22:今年も、その次も、あなたと~年越し星空マーケット~ ☆
<お知らせ>
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◇◇◇◇からルーティエ視点です
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「アオイちゃん、昨年好評だった<星空マーケット>だけど、今年は年の終わりと始まりを人族のように祝うような形で開催しようってなってね、カウントダウンのあとにお祝いの魔弾も上がるから、ルーティエと一緒に見に来るといいよ」
学生二年目の秋の終わりにへーリオスさんからそう聞いていた<星空マーケット>へ昨年同様、ルティとデートも兼ねて来てみた。
昨年は初開催ということもあり、冬の始まり頃の開催だった。観光客を増やすことが一番の目的だったのだけど、それはそれとして魔国民にも非常にウケがよく、では今年は<大切な人と過ごす年越し>として年末年始開催しちゃおう!となったらしい。
ほぼ、無関係とも言えるのに、昨年は初開催を祝うテープカットまで参加させられて……緊張するからとルティにそばにいてもらったら、まさかのケーキ入刀みたいな形で一緒にテープカットに参加し、いらぬ注目を集めてしまったという思い出ができた……
なんの前触れもなく、しれっと『アオイ、まるで結婚式のようでドキドキしますよね』ってナチュラルに私の持つハサミに手を添えてきた。ん?なぜ手を添える必要が?
『ルティ、これは星空マーケットのセレモニーだから!!』って言ってるのに『そうですね、星空までも私達を祝福しておりますね』と、全く言葉が通じなくなって諦めたやつ。
あの時は本気で翻訳機能がバグり出したのかと思ったものだよ
ほんのちょっぴり昨年を振り返り遠い目にはなったけど、今年はあくまでお客サイドとして参加しているので気楽なものだ。ミールクーポンもしっかりたんまり購入し、手製のパンフレット片手にどうカスタムするかを悩むのも楽しみの一つ。
今年は出店数もかなり増えたこともあって、川沿いでの開催となった。出店するお店には共通のデザインの星型ランタンが下がっており、店が増えれば増えただけ見ごたえあるものになる。
もちろん店舗以外の装飾にも別のデザインの星型ランタンが飾ってあるので、スマホやカメラを持っていたら映えスポットになっていたのは間違いないと思う
「わぁ……ルティ、昨年よりも星型のランタンの数が増えたと思わない?形やサイズ違いもあって可愛いね!」
「夜空の星も良いですが、手作りの星も温かみがあって良いですね」
へーリオスさんによれば、昨年は見合わせていた店舗や、話題を聞きつけた店舗なども加わり、倍以上になったという。お陰でミールクーポンで引き換えたいお店が増えて、嬉しい悲鳴!
「どうする?前菜からメイン、デザートみたいになるように選ぶ?」
「私はそれで構いませんよ。アオイが好きなものを選んで下されば」
「もうっ!そうじゃないでしょ?なんの為に一緒に来ているの!ちゃんと一緒に考えようよ」
「あ、そうでしたね。つい、いつもの癖で……ではどうせなら初出店の中から選んでみましょうか?」
「初出店しばり!?それいいかも!新しい発見があるといいよね」
「ふふ、アオイの好きな<新規開拓>ですね」
二人でお店の一覧とおススメ料理が書かれているパンフレットを見ながら、なんとか絞りに絞ってマイおつまみセットを作り上げた。そして、久しぶりのアルコール付なのでテンションも上がっている。
どうやら私は酔うとかなり饒舌になり、なんでも素直にペラペラ話すらしい……アルコール=自白剤のようなものだろうか?そして例に漏れず、そういう時の記憶は私の脳内には残っていないからたちが悪い。
ルティから酔った私は危険だから、他の人がいるところでは飲んではいけないと言われていたのと、若返り後はそこまで飲みたいとは思わなかったので飲まずにいた。
でも考えてみたら今年で日本のアルコール摂取OKな年齢にちょうどなっていたなと思い出し、若返り後お初で飲酒してみようとなった。
もはやどこから年齢カウントしたらいいのか悩むけど、元の年齢カウントなら52歳、こちらでの年齢20歳、身体年齢は未知数……つまりわからない。
でも、これならばきっと内臓も若返っているはずだろうし、案外酔わないのかもしれないとなんの根拠もなく思った私は、久々のアルコールを堪能していた。
◇◇◇◇
「ルティ~ちょっと寒くなってきた~」
「アオイ、こちらへおいで。また風邪を引かれては困りますからね」
隣にぴったり寄り添って座っていた彼女が、少しプルっと震えていたので、慌てて自分の前に包むようにして座らせた。『やっぱり大きめのひざ掛け持って来て正解だったねぇ』と振り向き見上げてくる彼女。
ええ、本当に。二人で一緒に包まれるくらいの大きさを持って来て正解でしたね
温かい格好をさせてはいたけれど、カウントダウン前になり『どうせなら出店のある明るいところじゃなくて、落ち着いたところで見ようよ』と彼女が提案してきた。
二人きりで落ち着ける空間なのであれば願ってもないので、こうして少し街の喧騒から離れた、小高い丘のような所へ移動してきたというわけだ
「アオイ、そろそろカウントダウンじゃないですか?」
「そうだね!10・9・8……」
「「3・2・1……」」
「ルティ、新年おめでとう!今年も宜しくお願いします!」
「ええ、今年も……その先もずっと、末永く宜しくお願いしますね」
新しい年を迎えた瞬間、かつて一人でユーロピアでも見た光景……いや、それ以上の魔弾がドン!ドン!という音と共に連続で上がっていた。昨年はほんの数発程度だったので、感動は一瞬程度だったが、今年は中々派手にあげている。彼女も『綺麗……』とこぼしながら食い入るように見ていた。
「今年の花火…あ、魔弾か。すごかったねぇ!昨年とは全然違ってなかった?この世界でもこういうのが見れるとは思わなかったなぁ~」
「そうですね。私もあの規模は初めてです。魔国も中々やりますね」
彼女と新しい年を祝う為、星空マーケットでセットになっていた酒とは別に、一本用意していた。あそこでは限りなくジュースに近いような度数のものを彼女には飲ませていたので、特に大きな変化も見られない。
「アオイ、せっかくですし、新年のお祝いにこちらも飲んでみませんか?先ほどのものより少しだけ度数は上がりますが、エールほどではないので大丈夫ではないかと」
「へぇ~マーケットで飲んだのはジュースみたいで美味しかったよ。お祝いだし、飲んでもいい許可がある内に飲んでみようかな」
持参した小さめのカップに、それでも半量以下で彼女には注いだ。彼女の適正量をはかる為でもある
「んん~!ようやくちょっとお酒を飲んだ感が出て来たね。でも、これも甘くて美味しい!おかわり~」
「ふふ、それは良かった。でも、一応度数は低くともお酒ですからね、もう少しゆっくり飲んで下さい」
「やっぱり若返った分、アルコール分解機能の方も若返ったんだと思うんだよね!全然、酔う気がしないもん」
「分解……。そう、なのですか?アオイが断言する時ほど、たいてい何かが起きている気がするのですが」
そうして『美味しい、美味しい』と喜んで三杯ほど飲み切った辺りから、アオイの目がトロンとし出した。そもそも彼女は早寝の方なので、普段はこんな日付が変わるまで起きていることはない。そろそろ片付けて戻った方が良さそうだ。
「アオイ、そろそろ帰りますか?」
「えぇ~せっかくのデートなのに……帰るの早過ぎる!まだ来たばかりなのにっ!!」
ふむ、見事に眠気と酔いが混ざっておりますね。『ヤダ、帰らない!』と口を尖らせて駄々を捏ね、私を立たせまいとしがみつく様は、可愛過ぎて引き剥がすことは不可能なので、そのまま抱き締めておく。
「でも、困りましたね。アオイももう眠いのでしょう?ここでは寝れないのですよ、戻った方が……」
「眠く、、、眠いのはちょっとだし。話をしていれば大丈夫!」
最悪、眠ってしまったら私が運べばいいだけですし、今日はお祝いの日ですからね。言う通りにしてあげましょうか。
「ふふ、わかりました。では、なんの話をします?せっかくですし二人の将来の話でもいかがですか?」
こういう話がしたいのは嘘ではないが、まぁアオイと私の間での定番の切り出しでもある。こう言うと決まってアオイが『しません!!』と返してくるのですが、怒っているようで『しょうがないなぁ』といった表情が混ざる顔が好きで、つい繰り返してしまう
「二人の将来の話?う~ん、いいよ~。どんな話?」
「え!?本当にして下さるのですか?」
「え?違ったの?しないならしなくても……」
「いえ、したいです!しましょう!!」
「ふふふ、変なルティ~好きだよ~」
「……ふふ、変な私でも好いて頂けるのですね」
酔ってご機嫌な彼女の方から、アルコールの香る口づけをされる。その味わいはどんな美酒よりも甘く、こちらも酔いがまわりそうになる。
「私はアルコールには強い方なのですが、あなたにかかるとすぐに酔ってしまいそうになります」
「そっかぁ~私に酔ってしまうのかぁ、面白いねぇ」
「あの……酔っている時に聞くのも如何なものかとは思うのですが、アオイは私との結婚については前向きに検討して頂けているのですよね?」
「ん~?結婚?結婚……あ~うん。考えてるし、もう決めたよ~」
「ああ、やはりまだ決まって……は!?決めた?今、決めたと言いましたか?」
「うん。もう一杯お代わりしようかな~」
「ちょ、ちょっとお待ちください!もう飲み過ぎです。そ、それで?決めたとは結婚の時期を、ですよね?一体いつ頃でお考えでしょうか?」
「え~まだいっぱい入っているのに~!ヤダ!お代わりくれないなら言わない!!結婚やめる!」
全く、この小悪魔さんは!!これ以上飲ませたら、肝心なことを聞く前に寝てしまう可能性があるじゃないですか!こんなに気になることをまた後日に回せるほど、私はデキてないですよ!
「わかりました……ただし、アオイが教えてくれたらお代わりをあげます。なんなら二杯」
「二回お代わりOKってこと?わーい!じゃあいいよ」
「……それで?いつ頃をお考えでしょうか……?」
私の予想では、このまま卒業後もゴーシェと同じ大学院方面へ進学するとか言い出して、それが終わってからのことと思っていますが、さらに先であれば……ちょっと、いやだいぶ落ち込みますね。
「卒業したらって思ってるよ」
「ああ……やはり、大学院まで進むのですよね」
「ん?大学院??違うよ、来年卒業したらって思ってたんだけど、ルティが別にいいなら進学しても…」
「良くないです、良くない!全く進学の必要ないですよ?確かに魔国史以外の成績は高いので、進学も可能ですが、どうしてもというのであれば結婚後に行くという手もありますし……いえ、それよりも本当に?本当に来年卒業したら……私と?」
「うん。はい、お代わりちょうだい!」
「くっ……感動の瞬間なのに、アオイがご機嫌に酔っぱらって台無しじゃないですか!もう少し浸りたかったのに……仕方がないですね、はい、お代わりです」
約束してしまったのもは仕方がないので、お代わりを渡すが、様子を見るに十分酔いが回っているので気付かれない程度に気持ち少なく注いで渡した。
「へへ…ありがとう!おいし~い!!大好きな人と飲むお酒は美味しいね」
「大好きな人?それは光栄ですね」
「ルティ大好き……ずっと、ずっと一緒にいてね。ルティがいないと私……」
「アオイ……」
酔いが回っている彼女は非常に魅惑的で、急に私を煽るようなことをサラリと言ってくるから困る。そんな潤んだ瞳に見つめられたら拒めるはずなどないのに
彼女を見つめながら、ゆっくりと唇を近づけていく。彼女の方も口づけを受け入れる為、目を閉じる……そしてぐらりと横に倒れて――
もちろん寝落ちした彼女をキャッチ。すでに彼女は眠りの国の住人となり、気持ち良さそうに眠っている
「ハァ……お約束ですね」
以前のアオイも今のアオイもアルコールには強くないようだ。と、なると今の話も明日には綺麗さっぱり忘れているのだろう……少し寂しい気もするが……
「アオイの考えを知れましたし、あのままですとアオイからプロポーズされたような気すらしますので、ここは一つ忘れたままでいて頂きましょうか」
私の腕の中で、幸せそうに眠るアオイ。イベントも終盤に差し掛かり、ひと際大きな魔弾が空にパッと広がり、辺りが一瞬明るくなるほどだった。
私の喜びは…これ以上ではあるけれど、タイミング良く祝ってもらっているようで悪い気はしない。
「今年の年越し星空マーケットは忘れられない思い出になりそうですね」
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翌日、もちろんアオイはそんなことは欠片も覚えてはいなかったが、私だけが覚えていればいいし、あの日の思い出はアオイがくれた私だけのもの。彼女にはそれ以上の思い出を私から贈る予定だ
「アオイ、今年は良い一年になりそうです。学園での思い出もたくさん作りましょうね」
「うん???もう、そんな予感がしているの?最終学年もケガなく、事故なく、事件なく!!思い出を作りたいね!」
さて、本格的に準備を始めると致しましょうか
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