1-2 川
「喉乾いたな」
そう言葉を発すると体は本当に水分を求めてしまうものである。テントからキャンティーンと呼ばれる軍用の水筒を取り出し中に入っている水を口にする。
「水どうにかしなきゃな」
水は人間の体を構成する上でとても重要な物質だ。人間の体を占める割合は成人男性で約65%と言われており、もし水無しで生活している場合は5日程で死に至ってしまう。
現在私が所持している水は今手に持っているキャンティーンの中に500ml程、そしてこの世界に来る前に河原から汲んだ水がタンクの中に5L程だ。成人男性が一日に摂取すべき水分量は約2L。全てを飲用に用いたとしても単純計算で2日と半日で無くなってしまう。まあ、タンクの中の水は河原から汲んだ為、煮沸消毒をしなければ、いくら流れのある場所とは言え微生物を取り込んでしまう可能性がある。
その場合、最悪下痢を引き起こす。下痢にかかってしまった場合、更に水分が排出され余計に水を摂取しなければならない。水不足の中では最も避けなければならない状況だろう。
「飯もやばいな、カップ麺が1個と米が2合、焼き鳥の缶詰が2缶、あと緊急時の為のカロリーバーが三本か、」
食料に関してもそう長く持つ量ではない、理想的な必要カロリーは一日2500kcal程だ。この量からすると3日持つか持たないかだろう。
「とりあえず、川探してみるか」
もし、川が見つかれば水、食料不足が一気に片付く可能性が高い。川ということは基本的にそこで水を汲めばよいし、川に生息する生き物を発見できればそれを食せば良い。
そうと決まればと、テントの中からザックを取り出しザックの中に入っていた物達をテントの中に放り込みザックを背負う。ナイフをケースごと手に取りベルトへと装着する。準備は完了だ
「出発するかー!」
意気込みと共にテントから離れ森の中へと足を進める。昨日も感じていたがやはり、この森には文明が立ち入った形跡はない。少し歩くとけもの道のようなものは見受けられるがどうにも人の痕跡がない。
「おお、!!!」
少し進むと森が開けた場所があり川を発見した。渓流といっても構わない程のものでこれならば魚もいるかもしれない。キャンプ地から20分ほど進んだ所である。見たところ水が濁ってる気配もないし煮沸すれば十分に飲用に適しているだろう。
これで水問題は解決だ。
「魚でもいないかな、お!!?」
川に近づき水中を観察しているとユラユラと動く影を発見した。魚だ。それも何匹かいる。
どうにかして捕獲したい。釣竿か網があれば何とか捕獲できるだろうが、残念ながらどちらも持っていない。しかし、ここで諦める訳にはいかない使えそうな持ち物を確認する。腰にはナイフ、ザックの中にキャンティーン、カロリーバーが1つ。薪割り用の手斧。パラコードの束が10m程、使えそうなものは以上だ。
「これ、いけるんじゃないか、?」
1度準備をすべくテントへと戻る。道に迷わないよう何本かの木に目印の切れ込みをいれたので直ぐにテントへと着いた。
「よし、釣竿作るぞ」
釣りをするのだ。道中で1m程長さのある枝を見つけた為もってきたのだ。先ず手斧を用い、余分な枝をカットしておく。そうするだけで原始的なな釣り竿の完成だ。
次にパラコードを50cm程切った。そしてパラコードの外皮を剥がす。パラコードは外側の皮膜を剥がすと中には何十本もの細い糸が入っている。その細い糸の先どうしを結び合い1m程の釣り糸の完成だ。
そして、焚火用の薪を拾い、爪楊枝よりちょっと太い太さの棒を作る。その棒を2cmほどの長さへとカットし両端を針の様に削り出す。真ん中に溝を入れ。釣り針の完成だ。
出来た仕掛け達を一つにしかなり釣り道具の完成だ。少々、原始的ではあるが昔渓流釣りを教えてくれた人がこの仕掛けで大きなヤマメを釣り上げていた。私にとって初めての挑戦だがどうにかなる事を祈ろう。