始まった日と、終わった人
ガチャリ。手錠が掛かる。
「これより、新たに施行された憲法第百四条により、後村没人、貴方を捕縛させていただきます。」
「…は?」
ーーー
2060年8月10日。この日、とある政治家の熱心な取り組みにより、幾年かの歳月を掛け、
憲法第百五条 AI又は機械人、アンドロイドの人権剥奪、及び捕縛、収監を可能とする。
という憲法が施行された。僕のようやくの悲願だった。
僕は幼い頃からAIが嫌いだった。
努力も無しに何でもネットから情報を得て、勉強する必要がない。運動も、テストも、仕事も、面白さ
も、何もかも元の知識の引用、応用、模倣。なのに世間で認められ、それをあたかも才能だと宣ってい
る。
僕は幼いながらにして、そういったアンドロイドの類いが嫌いだったのだ。だから僕はひたすらに勉強に励んだ。
そんな奴らに負けないように。運動に励んだ。そんな奴らを跋扈させないように。人間でもないのに、
自分の才能でもないのに、何も持っていないのに、何もかも持っている。そんな奴らが死ぬほど許せな
かった。
だから死ぬほど努力した。お陰で良い高校に進めた。だから良い大学を出れた。だから良い政治家になれた。だから総理になれた。
だからこそ、この憲法が、僕が成し遂げた。あんな奴らが認められる訳にはいかないから、今日まで頑張れてきたんだ。来たんだ。
じゃらり。鎖が揺れる。
「これはどういうことですか、貴方は警察の方ですよね。それにその憲法はAI及びアンドロイドにしか適用されない筈です。私を拘束する理由がありませんよね。」
「後村没人さん、貴方まだ理解されていないんですか。」
(…どういうことだ?何をーーいや、でもまさか……!)
思考が追い付くと同時に、その回答はあまりにも早く、信じ難い物だった。
「貴方はアンドロイドだから、今こうして拘束されているんですよ。」
この日僕は、いや、後村没人は、自分が最も蔑み、嫌い、嫌悪し、憎悪さえしたアンドロイドに、自分
自身がなってしまった。
気付かされてしまったのだった。
勢いで書いたので設定も何もないですけど面白いと思います。流行れ