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何度も何度も何度も死んだ私、そして彼

掲載日:2020/07/03

転生して死ぬ。転生して死ぬ。

@短篇その42

あ。デューク、やっと見つけた!


「こら、ピュア、こんなところに来ちゃダメだろう?」


また私、その名前で転生したのね・・・って、あら?なんか、サイズが・・デューク?あなた、巨人に生まれ変わったの?


『ピヨヨッ』


え?声が、ひよこの鳴き声?変ね、もう一度・・


『ピヨヨッ』


なに?私の声が・・・ひよこ・・・

ひよこに転生してるぅーーー!!


『ピヨヨ・・』


ひょい

デュークが片手で私を拾い上げ、肩に乗せてくれました。

うわーー、絶景ーー!

ちょっとうれしくて、泣き声を出していると、


「ピュア、楽しいのか?」

『ピヨヨ、ピヨヨ』


‥楽しいと言うか、嬉しいよぉ!

デューク、会いたかった!!

ひよこは男に頬擦りした。



彼女が転生して何度目だろうか・・・


デュークを追って、追って、転生している。


今回初めて動物に転生した。しかもひよこ!!


デュークは知らない。

彼女がずっと彼を守っていることを。



最初・・全ての始まりがいつだったか、もう彼女も忘れている。

確か彼女がわがままな金持ちの娘で、デュークは領主の息子だった、と思う。


彼女はデュークに嫌われていた。

いろいろな誤解で勘違いされていたが、彼女はちょっと我儘なだけの娘だった。

そしてデュークが別の娘と恋に落ちたのを知って・・・

思いの丈のありったけをぶつけ、それで自分の恋心をお仕舞いにしようと、領主の館に向かった。

途中、その娘の姿を見て、思わず木の影に隠れる。娘は誰かと話をしている・・・男だ。

見覚えがある。隣町の町長だ。年はピュアの父親より若干若い程度。


「うまく誑かせる事が出来たわ。本当、デュークなんてちょろいものよ」

「後はあれをこっそりと取ってきてくれれば・・


今はもう思い出す事が出来ないが、何かかなり重要な物を盗む段取りを話していた。


いけない!!デュークに知らせなくちゃ!!


そっとそこから離れ、急いで領主の館へ走る。後少しで着く、目の前まで来て、ピュアは足を止めた。


私は嫌われている。私の言葉を信じてもらえるだろうか?


「ううん、信じてもらわなくちゃ!」


これは領地にとっても大変な事になる、だから言わなくちゃ。信じてはもらえないかもしれないけど、注意してもらうようにすれば良いのだ。取られないように気をつけてもらえば・・


ピュアはなんとかデュークとの面会を取り付け、先程の話を聞いてもらう。


「『もの』を取られるかもしれないだと?そんなことする奴がいるから注意しろ?誰がするというんだ!」


物凄い目で睨まれた。だが、彼女は怯まなかった。


「ただ気を付けてくれればいいのよ。とにかく、その『もの』を取られないように注意して」

「言われなくても大事に保管している!余計なお節介だ!!早く帰れ!!」


デュークは怒りのままピュアを突き飛ばし、外に追いやった。


・・ああ、完全に嫌われた。

でもこれで、謀を潰す事は出来た。領地の危機もこれで防げたわ・・・



そして数週間後、ピュアの家にデュークが訪れたので、ピュアは驚いた。

家人を手で押し除け、怒りをあらわにして、彼女の傍までやってきて怒鳴った。


「お前が彼女を利用して『もの』を手に入れようとしたのだな!恐ろしい奴だ・・彼女を苦しめ、泣かせた罪、どうしてくれよう」

「え」


ピュアはその娘の名は言っていない。ただ盗まれないように注意をしろと言っただけだった。

だって盗人が自分の恋人だと知ったら、きっと彼は傷付く、そう思ったから・・・

その娘は盗みがバレた時、デュークと仲が悪いピュアの名を出して、矛先を躱そうとしたのだろう。


「その娘に、隣町の町長のことを聞けば、全部わかるわ!ふたりが」

「なんで町長が出てくるんだ!まだ言い訳をするのか!!」

「私は逃げません!!町長に『全てわかっている、観念するんだな』と言ってみて!!二人が企んだのよ!」

「彼女が町長と繋がっていると言うのか!!下衆な考えをする・・、この毒女!」


でも彼は怒りで彼女の話を聞こうとしません。いや、聞く気は無いようです。

だって嫌いな女です。恋人を陥れようとしたのです。


ああ、このままでは本当に『もの』を取られてしまう・・そうしたらデュークは領地を追われてしまう。


「お願い!!一度だけで良いから、私の言うことを聞いて!!」


今までにない彼女の態度に、デュークははっとしました。真剣で、必死なのが伝わります。

たしかにその『もの』が無くなれば、彼は大変な目に遭います。彼どころか、領民の生活も脅かされる事になるのだ。


「・・じゃあ、一度だけだ」

「馬に乗って。そして、私と隣町の町長のところに行って。お願い。領民のためよ」


こう言えば聞いてくれるだろう。

デュークはまだ納得はしていないようだが、馬に乗り、二人は隣町へ向かった。



「全て分かっている、観念するんだな」


ピュアが言った言葉をそのまま町長に告げると、彼はブルブルと体を震わせた。

そして、土下座をしたのだ。


「申し訳ありません!!あの娘に誑かされて、良い暮らしが出来るぞと、それでつい」


思いの外あっさりと、全てを白状したのだ。

その娘はこの町出身で、町長の愛人をしていたのだ。



「ピュア・・すまなかった」


謝る言葉を知らずに生まれたとばかり思っていたデュークが頭を下げたので、ピュアは少し驚いた。


「よかったわね。これで領地は安泰だわ」

「彼女がそんな謀を企んでいたとは・・・俺は人を見る目が無い」


すっかり落ち込んでいる。でも彼女との揉め事は、彼と彼女だけで頑張ってもらいたい。

でも謀の内容は悪辣だ・・騎士団や文官を呼ぶ事態となったもの、デュークはどうするのかしら・・


その日から、娘は行方が分からなくなってしまっていた。

町長は牢屋へ、娘は指名手配となった。



デュークとピュアは、この事件以来話をするようになった。

彼女と付き合ってみると、噂ほど酷い女では無い事がわかった。

ちょっと甘えん坊で、ちょっと我儘なだけだった。少し可愛いとも思えるようになっていた。

だが。以前お前が嫌いだと、面と向かって言ってしまった彼だ、今更恋人になって欲しいとは言えなかった。

ピュアも我儘で迷惑を掛け、怒らせて『嫌いだ』と言われたので、友人の親しさを保っていた。



あの事件から2年。

デュークはピュアに婚姻を申し込んだ。


そして半年後、結婚式が領主館で行われた。


お祝いの言葉を次々と受け、デュークもピュアも幸せそうに笑っていたが、視線を感じてそちらに振り返る。

ピュアは木の影に立つ人物を見とめた。あの娘だ。ボウガンを持っている!嘘!私を狙っている?

いいえ、これは・・・!!


「デューク!!」


ピュアは花婿の前に駆け寄り、彼にしがみ付いた。

にゅぐ、と変な音がして、花嫁がずるずると摺下がって、くたっと床に倒れた。

純白の花嫁衣装が、じわじわと赤く染まる。

一瞬静まって、それから女性が悲鳴を上げて、大騒ぎとなって、逃げようとしたあの娘は捕らえられ・・・


大混乱の中、デュークは呆然と花嫁を見下ろしていた。

背中の矢を、赤く染まったウエディングドレスを、そして目を開かない新妻。

先ほどまで幸せそうに微笑んでいた彼女は、自分を庇って・・・死んだ。

いろいろな誤解をといて、友人として親しくして、愛を育んで、これからだった。


ピュアの人生は、ここで終わった。

彼にとっての幸せな人生も、終わった。




それから・・・本当、何度転生しただろうか。


会った途端、彼と判るのだ。


彼と親しくなって、愛し合って、そして彼を守って、死ぬ。


一度は彼に近付かないようにした。

だが、彼は危機に陥り、彼女は体を投げ出して、彼を庇って死ぬ。

つい庇ってしまった。条件反射というか・・もう何度も庇っているせいなのだろうか・・


庇うのやめて、ふたりで対決しよう。

そう思った転生人生も、結局彼女は彼を庇って死んだ。


これは・・呪いかな?


ようやくそう思い当った。

遅え。


前世では、彼と逃げている時にドラゴンが飛んできて、私だけが足で掴まれて握り潰された。

これは助けたとは言えないか。あはは。


『ピヨヨ』


今度は助けたくても助けられないや・・ひよこだし。





1年経った。

ひよこは軍鶏になっていた。

軍鶏は強いよ。カカカッとクチバシで高速突き!!


「いてえ!!やめろやめてーーー!!」


ふふ。強盗の足に穴たくさん開けたった。


「すごいな、ピュア。番犬いらないや」


コケッ




この家にいるのは、私とデュークだけ。

山奥に一人で住んでいるの。


今年は飢饉で。


食べ物が少なくて。


デュークも頬が痩け、肋が皮膚を押し上げてて。


デューク、お腹減ったね。


私を食べて。

美味しく食べてね。もう、卵、産めなくなっちゃったから。



私はまたデュークを守ったのだった。






「ピュア、やっと君を見つけた」

「デューク?」

「ああ、本当にやっと・・前の記憶がある君に会えた」


そして私はデュークの話を聞いた。


あの結婚式の後、デュークは魔法使いに頼んだんだって。

私に遭いたいと。

そして魔法使いは術よりも効果が高く、持続する『呪い』を掛けたんだって。


デュークも何度も何度も転生したんだって。

私を見つけても、私の記憶を持っていなかったんだって。

これは私と同じ。

そして何度も彼を守って先に死ぬ。

これも私と同じ。

何度も何度も私の死を見て。

そして転生。

守る事無く、人生を全うしないと呪いは解けないのだろうか?解呪は不明のままだ。


彼も近寄らない人生を選んだ事がある。

でもやっぱり死ぬ。


デュークは私が死ぬ姿を、いっぱい見た。

何度も何度も何度も何度も・・

見たく無い、もう終わってくれと願っても、呪いは解呪出来ない。


「・・地獄だった」

「デューク、ごめんね」

「どんなに安全な仕事を選んでも、何かが起こって死ぬ・・・もうたくさんだ・・・」

「ごめんね・・」

「だから、もう庇うな。守るな。そのままでいてくれ。俺をこの地獄から解き放ってくれ」

「うん。デューク、でも遭いたかった。今まで転生しても、デュークの記憶を持った人はいなかったもの」

「ピュア・・」

「やっと、デュークに会えた。私、本当に嬉しい」


彼にギュッとしがみ付いて、体温を、体臭を、皮膚と骨格を感じる事が、やっと出来た。

身長、骨格、髪と瞳の色・・・

そういえば今の彼の姿は、一番最初の彼にそっくりだ。

そして私もあの時のピュアに瓜二つだ。


「やっと会う事ができた。そう言えば式の途中だったな。まだ済ませてなかったな」


彼はなんだか少しだけ『ダーク』な感じで微笑んだ。

そして彼女を引き寄せて、足早に歩き出した。


「済ませてなかったって、何が?」


ある建物の中に、彼は彼女と入っていく。

最近の言い方はアミューズメントホテルっていうんだっけ?えええ??


「初夜だよ」






『これにて術は解呪されました』


夢の中で、誰かが言ったのでした・・・


ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。

pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえず、軍鶏と初夜を過ごさなくて良かったです。いつも通りの濃厚な愛情が楽しいですね。
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