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16.5:中華、はじめました



******



「アオイお嬢様、ブタタンマンを作った者を紹介させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」

「え?これってここで作ったものだったんですか!?確かにアツアツだけど」



 いつか、どこかで再現できないかなと思っていた豚まんが、こうしてあっさり手に入るなんて。てっきりワノ国辺りで輸入したとか言うのかと思っていた。



「紹介致しますね。彼は学園が新しく雇ったチン=ケンポーです。ワノ国のアジェア出身で、学生食堂の調理員の募集に際して、彼がちょうど求人募集に引っかかりスカウトしたみたいです。正式入社を前に、どうせならテスト代わりにお嬢様の故郷の味を、と作らせました」

「よろしくお願いするアルネ~」



 アルネ!?なにその典型的なカタコト言葉は……ちょっと胡散臭いが、ブタタンマンは空を飛ぶほど美味い!



「陳=拳法さん?もしや、得意料理は麻婆豆腐で、趣味は少林寺拳法かなにかですか?」

「アイヤー、私の得意な料理はショウロンポーで、趣味はカンポー薬作りネ」



 うむ。ケンポー、カンポー、ショウロンポーね、陳=漢方さん、ん?拳法さんか?陳さんでいっか。



「麻婆は残念だけど、小籠包は私大好き!!あ、陳さん、明日のお弁当に持って行きたいので多めに作って頂くってできますか?口に突っ込みたい心友がおりまして」

「イーアルサンスーよ。任せとけネ」


「アオイ、口に突っ込みたい心友とは、まさかとは思いますがキラのことですか?その行為は浮気だと思います」

「えー!!きっとキラ君のことだから、こういうのってひょいパクっと食べて『ごふぉっアッツー!!』ってなるんじゃないかって楽しみだったのに」


「どうかなぁ?案外食したことあるかもしれないよね。僕も輸入したものなら、昔食べたことあるよ」

「えぇ~そうかぁ…腐っても王族か…いや腐ってないけど。じゃあ三人前でいいです。あ、やっぱりおにぎりを抜いてもらって四人前で!!」



「じゃあ張り切って用意しておくヨ~。デザートは月餅(げっぺい)でイイカ?」

「げ、月餅ですとっ!?あ、ちょっと待って下さいね」



 危うく月餅に脳が支配されるところだったけど、<焼き菓子摘まみ食い事件>を起こしたばかりの執行猶予付きな私は、まずは審判から許可を頂かなければ!!



「ルティ……私、月餅と苦めのお茶が好きで…ようするに食べたいの。いい?ルティと同じ『月』を表したお菓子なんだよ~。一緒に食べようよ~」



 猛烈こじつけ感が半端ないが、懐かしの月餅を食べる為だ。ちなみにクルミ入りが好きなんだけど、あれって案外種類あるんだよね。クルミ入りしか食べた事なかったから知らなかったけど。



「私と一緒であればいいですよ。月の菓子があるのなら、ぜひともアオイに食べてもらわねばなりませんね。ただし、私が先に毒見してからですよ?」

「じゃあ、初回は()()()の為に、僕も一緒に食べてもいいですか?」



 ん?月餅に万が一ってなんだろう……?あんこで喉詰まらすとか?餅入りで喉詰まらすとか?喉詰まらす以外で万が一が浮かばないなぁ



「そうですね。初回は一応、なにが起こるかわかりませんし、ゴーシェを同席させましょう。ただ、彼もそれなりにキチンと躾けられているそうなので、問題は起こり得ないはずだと思いますが」

「あ、もう首輪付きなんですね?それなら警戒レベルも落とせますね」


「ねぇ、二人共一体なんの話してるの?」



『月餅食べていい?』しか質問してないよね?要人を迎える前のSP側の打ち合わせか何かかな?って思う会話じゃないか?躾けだの首輪だのって……ん?アルヨさん、いや陳さんはもしや獣人!?



「月餅を食する話でしょう?それに彼はワノ国の者です。獣人ではありませんよ」

「私って、脳内だけで会話はできない種族なのかな?もしくはルティが心の声が読めちゃう人なの?」

「アオちゃんって余計な方向に考え出した辺りから、ブツブツ声に出始めるんだよ。便利な機能だよね!」



 まさかの私の心の声駄々洩れは【機能の一つ】だったのか!?そして私の考え事は基本的に余計な方向なのだろうか……切ない



***



 ちなみに後日キラ君に、少々ドヤりながら『キラ君って美味しい小籠包って食べたことある?』と聞いたところ……


「あーショウロンポー……知ってるけど、ちっさいから食べた気がしないやつな。俺の時は確か、なんかデカい饅頭の中にたくさんショウロンポーってやつを詰めてもらったやつを食べたんだったな」

「へぇ……」


 もしかしてお祝い用の桃饅頭が巨大桃饅頭を割るとたくさん出て来るっていう、あの夢のようなものを小籠包で再現したってこと……!?ちゅうか、キラ君は火傷をしないのか?

 良かった、こんなあげ甲斐のない者に陳さんの小籠包を渡さなくて、と心から思った。



「ハイヨー!中華ランチAの社長(シャチョ)さーん」

「はいはーい!中華Aはアオイ社長さんでーす!」


「オー、アオイちゃんね。ホラ、カワイイ子にはゴマ団子オマケするネ!」

「ワオ!陳さん、サイコーあるよー!!」



 ヤッター!ゴマ団子めちゃくちゃ好物なんだよね!しかも出来立てだよ!陳さん来てから学食クオリティがまた一つ上がっちゃったなぁ



「はい、アオイSTOPです。失礼しますね」

「あ、私のゴマ団子がぁぁぁ!!」


「うん、念の為、僕も毒見するね。もぐもぐ……」

「あ゛ぁ゛~!!三個しかなかったのに、残りが一個にぃぃ!!」


「異常ないですね」

「うん、大丈夫だよ」

「うっ、うぅ……前回もオマケの杏仁豆腐が1/3にされたし、小さいマンゴープリンはマンゴーしか残ってなかった。あったものが目の前でなくなる辛さったらない……」



 あの罪に対する刑期は一体あとどの位で終わるのでしょうか?そもそも、陳さんも『オマケあるよー』って渡さないで、初めからセット販売でみんなに出してくれれば済むのに、特別に出すから毒見で持って行かれちゃうんだよ~!!



 もうヤダ、普通に食べたーい!!






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