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12:この男、スパダリにつき ☆



******



「眠い……」


 昨夜はちょっと遅くまで見て回っていたので、寝るのが遅くなっちゃった。

 お陰でめちゃくちゃ眠い……でも、ダラダラと寝ていられないのも年齢でしょうか?

 普通にいつも通り目が覚めるけど、覚醒するまでに時間がかかるんだよね


 ベッドからはまだ抜けておらず、目は閉じ座ったまま、宇宙と交信中。


 ルーですか?きっと彼は年中元気一杯なんじゃないかな。若い400歳だよね。

 恒例の自主鍛錬のルーティンをこなし、シャワーまで浴びてさ……

 

 それでも私がボーっとしたまま動かないからか、いそいそと鼻歌を歌いながら、私の今日の服装を選んでくれています。起きろー私の脳みそー!



 実はあの後、服飾店を見かけて、『アオイは着替えの洋服が少ないですよね?買っていきましょう!』とルーが有無を言わさず、そのまま入店。

 そしてひたすら試着、試着、試着……&試着



 彼はセンスが良いと思う、少なくとも私よりは。私の気になる体形をうまくカバーするような服をチョイスしてくれて、年齢も5歳位は若く見えるんじゃない?みたいな仕上がりに、私もつい気持ちが上がっちゃうわけで……

 調子づいて街歩き用と移動用の服を買ってしまった。

 いえ、出てきたらすでにお会計済だったので、()()()()()()が正しいです。こういう人って実在したんだ……って思った。



 ガレット帝国の中心部辺りについたら、下着や化粧水とかの日用品は買いたいなぁ。

 今までトランクケースに入っていた着替えでやりくりしてきたけど、シャワーの時に手洗いして<清浄(クリーン)>と併用しながら大事に使ってきたんだよね。

 でも消耗品だし、心元なくて悩みどころ。



 お洒落は嫌いではない。むしろ好きではあるんだけど、如何せんセンスがあまりないのが悲しい。

 自分が選んだやつは本当に似合うのか心配になるというか。店員さんの「お似合いですよ」は実はあまり信用していない。


 手先は割と器用なはずなのに、なぜか髪型はポニテか形の悪い三つ編みくらいしかできない。きっと美容の神の加護は全くないんだと思う。美容の神がいるのかは知らないけど



「アオイ、そろそろ起きませんか?」

「うわぁっっと!!まぶしっ!お、おはよう、ルー」



 瞑想から戻ってみれば、リアル美の化身のドアップは、太陽ばりに目に優しくない。潰れるレベル

 いや、起きない私が100%悪いんだけど。



「びっくりさせてしまいましたね。ゆっくりしていたのに申し訳ありません」

「ううん、私が悪いよ。昨日買ってもらった洋服もきちんと片付けないまま寝ちゃってごめんね。ルーに整理までさせてさ、もしかしてそれが今日のコーディネート?すごく素敵だね!」



 今日は観光メインで移動はないので、街歩きに特化した外出コーデ。



 トップスは肩周りにフリルがついていて、少し透け感のある七分丈のシアーブラウス風

 ボトムスはハイウエストで、落ち着いた色味のラズベリーピンク。丈は足首より少し上の、ロングスカートだ。

 着たことがない部類のコーデだけど、いつもパンツばかり履いていたからちょっと嬉しい。。。



 まさか異世界でこんな格好できるとは思わなかったよ。なんせ、初日に例のモブ服だったからね。市場の人達も似たような感じだったし。

 

 国の端っことは言え、人族の国としては一番大きな国と言っていたから、洋服の流行なんかもきちんと文化としてあるのかな?

 それにしても、なぜか全部サイズがピッタリで驚いた。試着した時もこうだったかな?



 着替え終わり、只今ルーが髪を緩めの編み込みにして、素敵にセットしてくれています。

 

 もうこの人に出来ないことってないのかな?イケメンでスパダリなのか……そういう人に隣に立つって勇気いるよね。憧れるくらいが丁度いいと思う。

 

 ただ、ここまで来ると「女として」っていう、吹けば飛ぶようなプライドすらも軽々超えて、かえって甘えやすいのかもしれない。開き直った私の、ただの言い訳ですけど。



「はい。このような感じでいかがですか?」



 わぁ……っと鏡に映る自分の髪型に見とれていたら、彼は嬉しそうに甘く微笑みながら、ラズベリー色の瞳でじっとこちらを見ていて、思わずドキリと心臓が跳ねた。



「……素敵な髪型にしてくれてありがとう。本当にルーは器用になんでもできちゃうんだね。洋服も髪も自分に合ってると思うし。本当、センスあっていいなぁ」



 お礼を言うと、破顔したルーが私の耳元まで顔を近づけてくる。



「あなただけ見つめてます、から……」

「え?……」



 そう言って、珍しいピンクのひまわりを一本、髪飾りの代わりに挿してくれた。



 鏡越しに目が合い、お互いにそのまま見つめ合う……



 なにか返事をした方がいいのだろうか、どうしようと思惟していると『―――って花言葉があるんですよ、ひまわりには』と、彼はなんてこともなかったかのように、にっこり笑って言った



 多分、いや間違いなく、私の顔は真っ赤だと思う。こんなの反則~~~っ!

 きっと寿命が5年くらい縮まったと思う。おばさんを揶揄うのはホントやめて!!



***



 とりあえず平静を装い、ようやく街の散策を始めたんだけど……

 昨夜のように人攫い対策で手を繋いだものの、夜とは客層は違えど通りは混雑していて、やたらと人にぶつかる私。

 すると、今度は『この方がぶつかりにくいですよ』と言い、シレっとナチュラルに肩を抱かれる。ナゼ!?それはもう『あ、ホントだねぇ』と言っちゃいそうになるくらい自然だった。


 確かにぶつかりにくくなりましたけども!?どうにも意識してしまって、汗がヤバイ。離れたいのに、全く手が離れないし、抵抗しまくっていると『やはり腰の方が良いでしょうか』と更に羞恥な提案をしてくるので諦めた。

 

 もう、今日は無になろう……どうせ混雑しているから誰も見ていないさ。気配を消しておこう。



 気を取り直して、昨日目を付けていたフルーツタルトを早速買って食べてみた。ここの果物すっごく美味しい!

 タルト屋さんの親戚が果物農家さんらしく、その日採れた新鮮なフルーツで作っているんだって!いきなり当たりを引いてしまったようだ。運が良い



「知りませんでした……果物だけで食べるのとは全く、違う。アオイが言うように別物ですね」

「ほらほら~!で、やっぱり?」


「素晴らしく美味しいです!」

「あはは、でしょ~?言った通りじゃない」



 予想通り過ぎるねぇルーは。果物単体では少し酸味の強いイチゴでも、甘い生クリームのケーキにはピッタリだし。おかずでもそうだけど、組み合わせによって、より美味しくなったりするよね。



「そういうアオイも、それ二個目ですよね?一個目はミックスで、二個目はブルーベリーですか?私のサクランボのタルトと半分ずつにしませんか?」

「バレてた?ふふ、いいよ半分こしよう!実はサクランボも気になってたんだよね」



 ほい。半分こ

 では、お互いのものと交換して、いただきます!



――――パクッ



「んん~~~~!おいふぃっ!甘酸っぱさが絶妙!!」

「ふふ。そうでしょう?では私も、イタダキマス」



――――パックン


「んんっ!ブルーベリーは、やはりまとめて食べるに限りますね!サクランボよりも酸味が強い分、下のカスタードが他の物よりも甘めに感じます」

「うんうん、わっかる!ここのは果物の甘さに合わせて下地の甘さ加減も変えてるよね!拘りがすごいよ」


 世界が変われど、菓子への飽くなき探究心は不滅なんだね。この出会いに感謝したいくらい美味しい



「ルー、これはやっぱり全種類二個ずつ買っておかない?」

「そうですね、異議なしです。しばらく戻る予定はないですし、買い置きして空間魔法にしまっておきましょうか」



 いやっほーい!ホント空間魔法があって良かった~最強だと思うわ!



 一度でも訪れれば転移魔法で来れるらしいけど、結構魔力消費するみたいだし。

 今は他の街も見てまわりたいから、買い溜め、買い溜め!



「そうだ、聞くの忘れてた、明日からの移動はどのくらいかかりそう?野宿とかあるならそれに合わせた準備もしなきゃだよね?テントとか??

 あ、一回でも平屋作ってもらえるなら、ある程度備蓄を作っておけるけど」


「そうですね、キシュタルトからガレット帝国の首都ユーロピアまでは大きく3ルートあります。

 一番最短を行くなら中央ルート。輸送用に人口で飼い慣らした魔獣トドランを借りて、砂漠地を半日ほどで一気に越えて、二つほど小さな村を通り、ユーロピアへ入る……で、二日半という所でしょうか」


「へぇ最短でも二日半かぁ……でもって魔獣トドラン、また名前だけは可愛い系だね。他のルートは?」


「次が砂漠地を避ける為に左右に迂回するルートです。

 右は森が広がっていて、道は平坦で歩きやすいですが魔獣が多く、あまり脅威ではないですが相手にしなくてはならない分、時間をとられますね。討伐込みで五日程でしょうか」


「それってルーだけなら早そうだけど、私がいるから一週間位かかちゃいそうだよね?足を引っ張りたくはないなぁ」


「左は海沿いに沿って歩いて行くと、途中、隣国の<獣人の国シュナウザ>へ行く港街があります。

 ただし、今回アオイはワノ国方面へ行くと決めておりますので、左は一番遠回りになりますし、ユーロピアを見ずにシュナウザへ渡るのは効率が悪いかもしれません」



 ユーロピアからシュナウザへは、魔国グローリアの竜人族が定期的に行き来をしているので、それに同乗させてもらう方が安全で早く着くという。



「まさかの空路があるとは!しかも竜!?大きいの?襲われたりしない?あ、竜人だから通常は人型なのか。考えてみたら私、人族以外はエルフ族のルーしか見た事ないよね」


「そうですか?ミトパイでは何度か獣人族を見かけましたけど。玉ねぎ抜きのミトパイも獣人族専用であるのですよ。ちなみにダーツは魔人と人族のハーフです。国籍は人族ですけど」

「えー!見逃していたとはっ!!痛恨の極みだよっ」



 耳とか尻尾とか隠していたのかな?いつか行ってみたいなぁ。モフらせてくれないかなぁ。

 それよりも、ダーツさんが?エーーー!?全然わからなかった……



「でも、きっとユーロピアに行けば色んな種族がチラホラ見られると思いますよ。やはり一番大きな首都になるので、他国からも観光や仕事で来る者も多いですからね」

「あ、そっか。有名な観光地ってことだもんね!じゃあやっぱり中央ルートで行こう。トドランは……ちょっと怖いけど」


「ではそうしましょう。トドランは非常に大人しい魔獣ではありますが、アオイにはどう感じるか、でしょうか。でも、二人乗り用にしますから大丈夫ですよ」

「馬すら乗ったことないので……宜しくお願いします」



 結局この日は一日肩を抱かれたまま、買い物をしていたのだけど、明日のトドランの正体が気になりすぎて途中からは意識の外に飛んでいて気にならなくなった。


 ブタタンの時の様に、きっと名前と見た目が一致しない系なんだろうな





 自分でルートを決めたものの、魔獣の乗り物が不安過ぎて、またも眠れない夜となりそうです。









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