覚がバグってた。



「あ、ええ。お付き合いっていうか……夫です。えっと……そちらもお付き合いしている方なのかな? 見た感じ、私達の世界の人ではない、のよね?」

「はい。私が彼の世界に転生しまして、そこで出会いました。彼はエルフ族でルーティエと言います」


「転生……。わぁ……なんかそういうのって密かにあることだったのかな? 私もちょっとだけ聖女召喚っていうのに巻き込まれて転移させられそうになったんだけど、マオさん……あ、彼は元魔王なんだけど、召喚を阻止してくれたお陰で元の世界に戻れたの。でも逆に彼を連れてきちゃって……」

「元魔王!? え、魔王様だったんですか!? 一緒にいて大丈……あ、すみません」


「ううん。私もどうなのかなって思ったけど、魔王って悪のイメージの方じゃなくて、()力の多い一()の略みたい。それに、彼はすごく家庭的で……正直、働いている私は助けられてばかりなのよ」



 聞けば、聖良さんは看護師としてバリバリ働いていて、元魔王さんを養っているらしい。女が家庭にっていう時代でもないし、共働きや家事分担なんかも当たり前に聞かれるようにはなったけど、それでも少数派ではあるのかな。自立した女性は同性から見ても素敵だなと思う。

 

 

「アオイ……そちらはもしかして?」

「うん、私と同じ国から来た人だったの! 同郷の方とまさかこんなところで会うなんて思ってもなかったから嬉しい!!」


「して、ここが時空の狭間なのだとすれば、元に戻るも、各々の世界に戻るも可能ということなのであろうか?」


「「え!?」」


「確かに。そもそも私の世界、マオ殿の世界、そしてアオイとそちらのご夫人の世界と生まれた世界は皆違うところから来ているわけですよね。理論的には不可能はない、ということになりますね」


「じゃあ、私の世界にルティを連れて行くとか」

「逆にセーラを我の国へ連れ戻るでも」

「アオイが元の世界に帰ることも」

「マオさんが元の世界に帰っちゃうとか」


「「「「可能……」」」」



 思わず四人の声が揃い、一度静まり返る。そしてお互いのパートナーを見て『そんなことナイナイ』とばかりに首を横に振った。



***

 


「ねぇねぇマオさん、ここが日本じゃないならもしかして私も魔法が使えるのかな?」

「うむ……ここには魔素があるようだし、可能性はなくはない」


「体験できるならしてみようかな。う~ん、魔法出ろ~!! ……ねぇ、マオさん。考えてみたら魔法の出し方なんて、私全く知らないんだった」

「ようやく気付いたか。ただなセーラ、もし万が一お主がここで聖魔法を放つと我は良くて大怪我、最悪封印されてしまうのでな。我はまだセーラと共に在りたいのだ、我慢してくれぬか?」


「マオさんを封印!? それを早く言ってよ!! ふぅ、魔法が使えなくて良かった」

「まぁ封印魔法でなければ、多少のケガ程度であれば治せるから心配ない」



 何だろう、甘い。いつもルティが煮詰めた砂糖みたいだから慣れていたつもりだけど、ご主人のマオさんはわかりやすく「好きだ!」と主張するわけじゃないし、表情もあまり動くわけではない。

 だけど、そのせいかほんの少し上がる口角とか聖良さんを見る視線が「甘い」し、淡々と返す言葉にさり気なく甘さを含んでいる……そう、苦い御抹茶と和菓子? みたいな、合うよね。



「なんか素敵だね……ああいう関係も」

「ア、アオイ、まさかマオ殿に……?」



 ふと見れば、いつの間にかパネルの下に現れていた四つのランプの内、一つが点灯していた。予想通りうちのルティが一番乗りで嫉妬した模様ですね。常に首位に拘る、男の意地を見せたのでしょうか?



「あ~あ、やっぱり思った通りルティが一番だったよ……ちょっと恥ずかしい」

「なぜです? 自分が愛する者がよそ見をして喜ぶ男がどこにいるというのですか? 逆にあちらのご夫人はきちんとご自分の夫君しか見ていないではないですか。私を見ても注目したのは顔ではなく耳くらいでしたよ。言いたくはないですが、私だって羨ましいです」


 

 え……。確かに、ルティが熱烈なのを良いことに浮気の心配もないと思っている節はある。じゃあ自分はどうなのか? と言われてしまうと、不足と言えば不足なの……か? 現に文句を言われているし。

 聖良さんも、ルティを見た時に見惚れる感じはなくて、『生エルフだぁ~』みたいな感じだったし。ご主人であるマオさんが好きなんだなって見ていてわかる。


 そう思って見ると、やっぱりいいなと思うし、ルティが望む気持ちもわかる。そして、それが自然とできているお二人が羨ましい。


 するとまたパッとライトが光った。ガーン、私のだきっと……。嫉妬深いカップルでお似合いである。


 まぁ、いいや。ちょっと特殊なカップルであるのは今に始まったことではない。すぐに受け入れられちゃうところが私の長所だ。そして短所でもある。

 

 ひとまず、私達はお題をある種すぐにクリアしたわけですし? もう、計算通りってやつですよ。ただ、今度はどうにか聖良さん達が嫉妬しないといけないわけで。……難題じゃない!?


 そもそも、聖良さんはルティに「エルフ」として以外の関心はなさそうだし、モチのロンでマオさんが私に興味を持っている節は微塵も感じない。

 頭を悩ませていると、どういうわけか私のお腹から「ぐぅぅ」っと鳴る音が……こんな時でも通常運転だよ私のお腹は!!



「そういえば、お昼直前だったんだよね。お二人もお腹減ってないですか? 確か下拵え済のお肉とか入れてあったんだよね……ルティ、ここの空間って焼き肉やっても大丈夫かな?」

「軽食ではなく、ここで焼き肉を焼こうという発想が、アオイですね。まぁ、大丈夫ではないでしょうか。火をおこしましょうか?」


「え、ここで火を!? 薪とかどこから……それ、空間魔法!? えー!! アオイさんは魔法が使えるの? すごい!! わぁ、見てみてマオさん、本物の魔法使いだよ!!」

「……セーラ、普段は控えているだけで、我も魔法が使えることを忘れてはおらぬか?」



 空間魔法から、ポイポイと薪やら網やら食材やらを出していく。魔法が使える世界にいるせいで『魔法スゴイ!』とか言われるのが新鮮で、少しくすぐったい。大抵、私には『ある意味スゴイよね』的なバッドな方のスゴイしか聞かないし。


 それにしても、ご主人が元魔王で魔法が使えるみたいなのに、このはしゃぎぶりはどういうことなのだろうか? 普段は隠しているってことなのかな?

 マオさん、聖良さんに認識されていなくて、ちょっと不憫。



「いえいえ、使えるっていってもあんまり才能なくて、単純な火魔法だって高火力か弱火か、みたいな感じしかできないし」


「ほう……弱火ができるのなら、魚や肉の表面を炙ることに活用できるのではないか? 我もできなくはないが、クッキングバーナーで炙る方が楽しくてな」

「クッキングバーナー!? 懐かしい~!! 私、炙り系の寿司ネタが好きだったんですよね」



 なぜか異世界出身の元魔王さんとお寿司の話をするという不思議感覚。


 普段の家事全般はマオさんがしていると言っていたので、料理の話でも話が弾んでしまい、下準備しつつも日本での食事情なんかも聞いて盛り上がっていた。

 そんな中、ふと視線をパネルの方へやると、まさかの三つ目のランプが点灯している……これって、聖良さん?



「聖良さん? あの……」

「セーラ、随分大人しいが、具合でも悪いのか?」

「……ううん、なんでもない。具合は悪くないけど私は魔法使えないし、料理も……むしろ皆さんの足を引っ張りそうだから、食べる場所の準備をしておくね。アオイさん、敷物になりそうなものもありますか?」



 私としては二人に話しかけていたつもりだったのだけど、結局料理関連はマオさんが答えていたこともあって、聖良さんが疎外感を感じたのかもしれない。

 下手に謝りにいくのも不自然な気がするし、それでも作り始めてしまったので、その後は黙々と調理にのみ集中した。


 そんな中、マオさんは本当に手際が良く、『魚があれば捌こう』と言って、まさかの握り寿司まで作ってくれた。グリルバーナーは当然持ち合わせていないので、マオさんが聖良さんに『セーラ、我も魔法で炙れるのだぞ』と言って披露していたから、これがしたかったのかもしれない。



「わぁ~!! すごい!! どれくらいぶりだろう? 炙り寿司最高!!」

「アオイがじっくり弱火で炙ったお寿司は美味しいです。これがアオイのいた世界の本場の寿司ですか……炙りは話に聞いていた生魚とは違うようですね。これであれば抵抗が少なく食べやすいです」

「良ければ、全部どうぞ。アオイさんの思い出の味なんでしょ? 空間魔法に入れておけるなら傷まないだろうし。私はアオイさんの焼き肉を頂くね。タレまで手作りって尊敬しちゃうな。私も少しくらい手伝いたかったけど、料理は本当に簡単なものしかできなくて……せっかくのお肉も焦がしちゃってごめんね」



 でも、その焦げたお肉は『これはこれで美味い』と言って、聖良さんが下がった後、マオさんが全て食べていた。聖良さんは自分で食べるつもりで、自分のお皿に除けていたのに。

 運ぶときに除けておいたお皿に焦げたお肉がなくて、聖良さんは捨てたんだと勘違いしてるっぽいのにマオさんが何も言わないから、私もあまり余計なことは言わない方がいいのかと思って黙っていた。



***



 BBQが功を奏したのか、場の雰囲気も和み、聖良さんから元の世界の話を聞いたりして話が盛り上がっていた。

 

 途中、マオさんが抜けたと思ったら、出してあった材料を使ってアップルパイもどきを作ってくれていた。パイ生地代わりにパンを代用だったけど、プロですか!? と思うほど美味しかった。魔法で冷やして作ったアイスまで添えてあるこだわり様。


『美味しい美味しい』と絶賛していたら、聖良さんが『私はまた食べる機会があるから良かったら持ち帰って』と言って、自分の分も含めて譲ってくれた。

 自分で作ったものも、異世界で食べるアップルパイに似た味のものも美味しく食べてはいるんだけど、マオさんが元の世界の味で再現しているせいか、すごく懐かしく感じたのだ。



 そして、『お腹一杯だなぁ』なんてボケ~っとパネルの方へ視線をやると……。



「あれ……? ランプが全部点灯してる!?」

「おや? そのようですね」



 全員の視線がマオさんに集中し、本人は『不本意だ』と言いながら、不満気な顔をしていた。



「全部点灯……ってことは、やだ! 私もいつの間に!? え、でも全部だから、マオさんも、よね?」

「……そういう扱いのようだな。一体なにを基準に測っておるのか、この装置は」


「いや、それもそうだけど、何に嫉妬したの?」

「……お主はここで、それを聞くのか? 全く、良い性格をしておる」



 ちょっと二人が言い合っているようで、イチャイチャしているようなやり取りをしている間に、扉が二つ現れた。多分これで元の世界……私とルティの家に帰れるようだ。


 ホント、一体マオさんの何に引っ掛かったのか、私にもよくわからなかったけれど、とりあえず戻れるみたいで良かった良かったと一人思っていたら、ススス……とルティが隣にやってきて、コソっと内緒話のように耳に手を添えた。



「アオイも鈍いですけど、ご夫人も中々ですね。今回は脱出の為、【嫉妬】をさせる目的がありましたので、あえて何も申しませんでしたが」

「え? ルティはマオさんの嫉妬に気付いていたの?」


「アオイ、気持ちは理解しておりますが、マオ殿が夫人の為に作ったものを全て持ち帰ってしまうのは如何なものかと思いますよ。マオ殿の魔力がかなり乱れておりましたし」

「えぇ!? 普通に食後のデザートを出してくれたとばかり……聖良さんもお腹一杯って言ってたし」


「ハァ、それも当然あるでしょうけど、自分は役に立てないと気落ちしているご夫人の様子を気にされてましたし、炙り寿司もほとんど口にしないままアオイに譲ったでしょう? 自分で作ったものが、一番食べて欲しい者に食べてもらえないとなれば……アオイでもわかるのではないですか?」

「あぁぁぁ……私、最低なことしちゃったじゃない」



『どうぞ』と言われたら、つい受け取ってしまう癖は、一度生まれ変わろうとも治らないらしい。でも、今回は本当に思い出の味に近くて、それで頭が一杯になってしまったのだ。

 

 よもや異世界の元魔王が、元の世界の懐かしの味を再現してくれるだなんて誰が思うだろうか。色んな意味で衝撃を受けた。



「大丈夫ですよ。ご夫人の方は本当に譲る気持ちを持っておりましたし、マオ殿に関しては……まぁ印象が多少悪くなろうとも、好かれて欲しくはないので、私と致しましては全く問題ありません」

「問題大アリじゃない!!」



 とはいえ、一度空間魔法にしまったものを取り出して、ご本人(マオさん)を前に『お宅のご主人がいじけちゃってるからさ』とは言えない。

 

 とりあえずルティが『このまま二人のことは二人で解決しますから心配ないですよ』と言うので平静を装い、お互いに別れを告げ、各扉の前に立った。扉は私の方はポップな感じだったけど、聖良さん達の方は和の雰囲気漂う引き戸タイプだった。あれはDIYでリメイクできんやろ。マンションに和の引き戸か……。


 マオさんと腕を組み、同じく扉の前に立っている聖良さん達の様子が気掛かりだった私は、意識的に耳を傾けていた。



「セーラ、戻ったら共に買い物へ行かぬか? 夕餉(ゆうげ)はお主の好きなものを作ろう」

「いいの? う~ん、どうしようかな……お肉沢山食べたから魚かな? あ、マオさんの煮魚が食べたい! 私あれが大好きなの」


「フッ、そうか。承知した」

「やった! 楽しみ!」



 明るい声が聞こえたのでチラッと見れば、真顔に近かったマオさんの表情が少し和らぎ、聖良さんにも笑顔が戻っていた。

 

 組んでいた腕をマオさんが解いたときは少し焦ったけど、指を絡ませた所謂恋人繋ぎに変えていて、確かに心配の必要はないと思った。

 顔を赤くしながらも嬉しそうにしている聖良さんが眩しいほどに初々しい。



 扉が自動的に開き、そのまま光に吸い込まれるようにして私達は元に戻った。





「ふぅ、無事戻れて良かったぁ! それにしても、聖良さん達、お似合いの夫婦だったね。前世の年齢目線で見ちゃうと、若い二人の微笑ましくも不器用なのか器用なのかっていう絶妙な塩梅がなんとももどかしくて、青春のように甘酸っぱい!」

「アオイ、それは聞き捨てなりませんね。私とでは甘酸っぱい青春はできないとでも? 私が本気を出せば青春の一つや二つ……」


「ルティ、青春は固形じゃないから。やっぱり青春と言ったら学校だよね。益々行きたくなってきたよ」



 まぁ、まずはその為の資金を貯めないといけないんだけどね。そうなると青春再出発計画もまだまだ先かなぁ。 



「(私とアオイで甘酸っぱい青春が可能な)学校探しは私の方で調べておきますので、お任せください」

「そうだよね、通うのはいいけど、こっちの勉強がどんなものかもわからないし。私一人でも通えるようなところじゃないとだよね」


「そうですね(私と一緒に入学できて)安心・安全な学校を探しておきますね」

「ルティ、ありがとう! 頼りにしてます」



 こうして、不思議な部屋での体験を経て、危機感を感じたルティが、ゴリ押しで一緒に通うことになる魔国学園入学へと続くのであった。




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