12:わぁっ!小っちゃくなっちゃった!?~甘い誘惑にご用心~ ★
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ガサ、ガサガサ……
頭の両サイドと両手に木の枝をつけて、現在尾行及び覗き…いや、見守りをしている私とキラ君。
彼は羞恥心が勝っているのか?さっきからソワソワと動く為、その度にガサガサと音を立てていた。全く、スパイには向かないな
今は少し距離を開けたところから、ターゲットを見守りつつも聞き耳を立てているところだ。
念話が、できない私はヒソヒソ声でキラ君と話している
「ちょっと、キラ君ソワソワし過ぎじゃない?だから先にトイレには行っときなって言ったのに!」
「アホか!トイレじゃねーわ。大体なんで俺がアオと一緒に、ゴーシェが告白されるところを覗きに行かなきゃなんねーんだよ!」
「ちょっと、声が大きいっ!これは断じて覗きではないからっ!ゴーちゃんが心配で見守ってるだけだなの!」
「見てる時点で覗きだろーが!!」
以前はこんな感じでも『まぁ、見守りっちゃ見守りなのか?』程度には誤魔化されていたと思うのに、日々ツッコミを鍛錬している内に、賢くなってしまったよように感じる
「……ねぇ、なんか最近賢くなってきてない?やりづらいから、元のアッパラパーに戻ってくれないかな?」
「アホイに言われたかねーわ!魔国史は俺以下だったろーが」
「そういうの【目くそ鼻くそを笑う】って言うんだからね。私が69点、キラ君が70点……くっ!60点台か70点台かで見事に線引きされてる!!うぅっ、相棒だと思っていた奴からまさかの裏切り…」
「裏切ってねーし。単にお前が不敬極まりない覚え方したのが悪いんだろ?普通気付くわっ!そして、女が目くそ鼻くそ言うなバカ!」
四代目竜王の名前を【ウスノロバカマヌケ様】と誤って記憶していたが為にこんなことに……正解は【ウスロノスバッケーヌカ様】だったって言う……子を沢山もうけた王様と言う功績があるみたいだけど、知らんわ!!
「今日の敵は明日の友って言うけど、逆もまた、然り。キラ君は今から敵だな!!」
「それに習うなら明日じゃねーのか?つーか何で俺までこんな小っ恥ずかしい格好させられなきゃなんねーんだよ」
「あのさ、こんな汚れ仕事をキラ君以外の誰に頼めっていうのよ?」
「どちらかと言えば、一番ラストの候補に入らねーのか?身分上なんだしよ」
「はいはい……今日も王子キャラが冴えてますなぁ~」
「だから俺は王子だっつの!」
そうは言ったって、王子の風格?品格?なんも感じないんだから仕方がなくない?しょっちゅう人を揶揄って楽しんでいるような奴を王子とは認めねぇなぁ~。しかも自称 情色人らしいですからね。この辺は自己分析できてるって言えるわ
「だいたい隠れて偵察するならハガネとかの方がよっぽど向いてんじゃねーか?」
「そうかもしれないけど、逆に私がハガネ君を見つけられなくて、その辺の木に話しかけてしまう可能性が高いじゃない」
「あー…まぁ、やりそうではあるな」
「それに……ハガネ君も大切な友達だけど、心友ではないし、こんなこと頼めるのって心友のキラ君しか思いつかないもの!」
「心友……」と言いながら感極まっていると思われる。よしよし、素直な王子はこうでなくちゃいかんと思うのよね。悪戯っぽいことするなら、やはりキラ君とのノリの方が楽しいもので。
「おい、それってフツーに俺が一番利用しやすいってだけじゃねーか。なに良い話したみたいな顔してんだよ!バレバレなんだよ!!」
「てへ♡バレた?まぁ些末なことは気にすんな!」
「お前が言うな!!」
「シィ!!相手の女の子が来たよ……こんなことルティがいる時にはできないからね。ドキドキするよね」
「俺はこんな姿を誰かに見られたらと思うとドキドキするわ」
そう、今は滅っっっっ多にない、ありえないレベルでルティの監視下…もとい、そばにはいない。教員研修とやらが前期、後期に一回ずつあるとかで、安定の舌打ちをしながら超絶不機嫌に研修に参加していった。【壁に耳あり、障子にルティ】だからね、同じ校内にいたら即刻バレていたと思う。
「ねぇ、キラ君は何を話しているか聞こえるの?」
「あー…まぁ、な。イロイロと聞こえるわ、イロイロと」
「ぐふふ、傍聴班としてスカウトした甲斐があったってものだよ!で、なんて?なんて?通訳カモン!!」
「俺はいつからお前の組織入りしたんだよ。あー…あれだ、あのドワーフ女子がゴーシェを好きみたいで……でも付き合ってとまでは言わないから、せめて手紙と手作り菓子だけでも受け取ってくれって……見ての通りゴーシェは嫌がっ…いや、断ってるけど、押されてんな。さすが筋肉女子……」
なんと!!積極的なのに、控えめなラブ!!遠くから見つめております的な感じ?昔の日本人の恋愛みたい♡筋肉は細マッチョだけど、私よりも背丈は小柄で……150cm位?
ゴーちゃんを守れる女子か……アリかもしれないよね?案外ドワ女がゴーちゃんの恋人っていうのもいいのかもなぁ。
でも、今回はゴーちゃんは断っちゃってるんだね。残念
「はぁ、ゴーちゃんに渡したら戻っちゃったねぇ~。ドワ女ってダークエルフとか竜人族とはまたタイプが違うんだね。乙女チック~」
「なんでも略すな。確かに乙女ではあるけど……女は柔らかい方が俺はいいけどな」
「お前の好みは聞いてねーわ!変態!!」
ペチンと持っていた枝でキラ君の頭を軽く小突いたつもりが、少々力が入っていたらしい。しかし相手も相当な石頭なのか「バキッ!」と音を立てて折れてしまった。
(マズイ!!大きな音がっ!)
「ハァ、そろそろ出ておいで。そこにいるんでしょ?アオちゃん、キラ」
「え!?なぜにバレてしまったの?もう!キラ君が石頭だから悪いんだよ」
「あのなぁ……初めっからバレてんだよ。こっちは念話で会話してたし」
なんですと!!それじゃあ私がやってたことって一人道化状態だったってやつじゃん!恥ずかしいにも程がある。チクショウ…傍聴班め、情報操作で裏切るとは…ぐぬぬ
「頭の枝外していいか?」だって?そのまま放課後まで木になりきっとけ!!
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「それで?どうしてこんなコソコソと後をつけて来たの?」
「大変申し訳ございません!!尻尾切って詫びますっキラ君が!!」
「なんで俺!?俺は巻き込まれただけだろーが」
「キラの尻尾なんていらないよ。貰ったとしても魔獣ターキーの餌にするくらいしか役に立たないし」
「ヤメロ。今度から魔車に乗り辛くなんだろーが」
「ごめん、そんなクソどうでもいいものなんかで済まそうとして。とりあえず明日のお弁当はゴーちゃんの好きな塩唐揚げちょっと多め弁当にするでいかがでしょうか?」
「言っとくけど、俺の尻尾の価値は結構あるんだからな!一度切ったら5年くらい生えてこないんだからな!!」
切っても生えてくるのかよ……竜人だよね?キラ君は本当はトカゲなんじゃないの?やっぱり今度尻尾の先っちょを切ってみるか……でも動くかもしれないしなぁ~うげっ。いらないな、やっぱり
「え?いつもよりも多めなの?やったぁ!それはぜひお願いしたいけど、僕は別に怒っているわけじゃないんだよ。アオちゃんがどうして見に来たのかなって気になっただけで」
「……だって、普段はルティもいるから堂々と見れないし。それに、ゴーちゃんに彼女ができたら邪魔はしたくないじゃない?私のせいで彼女と喧嘩したとかなったら嫌だし。あとは一応、ゴーちゃんをちゃんと想ってくれる人がいいな、とか」
「ふふ。そんなこと気にしていたの?僕はアオちゃんと一緒にいて離れる様に言う子なら、そもそも付き合わないから大丈夫だよ」
「え……?いや、それは嬉しいけど…そういうのって所謂シスコンって言いますか…あまり良くないのでは?」
女豹じゃないけど『自分の彼氏いるくせに、兄まで独占しようとか思ってるわけ?』とか言われかねないなと思っているんだよね。私とルティは同じ屋敷にいるからいいけど、ゴーちゃんの彼女となると普段会えるのは学園なわけで……そこにお邪魔するのは忍びないよね
「そうかな?じゃあ、アオちゃんはもう僕とは離れたくなっちゃった?気持ち悪い?」
「あり得ない!!あり得ないっす!!『NO ゴーちゃん NO LIFE!』ごめん、私はがっつりブラコンです!!でも、でも、ゴーちゃんの幸せを世界でモルガさん、へーリオスさんの次に祈ってるから!これは信じて!!」
「大丈夫だよ。僕だって一緒だもの。アオちゃんの幸せを……うん、ルーティエ兄さんの次くらいには祈っていると自負しているよ」
「ひゃわ~!!ゴーちゃん、大好き!!絶対、絶対、いつかきっとゴーちゃんにピッタリな相思相愛の女の子と出会うはずだから!ちょっと薄まってるかもしれないけど、私の運気をゴーちゃんにもわけてあげるね!」
「お前、その運気は転ばないとか、ケガしない方に使えよ。ブラコン、シスコンでめでたしだな。俺はもう戻っていいか?」
「あ、まだいたんだ?ありがとねー」
「かっるっ!!」
そうだよね。焦らなくてもゴーちゃんはこんなに素敵男子なんだから、なにも心配ないよね。よし、ブラコンはやめるの無理だから、ここは一つ、彼女さんと仲良くなっちゃおう作戦に切り替えるしかないな!!今後はコミュ力を磨くことに尽力しよう
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キーンコーンカーンコーン♪
ようやく終礼のチャイムが鳴った。ルティがいない一日は羽を伸ばせるかと思っていたんだけど、案外落ち着かなくて、一日が長く感じてしまう。
私のルティへの依存度は結構重症なのではないか?ブラコンで恋人依存……文字だけ並べたらかなり癖が強い……マズイな
「はぁ……」
「なんだよ?もう腹でも減ったのか?」
「はぁぁぁ……いいよね、なんにも悩みなどないトカゲはさ」
「なっ!?俺だって悩みぐらいするわ!そして俺は竜人だっつの!!」
ふと隣のゴーちゃんの席を見ると、机の上にはカバンと本日告白してきた女の子から貰った小さなカップケーキが3つ……実は少し小腹が空いてきていた。若さのせいだろうか?消化が早い
「ねぇ、ゴーちゃん……これ1つだけでいいから貰ってもいい?」
「え、これ?もうお腹空いちゃったの?1つで足りる?」
「やっぱり腹へってんじゃねーかよ」
「1分前は空いてなかったの!!」
こういうのって意識し出すとお腹が減るんだよ!キラ君が原因なんだから!ジト目で見んな!!
「ふふ。じゃあ今日は僕が、アオちゃんに食べさせちゃおうかなぁ」
「ハイ!いただきまーす!あ~……もぐもぐ。わぁ~これすっごく美味しいよ!やっぱりもう1ついい?あむ……う~ん!あの子お菓子作り上手なんだねぇ……んんっ!?」
あれぇ??美味しいけど、なんか頭がフワフワするっていうか、楽しいこといっぱーい!お友達と遊びたいな、先生と折り紙、お昼寝も……お昼寝?なんで?うぅん……眠たいの……
「そっかぁ、良かっ…アオちゃん!!!」
「おい、どうなってんだ?アオ、アオ!?」
「んーん。それ、おにいたんにどうぞ~ってしてたから、あーちゃ、いらないよ」
「は?『おにいたん』だって?アオ、どうした?お前ワザとか?うわっ身体が……」
「アオ……ちゃん?か、身体が……」
「あーちゃ、ちゅまんない。しらないしといっぱいでヤー!おにいたん、おんぶしてぇ!」
「はぁあ!?嘘だろ……マジかよ!アオが……」
「え、えぇ!?キラ、どうしよう!!アオちゃんが……」
「あーちゃあしょぶの!!」
「「小っちゃくなっちゃった!!」」