21:アジェアへいっちゃいな~ワノ国修学旅行編④~ ★
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とりあえず、私以上に集団行動を乱した担任兼恋人とキラ君。餅道具購入後、出汁、味噌などのお店にもどさくさに紛れて立ち寄らせた。
少し時間が押した分に関してはキラ君に竜化&騎竜でハガネ君、アーチェリーちゃんペアと合流することに。便利なトカゲタクシーだ。
――騎竜は本当に早い!
あっという間にワノ国の中でも一番の大都市アジェアに到着!キラ君が飛びながら魔力でサーチをかけて、近くなったら念話で連絡を取り、無事合流できた。
別行動になったのは、ハガネ君がどうしても見たいと言っていた<SHINOBI観劇>があって、その開演時間に間に合わないかもしれないとなった為だ。
全ては餅つきでいらぬ闘志を燃やした二人のせいなんだけど、私は昨夜アーチェリーちゃんの気持ちも聞いていたので、ちょっぴりお節介も混じっている。
ハガネ君はチャラっぽい話し方はあれど、見た目は真逆の模範的優等生なので、現状の語尾が「ござる」な部分はともかく、好青年でアーチェリーちゃんともお似合いだと思うから、うまくいくといいなと応援してます。
人族のSHINOBIがすごいと言っても、圧倒的に魔人族やエルフ族の方が強いのに、ハガネ君は何にそんなに惹かれるのだろうかとずっと疑問に思っていた。
こう見えてハガネ君は小さな頃はとても弱虫だったそうで、忠義心とか、魔力や力が弱い者でも工夫次第で十分戦えるんだというところに勇気をもらったことがきっかけらしい。
SHINOBIとの出会いがハガネ君をこんなに強く変えたんだね
そう言われると、なんとなく忍びの回し者でもなんでもないが、途端に誇らしく感じてしまう単純な私。柔道なんかもそういうところあるよね。<柔よく剛を制す>っていうくらいだし。
この旅行でハガネ君の人となりが少し垣間見れて、とても良かったと思う
ただ、ふと思うのは、忠義とは「竜王様に」って意味ではないのかな?竜王様の三番目の息子が隣にいるけど、そこの間に忠義なんていう素敵なものは見当たらない。
でも、守ってあげたい一人の為に捧げる忠義というのなら、かなり素敵なラブロマンスになりそうでステキ!!
なんて話をアーチェリーちゃんとコソコソ話しつつ歩くこと数分で、何やら劇場にも見えるようなレストラン?についた。
「さて、アジェア料理を食べたいアオイ、雑技団見学がしたいハガネとアーチェリーさん、残りの面々はなんでもいいということで、雑技団ショーを見ながらアジェア料理のコースを食べられるところにしました」
「えー!!ショーを見ながら食べれるの?すごい贅沢だねぇアーチェリーちゃん」
「ホントねっ!!なんかすごく身体が軟体の者がいるとか、衣装が派手なものがあるとか聞いて、私も見てみたかったの!」
世界は違えど、人間の限界にチャレンジみたいなやつはあるんだね!テレビでは何度か見たことあるけど、目の前で、しかも美味しい食事を食べながらなんて贅沢は一度も経験がない。
ルティやゴーちゃん、キラ君はなんでもいいと言ってたけど、みんなで見たらきっと楽しいと思うんだよね!ちなみに三人は雑技団の類は見たことあるのか聞いたら、子供の頃だったり、通りすがりにだったりで、基本的にほぼ初めてのようなものだった。
観光地だからなのか、レストラン内で着用OKの無料貸衣装まで置いてある。ここでは所謂、女子はチャイナ服、男性はチャンパオの正統派なものからコスプレっぽいものまで種類は様々あった。
私は、膝より少し上くらいの正統派チャイナドレスで、スリットは浅め、男子はゴーちゃん、ハガネ君が正統派チャンパオで、ルティとキラ君はちょっとファンタジー風のチャンパオで、正直ごっつカッコいい。もちろんルティがね。
アーチェリーちゃんは…とふと見れば、ハガネ君と選んでいていい雰囲気だったので、ファンタジー風コーナーから私は離れたんだけど、これってもうだいぶ二人は急接近しているのでは!?
バストの関係から、胸元が開いたデザインの可愛いチャイナドレスを選んでいて、とっても似合っていたし、ハガネ君も『姫は国一番の美女でござる!』と褒めていた。うん、君達もう付き合っちゃえ!
いらんところで対抗心を燃やしたルティが『アオイは世界一可愛いですからね!』と言っていたけどさ、そんなことはないんだけど、可愛いと言って貰えるのは嬉しいので『ルティは世界一カッコいいよ』とデレておきました。
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席に着き、初めは乾杯ドリンクで私はマンゴージュースをチョイス。トロッとしていてかなり濃厚な味わい。点心三種盛も感動ものだったけど、これと似たクオリティがまさかの魔国学園の学食で食べれているという衝撃……陳さんって結構、凄腕のシェフだったのでは?
とはいえ、一応こちらのレストランの方が凝った作りにはなっているし、学食はコスパ重視だからちょっと違うんだけどね。
そして、究極に悩んだのが、選べる飯系!炒飯、天津飯、魯肉飯、麻婆豆腐飯……この中から一つしか選べないという辛さ。ふぐぅっ!!ちなみにご飯名は私がわかりやすく言っているだけで、実際は<五目炒め飯>とかそんな感じです。
断腸の思いで…と思ったら、ルティが天津飯、ゴーちゃんが魯肉飯を選んで分けてくれるというので、私は心穏やかに麻婆豆腐飯にしました。二人共大好きだ!
後半にくる飯系が本当に食べきれるのかも怪しく思いつつも、パリパリ皮が美味しい春巻きにかぶりついたところ、照明の色が変わった。雑技団のショーが始まったようだ!
かつてテレビでも見たことがあった、皿回しや輪くぐり、ローリングバランス、変面等々…ひたすらにハラハラ・ドキドキする演目が続いたけど……
「あ、皿回しに駒回し、壺も回ってるよ!すごくない!?あんなにたくさん!!」と、言えば
「あのくらいなら私もできます」
「昔カーモスが投げた皿を全て割らずにキャッチする訓練があったのを思い出すなぁ」
「皿回して……それで、あとどうすんだ?」
「すごーい!道具も魔法もなしであんなに高い位置にある輪をくぐったよ!」と、言えば
「私は片足で跳べますね」
「僕の時はどのくらいの高さだったのかな。懐かしいなぁ」
「あれは普通にジャンプすりゃ届くんじゃね?」
「あ、あ、落ちる!危ないっ!!おお~すごい絶妙なバランスで円筒に立ってるよね、絶対崩れると思ったのに、さすがプロだよねぇ」と、言えば
「私は逆立ちしながら指一本で立ってられます」
「なんかこれ、カーモスの訓練に似たようなのあったような?」
「ふぁあ~眠くなってきたな……」
あまりにうるさいから、ハガネ君とアーチェリーちゃんペアの方へ椅子を寄せて見ることにした。二人を邪魔しちゃって本当にごめんね!
「あれ私知ってる!<変面>ってやつだよ!あれってホントどうやってるんだろうね」
「え?あれ魔法なしなの!?ハガネ君、あれってSHINOBIの技?」
「アーチェリー姫、あれは魔法でも、SHINOBIの技でもござらんよ。それでも、変化の術や分身の術とも違う、変装手腕は見事でござるね……オレもやってみたいでござる」
「うわぁあ!体が見ていて痛い!もう、関節とかどうなってるんだろうね?」
「うんうん、魔法があっても、あんなにグニャグニャにはならないもんね」
「やはりこれは日々の訓練の賜物でござろうな。素晴らしい」
素晴らしいショーは瞬く間に終わり、とても大満足だった……だったけどさ、おい、そこの君達!!
「ゴーちゃんは…辛うじて思い出トークだったから許すけど、ルティにキラ君はなんなの?なんで駄目出しばっかりしてくるのよ!」
「僕は貶したつもりはないよ。ただ子供の頃、カーモスに『お遊戯をします』と言われてやっていたやつはこれをヒントにしたのかなって思って面白かっただけで」
それはそれでよくわからないけど、面白かったなら良かったよブラザー
「俺はただ事実を述べただけじゃねぇか。あんなの普通のジャンプにしか見えねぇし」
「だったら、黙ってご飯を食べておきなさいよ!」
「アオイが他の男性ばかり褒めるからいけないのだと思います。精神的浮気ではないかと」
「後半黙っていたのは女性だったからなの?餅つきといい、今といい、それが理由だったとは。精神的浮気って、、、だってこれは一芸を見て楽しむものじゃない」
これはダメだな。なんとなく一日のスタートが寝不足だった辺りからずっとぷんすこしている気がする。
う~ん……修学旅行ではあるが、恋人抜きで夜通し楽しんだ上に寝不足気味に挨拶は…良くない、か?高速餅つきのおっちゃんを褒めたけど、そのあと餅を台無しにして迷惑掛けかけたのを私がフォローしたのは、私が偉いので私の勝ちよね?
雑技団に感動し褒めたが、それが男性だった……まぁ、『あのモデルさん可愛いですね』とかやたら連発していたら私も拗ねる、か?
と、なると2:1で私がちょいと分が悪いのか……
「ルティ、朝から色々やらかしちゃってごめん。確かにルティの隣でワーキャーしちゃうのは良くなかったよね。ちょっと懐かしいなとか、私も色々思い出しちゃってつい……ワノ国は同じでは全然ないけれど、やっぱり故郷を連想しちゃうから」
「そう、でしたね……アオイの故郷の雰囲気に似ているのでした。私の方こそ配慮が足りませんでした」
そう、全然違うとも思うのに、でもちょっと似てる、知ってるっていうのを見つけてしまうと、色んな感情がぐるぐると込み上げて来て、そのモノ、味、景色に少しの哀愁を纏ったり、この世界でも出会えた喜びだったり。目の当たりにしてしまえば、さすがにそうなるのは否めない。
ワノ国は、日本とアジア諸国が混ざったような印象の国。ある意味では国外に出ないでも、一国で和食、中華、台湾料理、韓国料理などを味わえる素晴らしい国とは言える。
食の部分に関しては米や出汁、味噌、醤油がこの世界にも存在しているんだ!と知った時点で、かなり精神的に救われたところはあった。
だけど、ほんの少しだけ…本当にほんの少しだけ、もしかしたら私の知る通りの「日本」も存在するのかもしれないって期待してしまったから、トウトに降り立った時に「ああ、やっぱり違うかぁ……」ってわかってしまった。それだけに無駄にテンション高めに叫んじゃったけどね。
リイルーンで若返り後に落ち着いてからもワノ国にすぐ来なかったのは、自分でも無意識に避けていたのかもしれない。行かなければ事実を知ることはないわけで……自分に希望を持たせていたのかも。
例えそっくりに存在していても、そこに私の家や生活があるわけじゃないのに。わかってはいても、その当時の私ではまだきっと受け入れられなかったと思う。
「アオイ、ぼんやりしてどうかしましたか?」
「あ、ごめんね。ワノ国って本当、ガレット帝国ともリイルーンとも魔国とも違ってるなぁって。同じ人族の国のダーン国とも違うけど、独特の雰囲気があっていい国だよね」
なるべく考えないようにしていたのに、こうしてきっかけができてしまうと考えてしまうからよくない。でも今は懐かしいなぁとか、あんなのあったなぁとか、あれ食べたいなぁとか。それはきっとこの先も考えるんだろうけど、やっぱり帰りたいとは思っていない。
この世界でルティと生きていくって決めて、自分もこの世界を完全に受け入れられたって証だよね
「……アオイは魔国を出て、ワノ国への移住を望んでいるのですか?」
「え……アオちゃんは魔国を出たいの……?そんな、もう離れちゃうなんて……」
ん?移住したいなんて一言も言っていないと思うんだけど??おかしいな、脳内では決意表明的なことをしたつもりだったのに、違う方向に取られてしまった!
「え、誤解させたならごめんね!ぼんやり国の違いを考えただけで、移住なんて考えてないよ!私だってゴーちゃんと離れたくないし」
「アオちゃん……良かった」
「酷い……私とは離れても問題ないってことですか?」
なんでやねんっ!!もう、ホントに今日は拗ね気味だなっ!!それだって、絶対思っていないくせに。今日のルティはかまってちゃんな日だなぁ
「ルティとはそもそも別々の行動っていう発想がないだけでしょ?もし仮に魔国を出るとしても絶対ついて来るじゃない。私だってルティがいない国に行く気なんてないよ」
「アオイ……それってもしかして逆プロポーズですか?答えはもちろん、イエスです!」
「わぁ、ルーティエ兄さん良かったですね!おめでとうございます!」
「いや、プロポーズじゃねぇよ!!」
どこにプロポーズ要素があったのよ!するならきちんと「結婚して」の文字くらい入れるわ!!まぁ、自分でも普通に言ってて気づいたけど、ルティがいない国に私は行く気がないんだな。ルティがいるところが私の居場所ってことだよね……うん、納得。
国とか家も大切だけど、大切な人がいる場所がイコール帰る場所なんだって考えたら、私にはすでに帰る場所があるんだなぁ。
彼のことは未だに私にはもったいないと思っているけど、たとえお願いされても身を引くなんてこと、もうできないなって思う
「ルティ、ありがとう!なんか元気出たよ」
「???よくわかりませんが、アオイが元気になったのでしたら良かったです。さ、お土産を買うのでしょう?そろそろ行きましょう」
自分で勝手に悩んで、勝手に自己解釈で解決しちゃったけど、うん、考えがまとまって良かった。
アジェアの巨大なお土産観光センターみたいなところで、例に漏れず爆買いを決め込み、大満足な修学旅行となった。ちなみにハガネ君とアーチェリーちゃんは、聞くまでもなく、手を繋いで二人でずっとお揃いの何かを買っていたり、買い歩きスイーツを食べさせ合ったりしていて……うん、付き合いましたね。
キラ君は羨ましそうに『俺もハニーのとこ行けば良かったなぁ』とボヤいていたので、案外こちらもゆっくり進展しているのかな?と思った。
ふふ、みんな恋する季節ですなぁ~とニマニマ考えて、はたと気付く……
「我が兄にだけ、ラブロマンスが生まれていない……」
「え~?アオちゃん、なにか言った?」
ゴーちゃんの恋の季節はまだまだ先のようです。