黒衣の仮面の男、ついに正体を現すが更なる修羅場に巻き込まれてしまう④
評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「ならば今回の褒賞としてセレナ=ルイーズ=ステラヴィゼル、君を俺が貰い受けよう」
重苦しい雰囲気の中ーー
ルータスは笑みを浮かべながらそのように突拍子もなく宣言する。
これには先程まで明るく努めていたセレナも、驚愕の表情で目を見張ってしまう。
そして先程までセレナの健気な姿に涙を浮かべていた周囲の人間も、一同に彼を見ることになるのだがーー
「……ルータス、貴方一体何を……?」
沈黙を破ったのはマリーゼだった。
「マリーゼ皇女殿下……、俺は貴女をレーベラの魔の手から救い出し、奴らの存在を明らかにした。おかげでこの国は今後、奴らへの対策を十分に練ることができるはずだ」
「確かにそうですが……」
「だからこそ、その褒賞として俺は彼女を貰い受けると言っている。セレナ=ルイーズ=ステラヴィゼルに対する今回の処罰が爵位剥奪の上、官有奴隷となることが妥当であるのは確かに事実だろう。しかし同時に今回の俺の功績を考えれば……、国法に照らし合わせても俺が褒賞として彼女を要求することも全くもって妥当な範囲だ。そういう貴族もこの国には何人もいたのだからな。勿論彼女の希望通り、爵位剥奪の上奴隷身分として貰い受ける。当然ライゼルフォード家の使用人の身分となるわけだから、ありとあらゆる世話を任せることになるし、同時に一から躾も施す予定だ」
「しかし……、良いのですか? 確かに国法で認められている褒賞ではありますが、いまだ賛否両論のあるギリギリ合法の手段です。ライゼルフォード家の評判を落とす可能性も十分にありうるのですよ……?」
ルータスの予想外の申し出に対して、マリーゼは困惑しながらも確認をとる。
それもそのはずだ。彼女の言う通り、確かに褒賞として官有奴隷を所望することは国法により認められているが、ヴェルビルイス帝国に古くから根付く悪習だとの批判が今も絶えない手段でもあるのだ。
ヴェルビルイス帝国が財政難であり、貴族や功労者に対して与える割譲地も不足していた頃に、苦肉の策として官有奴隷を褒賞として与えるという慣習が広まったのがきっかけだ。
しかし現在のヴェルビルイス帝国は国力に富んでおり、そのように表立った非人道的な制度を残す必要はないとする意見も多い。
その一方で、再度帝国が財政難に見舞われた際に必要となる国法であるから残すべきだ、それに正体も明かさず労働力の供給という名目で行われている地下競売のほうがよっぽど陰湿ではないかとする意見も多いのだ。
そしてライゼルフォード家は代々、このような褒賞を受け取ることは無かった。
だからこそマリーゼは心配して確認をとるのだがーー
「なぁに、構わんさ」
ルータスは少しも迷う素振りを見せず、笑みを浮かべながら即答したのだ。
「父上もお許しくださるはずだ。俺専用の女の使用人が欲しいと、世話係がクラウスのような爺だけではいささかの愉しみもないと訴えるさ。なにせこれ程の美少女だ、俺も己の欲望に忠実になりたいのさ」
--嘘だ。
マリーゼはルータスのそのような発言を聴いて、瞬時にそう思った。
何故ならばーー、幼い頃からルータスを知っている彼女は、彼は正真正銘の無自覚な女誑しではあるが性欲にかまけることなどただの一度すらなかったということを身をもって経験しているからだ。
そして同時に、彼が毎回自身のアプローチを平然とあしらい続けていたことを思い出してしまった。
そのため彼女は赤面しながら苛立ちを覚えるがーー、その様子を笑みを浮かべながらずっと見続けていたルータスが視線を変えるのを確認して、ようやく我に返るのだ。
「さて、これで文句は言わせないぞ、セレナ=ルイーズ=ステラヴィゼル。君は功績者である俺に与えられる褒賞なのだから、拒否権などあるはずもない。それに君は贖罪を完璧に果たすこともできるし、俺は可愛らしい使用人を得ることができる、まさに一石二鳥ではないか。ブリード様とカルラ様も、それでよろしいですね?」
ルータスはセレナに視線を変えてそう宣言すると、今度は彼女の両親に確認をとる。
「あぁ……、あぁ、勿論だとも! 私達を助けてくれた君になら、安心して娘を預けられる……!」
視線を向けられたブリードとカルラは安心しきった顔で、いまだ涙を浮かべながらルータスへと微笑み返した。
一時はどうなることかと心配で仕方無かった彼らだったが、こちらから願ったりの処置だと感謝する。
しかしこのような提案を、彼女が黙っていられるはずがなかった。
「大事な褒賞を……ッ、こんな使い方で……! 貴方は本当に……、本当に満足していますの……ッ!?」
一部始終を目を丸くして傍観していたセレナがようやく口を開き、涙を浮かべながらルータスへと問いかける。
確かに彼女としても、そういう手法であれば互いに思惑通りであると思った。いや、思ってしまった。
しかし本当にそれでいいのかと、本当は他の褒賞が良かったのではないかと気を遣いながら彼女は勘ぐってしまう。
そして同時に、先程まで自身に待っている未来が暗く閉ざされたものであると諦めきっていたというのにーー
この国を守り、私の大切なモノを守り抜きーー、あまつさえあれ程の行いをした愚かな私自身までも余すことなく助けきってしまった彼にーー
災いの大元である私が、これ以上彼にあまえてしまうことなど本当に許されるのだろうかと、セレナは葛藤してしまう。
しかしーー
そんな彼女の想いを全て理解していた男は、彼女にゆっくりと歩み寄りーー
彼女の耳元で囁くように、優しく言葉を施すのだ。
--恐怖からくる身体の震えを必死に抑えながら、どこまでも高潔であろうとした君を俺は守れるのだぞ? これ以上の褒賞など、あり得るはずもないさ。
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ルータスがセレナにそう囁いた瞬間ーー
セレナは目一杯の嬉し涙を浮かべながら彼へと抱きついた。
彼の胸へと頭を預けながら、強く、どこまでも強く彼を抱きしめ続けた。
そんな彼女に一瞬驚いたルータスだったが、やがて優しくあやすように彼女の頭を撫で始める。
セレナは嬉しさで胸がいっぱいになっていた。
周囲に自身が感じていた恐怖を悟らせないように、聴こえないように十分配慮しながら、自身を守れることが最上の褒賞だと言ってくれた彼にーー
そんな彼の底なしの優しさに触れることができた喜びにーー、ただただひたすら感謝しながら涙を流し続けた。
そして彼女はこの時固く決心する。
この男性に一生仕えよう。それこそが私にできる唯一の恩返しであり、生きる糧であり、そして私自身の幸せでもあるのだと、何一つとして疑いもなくーー
--だが。
そんな感極まった彼女の心からの言葉が、あまりにもまずかった。
「それで……、同衾の予定はいつ頃ですの、旦那様?」
【再追記】
ごめんなさい少し延長させてください!
あらら、やっちまったなぁおい、どうするんだルータスさんよォ!?(ゲス顔)
ここまでお読みいただきありがとうございます!
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