16:いつの間にか終わっていた休日…(涙) ☆
明日、28日(日)も投稿します(^^)
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「おは…う…ます、わた…アオイ」
誰かが私に優しく呼びかけている。ふんわり夢見心地な目覚めの中、視界一杯に映ったのは……
ルティのドアップだった
「ぎゃーーーー!!!ってルティじゃない!もうっ、目を覚ます瞬間くらい、心臓は穏やかな状態で迎えさせてよね!……ってあれ?ここはどこ?学校は?そして私なんでナイトガウンなんてオシャレなもの着てるの?」
こういうのは高層マンションに住む、一部の勝ち組が着るものって相場が決まっているのに!もしかして私倒れたりした?
「全く…第一声がそれですか?私はこんなにもあなたを待ち焦がれておりましたのに。あなたにとって記憶上は半日程度かもしれませんが、私にとってはほぼ三日もアオイと触れ合えなかったのですよ?」
「はぃぃ!?み、三日ですと…?」
「そうですよ。毎週末、それはそれは楽しみにしていた土・金の同衾dayが過ぎ、今日はもう日曜日ですよ?」
「う、嘘だ……私の大切な休息日が、知らない間に終わっているだなんて……今週はゴーちゃんから借りた小説を読もうって張り切ってたのに!!」
それにしても最近、言葉で遊び過ぎじゃない?金・土でしょ、普通。なにを極めたいのかこの人は…
「重要なのはそこではないでしょう?あなたが小腹が空いたからと、軽い気持ちでよくわかりもしないものを食べたりするからこんな大事に……」
「えぇ!私、またなにかやちゃった系……とか?」
「そう、怯えないで下さい。益々虐めたくなってしまうでしょう?でも…そうですね。今回は確実にお仕置き案件ですね」
フッと笑ったあと彼は表情をガラリと変え、唇はニィっと怪しく弧を描いていた。すでに見抜かれている弱点の耳裏をそわりと撫でられ口付けられる。ピリッと電流が流れたような感覚があったと思った時には、もうベッドに沈められていた。
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お仕置きとはただのこじつけのようなもので、彼からただ存分に愛されただけではあるのだけど……目覚めた時はまだ少し明るかった外は、すでに暗くなっていた……え、日曜日まで、もうオワタ?
「まだ物足りなくはありますがアオイの身体の方が大切ですし、それに精神面ではかなり癒された週末でしたので許してあげますね」
「なんて?」
おい、ちょっと待て。あれで物足りないだって!?そして聞き捨てならないのが『精神面でかなり癒された週末』……はて、聞き間違いかな?お仕置きはルティになにかしちゃったからとか、今まで眠り続けていたから心配をかけたとかそういった類かと思っていたんですけど?
そういえば、そう思い込んでいただけで詳細なんも知らないじゃん私、バッキャロー!!
「結局、私がゴーちゃんに告白してきた子の焼き菓子を食べたことが、そもそもの原因なのはわかった。でも、そこから私の記憶はないし、わかっているのは金曜日の放課後辺りから、急に日曜夕方になっていて、明日からまた平日が始まるという絶望感だけなんだけど……」
ルティはなんか充実していたみたいだけどさ、私は休みなしで学校みたいな感覚なんだよ?ちょっとは同情の余地があっても良くない?
……って私は心の中で思っているだけなのに、『そんな程度なわけがないですよね?』っていう、その含みのある顔を向けないで頂きたいです。
まぁそうですよね……きっと良くないんでしょうね。うん、そうだわ
「だから私は初めに言ったでしょう?『ほぼ三日ぶりのアオイ』だと」
「は?その言い方だと、目覚めるまでは私ではない何かになっていたってこと?」
そして、今頃ようやく真相を教えてもらった私……チーンと効果音が鳴る、土下座です。まさにリアル『記憶にございません』状態ではあるけれど、間違いなく方々にご迷惑とご心配をお掛けしたわけで……
ただ、肝心の事件解決法はふんわりとしか説明されなかった辺り、私は知ってはいけませんよと明示されていると言ってもいい。見ざる聞かざる言わざる方式をとらせて頂く所存です。
さすがにご迷惑の規模があまりにも大きすぎて、だいぶ凹んでいる私は、ルティに横抱きにされながらヨシヨシと宥められていた。なにより、私が勝手に強請って食べちゃったというのに、ゴーちゃんが責任を感じて鬼退治の如くカチコミに行ったと知りショックだった。
戻ったら絶対、絶対、床におでこを擦り付ける勢いで謝ろう!そして、しばらくは二人の好物のみをお弁当に入れてあげようと誓う。私の償いのバリエーションの少なさにも泣ける
「カーモスさんにはどうやって謝ったらいいかなぁ……カーモスさんが喜ぶものも知らないし」
「カーモスは放っておいて大丈夫ですよ。彼は教育係としての責任をとったまでのことです」
でも、それはそれ、これはこれじゃないのかなぁ。戻ったら直接、謝罪とお礼を言わなくちゃ。
「そういえば、今回の件で、私にも夢が一つ増えたのですよ」
「え、ルティの夢?」
なんと、結婚以外にもついに夢が!?それはとっても喜ばしいことだよね。少しでも意識がそちらに流れてくれると、さらにベストではあるよね。偏りが酷いですのでね
「はい。将来、私とアオイの子供……娘に『ルーチェ』と呼んでもらうことが夢です♡」
「へぇ……」
ルーチェ?随分と具体的というか……なぜ娘で確定してるの?息子でもよくない?ルティ似の。結婚とガッツリ繋がりがある夢だったな……やはりブレないか
私のDNAなんて、せいぜい目の色とか髪色くらいでいいかなぁ。そうじゃないと、ハーフエルフとして『お前ちんちくりんだなぁ、ブス!!』とか言われて虐められちゃうかもしれないじゃない?もちろんそんな奴がいたら地味な仕返しをしてやるけどね。そいつの家の前でクサヤを焼くとか。ドリアンがあったらお裾分けするとか?
ゴーちゃんはハーフでもエルフ同士の美×美だからね。美しか生まれないっすよね。選んだパーツセンスも素晴らしい。さすが天使の申し子……
「そして片腕に娘、片腕にアオイを抱いて、里中を練り歩くのです!アオイ似の娘を授かるまで、一生懸命 私が頑張りますからね。アオイは全く心配しなくても大丈夫ですよ」
「………頑張るのは仕事の話、よね?」
っていうか神輿か?私と娘(仮)は神輿でワッショーイ!と担がれて、ジロジロ見られながら里内を練り歩かれるのか?
せめてさ、絵葉書みたいな感じで【子供生まれました!家族で幸せ一杯です♡】レベルで手を打ってくれないかな?
絵師さんにこっそりチップ弾んでさ、ちょこーっと私の顔もマシな感じか、ぼかした風に描いてもらうとかできそうじゃん?よし、少しずつそっちの路線に誘導していこう……
ルティの急に湧いた夢を聞いていたら、夜も更けて来てしまった。なんとなく戻り辛いこともあって、今日はこのままこちらに泊まり、明日の朝、アイさん達に挨拶してから魔国に戻ることにした
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翌朝――
アイさんからは『迷惑よりもむしろ楽しかったわよ』と言われ、へーリオスさんからはなぜか小さなアメの入った巾着を渡された。『ふふ、これは口の中で溶けるからね』と言っていた。うん。そりゃ、アメだもんね。溶けないアメってなんだろう?
今回、わざわざアジェアの方までヘルプとして駆り出されたというラトさん。『あれ?もうララとは呼んでくれないの?』と冷やかされたけど……なんか感じが変わった?完全にチャラ男風味がとれたとも思わないけど、今までとはなにか違うような???憑き物でもとれました?
なんにせよ、誰もケガもしていないと聞いて安心したし、素直にラトさんには感謝を告げ、魔国へ戻った
屋敷の玄関前へ転移すると、ちょうど支度を済ませたゴーちゃんが準備を終えて出て来たところだった
「ゴーちゃん!!無事で良かった!!」
「あーちゃ…じゃなくてアオちゃん!!はぁぁぁ、良かったぁ。無事に元に戻って……」
すぐさまゴーちゃんへと駆け寄り、華麗なるジャンピング土下座の姿勢をとった。私の謝罪如きに何ら価値もないけれど、謝らずにはいられない!!
「ゴーちゃん、ホントにホントにたくさん迷惑掛けてごめんなさい。もう二度とあんなことしないって誓うから!うぅっ……うぇぇぇぇん」
「え、あれ?あーちゃ!?じゃないよね…まだ混在しているのかな?あーほら、ヨシヨシ……泣かないんだよ。ちゃんと僕が兄として注意してきたから」
「え?」
ついにゴーちゃんからもこの不穏な台詞が出るようになったとは……私の責任はかなり重い。
でもなんでだろう?妙に感情が溢れやすいというか、ゴーちゃんが言うように、5歳児の私の感情がまだ少し残っているのかもしれない。お恥ずかしぃ……
そしてカーモスさんも、昨日まで他国に行っていたとは思えないくらい、執事のタキシード姿が今日も決まっている。なんなら、清々しさを感じるくらい、とてもいい笑顔だ
「カ、カーモスさん……あの、この度は私の食い意地のせいで多大なるご迷惑を……」
「おはようございます。……迷惑?さて、なんのことでございましょう?全く、さっぱり、皆目見当もつきませんね。それよりも、そろそろ出発なさらないと遅刻してしまいますよ。
今日のおやつは特別なものをご用意して待っておりますので、摘まみ食いなどはなさらないで下さいね」
ス、スペシャルおやつ、だと……?なにそのご褒美感!?むしろ私の方がお詫びになにか作った方がいいのでは?とすら思うのですが。
でも、なんだろ?なんだろ?ナンだろー!楽しみ過ぎてスキップしながら帰って来ちゃうかも!!
「いってらっしゃいませ。お気をつけて」
「ゴーシェ、あなたは足元に注意してあげて下さい」
「そうですね、今は防御力0ですし」
あ、お昼は控えめにした方がいいかな?かといって、私【サラダランチ】とかの類は、余程の事態に陥らない限りは頼む気ないし、せめて魚にする?あーでも確か先週確認した時に、月曜日は【モーレツサンドセット】だったよね?所謂ビフカツ!!すーぐ損得勘定で選んじゃうからなぁ……同じ値段なら【エビグリルランチ】より、ボリュームもあるし、いいかなって思っちゃうんだよねぇ……ううむ
「よっ!アオ。元に戻ったんだな」
「あれ、キラ君?私、今日ってわざわざ転移で登校した?」
「本当に学園に到着するまで、学食のランチを何にするのか論争を一人で繰り広げておりましたね。それほどの執着力が備わっているのであれば、もう少し私への執着へと還元して頂きたいものです」
「ふふ。アオちゃん、魔国史でもその1/10でいいから集中力を傾けた方がいいかもね」
「す、すみません……『特別』に弱いもので……」
「では、教室へ向かいましょうか。送っていきますよ、私の『特別』なアオイ」
「さ、行こう。僕の『特別』な妹、アオちゃん」
「置いてくぞー『特別』な友達!」
「~~~っ!!もうっ、なんなの!?三人揃って口裏合わせたみたいにさ!!『特別』はそんなに連呼するもんじゃないでしょ!」
「でも、お前『スペシャルランチが月一回って少ないと思わない?せめて週一、いや、やっぱり毎日限定数でいいからあればいいと思わない?』って食堂で熱く語ってたじゃねーか」
「そういえば調理実習の時も、『魔法科だけでも調理実習の回数、特別に増やしてくれないかなぁ』ってアオちゃん言ってたよね」
「そうですね『二人の特別な時間をもっと増やして欲しいな』と言ってまし…」
「それは絶対言ってないと思う。偽証罪で訴えるよ?」
今日はなに?新しいタイプのお仕置き!?なにも三人まとめて連携しなくたっていいのに。いや、一人だけ堂々と嘘情報を紛れ込ませている輩がいたけれど。
まぁ、お陰でようやく頭が冷静さを取り戻したかもしれない……スーン。
「おお~!さすがルーティエ先生だな。落ち着かせるのもお手の物ってやつか」
「ルーティエ兄さんが、アオちゃんの取り扱いを熟知してるからこその技ですよね」
「デレからのスン、一番冷たいツンからのスン、これらの統計を元に導き出された数値と、信頼関係の上で成り立つ高度な技ではありますね。この見極めを誤ると、ただの変質者扱いの、ゴミ屑を見るよりも冷たい視線に変わりますので、注意が必要です」
「へぇ~すげぇな。俺には無理だわ」
「う~ん、アオちゃんから変質者やゴミ屑以下な視線か……怖くて僕には無理かも」
「これが大人と子供の差です」
なるほど……じゃねーわ!!ゴーちゃん、取り扱いってナニ!?キラ君、私ってばそんなにチョロいのか?そしてルティ!!……ちょっと統計ってどうやってはじき出してんの?
もうわからない次元にまで到達しているようで、私は追い付けないよ……
よもや、三人からイジられるとは思わなかったけど、今日は甘んじて受け入れますよ…トホホ
クラスのみんなにも「ビックリさせてごめんね」と謝ったけど、一瞬の内にゴーちゃんが上着を被せて教室から出て行ったので、ほとんどよくわからなかったらしい。ゴーちゃんナイス神対応!!
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そして、帰宅後にカーモスさんが用意してくれた『スペシャルなおやつ』はまさかのブタタンマン!!何かのヒーローっぽいっけど、要するに豚まんだった!!まーじーかー!!
急に始まった屋敷内の中華フェアに歓喜の涙と舞を踊り出し、豚まんに飛びつこうとするも、ルティとゴーちゃんに「危ない!」と両腕を確保され取り押さえられる私。
そろそろ容疑者確保のようにするのはヤメテ欲しい……
明日もAM6時投稿予約済みです!