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黒衣の仮面の男、ついに正体を現すが更なる修羅場に巻き込まれてしまう⑤

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「それで……、同衾の予定はいつ頃ですの、旦那様?」



「「「……ッ!?」」」


 いまだルータスに抱き着いた状態で、可愛らしく微笑みかけながら問いを発するセレナ。

 それに対して特に動揺する素振りも見せず、彼女に優しく微笑み返すルータス。

 

 そして二人の様子を見たフラン達は、感動的な場面から突拍子もなく、なんという破廉恥な発言を恥ずかしげもなく口にするのだと顔を赤らめながら憤慨する。

 当然、フラン、マリーゼ、シンシアの三者共にすぐにでも抗議するつもりだったのだがーー


 この後のルータスの返答により、更に面白いように取り乱すことになる。 

 


「そうだな……、取り敢えず正式にライゼルフォード家の使用人となった後は毎日にするか」



xxx



「あ……、あッ、あああッ! 貴方はまッ、ま、ま、ま、まさかッ!? セレナお嬢様の()()が目当てであのような提案をッッ!? 見損なったぞ、ルータス=エヴァン=ライゼルフォード!!!」


 ルータスの問題発言に対して、最初に声を張り上げたのはフランだった。

 何を想像したのか容易に予想できる程に、茹蛸のように顔を真っ赤にしながらも、羞恥心を抑えて糾弾するように叫びあげながらルータスへと勢いをつけて迫ってゆく。

 

 そしてーー、フランがルータスに今まさに掴みかかろうとしたその瞬間ーー


「フランッ!」


 フランの前に立ち塞がり、ギロリと睨み付けるような視線を向けて、そのようにセレナは一喝してしまった。

 驚いたフランはビタリとその場に立ち止まり我に返る。

 静止したフランの様子を確認すると、セレナは一旦息をついた後にゆっくりとどすの利いた声で言葉を続ける。


「……それ以上は、いくら貴女でも許しませんわよ」


「セ……、セレナ……お嬢様……?」


 まるで親の仇に対する、身を切るかのような鋭い視線を向けるセレナにフランは委縮しきってしまう。

 だからこそ、フランは主人であるセレナの名をただただ呼ぶことしかできなくなっていたのも無理はなかった。

 しかしーー、そんな放心状態であるフランの様子を全く気にかけることなく、セレナは平然と声を張って言葉を続けてゆく。


「いいえ、もうすぐ私はただのセレナとなるんですのよ? その呼び方はもうおやめなさい、フラン。それと、そのかしこまった口調もですわ。もはや私は貴女との主従関係など、全く望んではいないのですから」


「……ッ! ………………じゃあ、()()()


 セレナとフランの歪んだ関係は、全てはレーベラという諸悪の根源により始まったものだ。

 だからこそ、その根源が完全に潰え去ったのだからーー、私達の関係も同時に終わりを告げるべきだとセレナは言っているのだろうと、フランは瞬時に理解してそのように発言する。

 フランが自身の想いを汲み取ってくれたことに感謝したセレナは、先程とは打って変わったように顔を緩めた後、優しく笑みを浮かべながらフランに言葉を投げかける。


「ふふっ、本当に……、本当に懐かしくていいモノですわね……。ヴェルビルイス剣術学院時代の、貴女と過ごしたやすらぎの時間を思い出しましたわ……。あぁ、そうでした。そういえば私は爵位剥奪の上奴隷身分となるのですから、これからはフラン様とお呼びせねばならないですわね」


「ッ!? こっ、こちらこそ敬語は要らないよセレナ! それはそうと! セレナは自分で言っていたじゃないか! 全ヴェルビルイス帝国民の憧れの的、高嶺の花、見目麗しく貞淑で可憐なのが自分だって! せっかく競りにかけられることもなくなったのに……、だから……ッ、だからもっと自分を大切にね……?」


 フランはこの時、そのようにセレナを気遣いながらも心から嬉しさを感じていた。

 主従関係ではなく親友だったあの頃のように、大切な彼女の名を呼ぶことでセレナが喜んでくれたこと、自身と過ごした時間がやすらぎだったと言ってくれたこと。

 そして何より、彼女が自身に向けてくれる笑顔がまさにあの頃のセレナの笑顔と同じであったことに。


 しかしーー


 そうして過去の二人の関係に、お互いが望んで戻れたというのにーー

 自分を大切にするようにと、フランに言われたばかりだというのにーー

 

 セレナはフランの思いやりを台無しにして、何故か誇らしげにこう述べるのみだった。



 --嫌ですわよ? だって私はもうーー、とっくに旦那様の所有物(モノ)なのですから。



xxx



 プライドの高いセレナから出たとは到底思えない完全服従の発言が、フランの血の気を引かせて茫然とさせた。

 しかし当のセレナはそんなフランを放置して、視線をルータスへと戻した。

 今の私の目には貴方しか映っていない、否、映したくはないーー

 そう言わんばかりにルータスの目を吸い込まれるように見つめながら、セレナはゆっくりと言葉を続ける。


「旦那様、私は先程固く決意致しましたのよ? 旦那様に一生仕えると。それこそが私を守り抜いてくれた旦那様への唯一の恩返しであり、私の生きる糧でありーー、そして私自身の絶対的な幸福でもあると」


 セレナは普段の可愛らしくも凛とした顔立ちを恍惚の表情に変えながら、更に言葉を続けた。


「初めての感覚ですわ……、この私が身も心も、何もかも一人の男性に捧げきってしまいたいと思ってしまうなんて。こんな日が来ることなんて、昔の私が知れば卒倒してしまうかもしれませんわね。……というわけで、もはやこの心は既に旦那様のモノですわ。そして今度は早くこの身も旦那様に捧げたいと思い、先程のように質問致しましたの。……それにしても毎日とは。そこまで旦那様から情熱的に求められて、私は耐え切れますかしら……?」


 そう言い切り、しなをつくりながらルータスに寄り掛かるセレナを見て、フラン達は危機感を覚えた。

 あの公爵家令嬢セレナ=ルイーズ=ステラヴィゼルが娼婦のように男にしなをつくって寄り掛かり、献身的に身も心も捧げたいと言い出すーー、このような異常事態だからこそ彼女達の皆が皆茫然自失して、石像の如く面白い状態で固まってしまうのも無理はなかった。


 しかしーー


 このままではルータスに好意を寄せているフラン達にとって非常にまずい状況だった。

 ルータスは何故か少しも拒絶する素振りすら見せないし、セレナは微塵の躊躇もなく喜んで身体を差し出すと言っているのだから。


「……ル、ルルル、ルータス……? 先程の言葉……、流石に冗談なのでしょう!? ねっ!? そうでしょう!? ねっ、ねっ!?」


 その中でも唯一これ以上ない程に動揺しながらも、なんとか発言に至れたのはマリーゼだった。

 彼女が希望的観測を捨てきれないと言わんばかりに、そのように恐る恐る問いかけるとーー


「何を馬鹿なことを言っている、マリーゼ皇女殿下」


 幸運なことに、まさに彼女が欲していた言葉が返ってきたのだ。


「で、ですよね!? やはり先程の言葉は、私達を驚かせるためのものですよねっ、ねっ!?」


 そして期待通りの返答に一旦安心するマリーゼだったーー



 --のだが。

 次にルータスから出た言葉が、彼女達に対して無慈悲にとどめをさしてしまった。



「俺は一度口にしたことは守る男だ」



xxx



「さて、長い間調査のためとはいえライゼルフォード家を空けてしまったから父上達に挨拶をしなければ。おっと、その前に皇帝陛下へ俺達の事を報告しないとな。夜も更けているから……、今日は城内の客室をお貸しいただくように頼んでみるか」


「旦那様は救国の英雄ですのよ? その程度、なんら渋られるはずもございませんわ」


「私達も喜んで口添えしよう。セレナをくれぐれもよろしく頼むよ」


 まるで風化してゆく石像の如く完全に固まってしまった超絶美少女三名を取り残して、セレナの両親と談笑しながら円卓会議室を後にするルータスとセレナ。

 かくしてルータスの活躍によりレーベラの陰謀は完全に失敗に終わり、すべてが丸く収まり大団円?を迎えたように見えた。


 しかし彼らはまだ知らない。


 レーベラの背後に潜む勢力がどれほど強大であるかを。

 この後ルータスが提案する彼らに対する備えが原因で、また一波乱も二波乱も起こってしまうことを。


 そしてーー



 遥かに力をつけた()()()が千年の時を越えて帝都に集い、ルータスを驚愕させることになろうとはーー。

今回で長かった第二章終わり!

次回から新章に入って、ようやくあの娘達が現れ始めます。

シンシア、フラン、マリーゼのターンも後日書く予定です!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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