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対応と見解



 テレンス兄様の話を聞くに、どうやらトゥルーエンドどころか、各キャラのルートエンディングは各々が全て幻視していたらしい。


 『魔女の未来視』は王家の秘匿扱いにでもなっているのか、祖母がそうだったという程度に近代の話にも関わらず、一般には知られていないようだ。

 身内であるテレンス兄様も知らなかったそうだが、この幻視を何らかの不穏な兆候だとは思ったらしい。

 そんな時に、どの幻視にも必ず現れ、テレンス兄様が私を疎ましく思うきっかけとなるリリィが学院で声を掛けてきたものだから、一気に警戒モードに入ったのだという。


 今はエルネストとファリオと3人で、何らかの対策実行中らしいが…これについては「お前の耳が穢れるから内緒」と詳細を教えてはくれなかった。

 …穢れるって何!



「殿下方も動かれているとなると、マーロウか…」

「ええ、そう伺っています。私とリリィ・トロイゼルが接触しないよう手を回すと」

「…ファリオには知らせておいた方が良さそうだな」

 独り言のように呟き、兄様は私の頬を撫でながら「話してくれてありがとう」と微笑んだ。

「…本当に、兄様方がなさろうとしている事を、私は知らなくても良いのですね?」

「あぁ。お前は、いつも通りに過ごしていればいいよ。…ただ、しばらくはファリオ・ラブロイへ近付かないように」


 ファリオはエンディングループから外れて以降、まだ一度も顔を見ていない。彼はあまり学院に通う事に熱心ではないので、元から学院内で会える機会が少ないのだ。

 『逆転シンデレラ』でも、彼との遭遇率の高いスポットは下町のカフェだった。きっと、今も町民に扮したファリオがウェイターのアルバイトをしているはず。


「ファリオに…。しばらくは町へ出なければ良いのでしょうか」

「そうだね。いっそのこと、しばらくと言わず、あの軽薄な男になど一生近付かないで良いからね」

 にこやかにそう言う兄様に曖昧な笑顔を返し、私は「そろそろ部屋に戻りますわ」と立ち上がる。


(兄様、昔からあのチャラ男が嫌いだもんね…)


 面白い事が大好きなファリオは、身分や立場など気にせず自由気ままに生きている。

 実家であるラブロイ商会は王都一番の大店(おおだな)で、この国の経済と生活水準を一気に向上させた功績から、男爵位を授かった。逆を返せば、ラブロイは男爵位でありながら、国の経済を担う中枢的立場なのだ。

 その跡取り息子であるファリオも父親の商才を余す事なく継いでいて、より一層ラブロイを発展させるのは間違いないと貴族界からの期待も厚い。

 …ただ、少し変わり者なのだ。



 テレンス兄様は何時ものように私の額にキスをしてきた。

「おやすみ、私の宝物。幸せな夢を」

「おやすみなさい、テレンス兄様」











(…私は何もしなくていいのか…)


 リリィについては、そうかもしれない。

 でも、私にはまだ考えなくてはならないことがある。



 部屋に戻り、もう一度、姿見を見る。


 緩やかなウェーブの黒髪、白い肌。

 …目を閉じて、日本での「私」の姿を思い出そうとするが、全く浮かんでこない。



 姿見を見てから、ずっと頭に浮かんで消えない考えがあるのだ。


(…私は、本当に日本からゲームの世界に紛れ込んだ人間なの?)





 恐らくは。


 私は、生まれてからずっと、「クラウディア」だったのではないだろうか。

 私の見た、『魔女の未来視』。それは「クラウディアの死に様」だけではなく、「日本という異世界にこの世界をモチーフにしたゲームがある」…そこからなのではないだろうか。


 『逆転シンデレラ』は、未来の異世界で作られるゲームなのだ。私はきっと、それを視た。





 『魔女の未来視』は、関係者にも同じ景色を見せる。

 つまり、全ての未来に最も深く関わるリリィが、幻視を見ていない訳がない。

 私は、私の死という複数の可能性と同時に、日本の光景を幻視した。だから、私と同じく彼女(リリィ)も「ここはゲームの世界だ」と思い込んだのだ。

 私がライバル令嬢として死をループしていたのと同じように、25通りのエンディングを主人公としてループしたつもりなのだろう。



 彼女にも私の「日本の光景」の幻視が見えたのは、彼女が日本という異世界においても関係者(・・・)だから。



 …リリィはこの世界での生を終えた後、日本という国のある異世界に転生する。

 そこで、この世界で思い通りにならなかったリリィ・トロイゼルの人生を、『逆転シンデレラ』というゲームの中で再構築するのだ。



 異様なまでに、クラウディアを貶めようとする執念を詰め込んで。



やっとクラウディアが状況を理解したところで、この先しばらくクラウディア目線おやすみです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ユリさん作者説に思わず膝を打ってしまいました。 なるほど!
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