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評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「両国の合同機関ですか」



「あぁ、そうだ。おはよう、マリーゼ皇女殿下。フランもおはよう」


 背後よりの凛として澄み渡る声が二人を振り向かせる。

 そこには声の主であるマリーゼとフランが佇んでいたが、二人の様子は対照的だった。

 マリーゼは目を瞑りながら静かに笑みを浮かべていたが、フランは普段の着こなされた燕尾服ではなく、女性らしい純白のドレスに身を包み、もじもじと地を見つめていつまで経っても目線を合わそうとしない。


「おはよう……ございます……」


 蚊の鳴くような声で不安そうに、まるで羞恥を体現していると言わんばかりにフランは挨拶する。


「随分と可愛らしい姿だな、しかし良く似合っている。まさに深窓の令嬢といったところか」


 ルータスは感心した様子でそう言い残し、フランの頭の先からつま先までの手入れが行き届いた姿を、じっくりとなぞるように眺め始めてしまう。


「……ッ! やはり私、この様な姿……ッ! 着替えてきますッ!!」


 これには赤面しながらも耐え忍んでいたフランも我慢の限界となり、叫び散らすように声を上げるが―


「駄目です。お父様と謁見するのに、あのような女性らしさのない燕尾服では我が国の淑女として嗜みに欠けますよ」


 意地の悪い子供のような笑みを浮かべながら、マリーゼは彼女の腰に手をまわし、制止してしまう。

 それでもばたばたとフランは暴れてはみたが、やがて観念したように、ぎゅっと口を一の字に紡ぎながらぐっと押し黙る。

 その様子にシンシアは安堵の表情を見せる。

 ルータスはニヒルに笑い、行くぞと一言発した後、くるりと踵を返してかつりかつりと歩みだす。


 そしてルータスの様子を確認したマリーゼは、フランをようやくのことで解放して、にっと彼女に微笑みかけた後、耳元でこしょりと何かを呟いた。

 それからゆっくりと、美しく整然と、それでいてどこか物寂し気に後を追ってゆく。

 そんなマリーゼの様子にフランは何処か暗く真剣な表情になりながら、しばらくその場に立ち尽くした後、しんとした空気の張る長い廊下をようやく後続するのだった。

 


xxx



「特務執行機関か……、それもハーヴェンブルクとの合同機関とはな」


「突然の提案、驚かれるのも無理はありません。レーベラのような存在すら、いまだ眉唾物と存じております。この国は千年以上も前からハーヴェンブルクの魔族が魔物を使役していると信じきっていたのですから。私の事も無理に信じきってくださらずとも結構です」


 朝食を済ませたルータス、セレナ、フランの3人は、一同に謁見の場において、ヴェルビルイス帝国現皇帝であるガルド=ハインケル=ヴェルビルイスと厳かに対面する。

 その傍らには娘であるマリーゼが掛けており、護衛騎士団長であるシンシアはマリーゼの傍で立ちつくしていた。

 

 一通りの提案を済ませたルータスは最後にそう申し述べた後、静かに目を伏せ返答を待つがーー

 

「ルータス、君が敵意を持っているはずがないことくらいわかるよ。彼女達の姿を見ればな」


 ガルドはセレナとフランの二人に目を向けた後、娘のマリーゼへと優しく微笑みかけることで返答した。

 セレナとフランは二人して照れ臭そうに笑みを浮かべ、マリーゼは罰が悪そうにしながら、ぷいとガルドから視線を背けてしまう。

 そんな娘の微笑ましい様子を確認した後、ゆっくりとガルドは口を開き、ルータスへと問いを発する。


「だが一つ教えてくれないか。千年前、我が国がかつて擁していた天啓の勇者が一行と敵対し、自らの命と引き換えに退けたのだろう? なのに何故、この国を助けてくれるのかね?」


「国同士の敵対関係など、私にはどうだっていいことだからです」


「ほう……?」


「私の行動理念は今も昔もただ一つ。己のかけがえのない大切な存在を守り続ける、それだけです。千年前、残念ながら彼らは誰一人として私の話など聴いてはくれませんでした。だからこそやむを得ず、大切な者を守るために決死の覚悟で彼らを封じました。おそらくその頃からレーベラ達のような勢力が存在し、両国を争わせるように暗躍していたのでしょう」


「……成程な。今の君にとって、かけがえのない大切な存在というわけか」


 再度セレナとフランへと目を向けながら、ガルドは言葉を続ける。


「しかし奴らの目的は一体どこにあるのだろうか」


「……陛下、レーベラはこう言っていましたわ。我々は人間が生み出す強力な負の感情を大好物にしている正真正銘の化け物であると。そして我々の仲間は既にヴェルビルイス帝国中の何人もの人間と取って代わっていると。国中の仲間を蜂起させ、この国を混乱させることにより、我々にとって食い放題の夢のような楽園が広がるのだと」


 ガルドの問いかけに対して、なんとか怒りを抑えながら報告したのはセレナだった。

 プライドが高い彼女からしてみれば、まんまとレーベラの術中にはまってしまったことが相当堪えていたようだ。

 だからこそ彼女にとって、自身の失態を皇帝であるガルドに報告することなどは屈辱極まりないことであっただろうし、奥歯をぎりりと軋むほどに噛み締めてしまうのも無理はなかったのだがーー



 セレナの報告に対して、ガルドが重苦しく口を開こうとしたまさにその瞬間だった。

 突如発生した黒霧から身を変化させ、気味の悪い嘲笑混じりに、壮年も終わり際であろう彼が現れたのはーー





 ーーそうかそうか。いやはや、そういうことか、成程な。まったくもって嘆かわしいのか、喜ばしいのか。しかし待ち望んだというにはあまりにも粗忽過ぎるが、いよいよようやくにしてお前達は契機を得ることに成功したというわけか。   

【追記】

16日に次回UPします!

遅れてすみません!

書きたい展開までが意外と長いなぁ……(遠い目)


新章から投稿ペースも上げるつもりです!

皆様の応援の程よろしくお願いします!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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