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黒衣の仮面の男、ついに正体を現すが更なる修羅場に巻き込まれてしまう③

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

 ーーということは、セレナお嬢様の裸も見たんだな?



 フランがルータスを睨みつけながら、問いただすように言葉を発した途端ーー

 まるで時が止まったかのように、ピタリとその場にいる全員が固まってしまう。

 それは当然、先程から大泣きを続けていたステラヴィゼル家の三人も例外ではなかった。

 

 しかしーー



「……いいではありませんの」



 最初に発言したのはセレナだった。

 彼女はフランの発言に一瞬はっとしたが、やがて目を瞑って自嘲するように、フランの指摘などどうでもよさそうにそう言い捨てた後、ゆらりと振り返って言葉を続けるのだ。



「どうせ遅かれ早かれ、見せることになる無価値なモノですわ」



xxx



「なっ……、セレナお嬢様ッ!?」


「セレナ……、それは一体どういう意味ですか……!?」


 セレナの言葉に驚いたマリーゼとシンシアが声を荒げるがーー


「どうもこうもありませんわ、マリーゼ皇女殿下。まさか私を、好き好んでどこの馬の骨かも分からない男の前で裸体を晒す露出狂だとでもお思いですの? それともその食いつきよう……、もしやそういう趣味の女が好みですのね?」


「だから違うと言っているでしょう!? 私は男性にしか恋愛感情を持ち合わせません!」


 セレナは少しも動じることもなくさらりとマリーゼを揶揄うのみで、まともに返答しなかった。

 そして小さく溜息をついた後、至極面倒だと言わんばかりにセレナは言葉を続けた。


「ならば、先程の言葉の真意くらいおわかりでしょう」


「……どういうことだ?」


 怪訝な表情でルータスが短くセレナに問いを発する。

 するとセレナは彼に向き直りながら、真剣な表情で言葉を続けた。


「ルータス=エヴァン=ライゼルフォード。結果的に絶大な力を持つ魔族の貴方のおかげで、私はお父様とお母様を殺害するということはなかった。ですが先程私が述べた通り、私はマリーゼ皇女殿下とそちらの護衛騎士団長様に散々たる無礼を働きましたわ。特に皇女殿下には、他でもない自らの意思で縊り殺す寸前まで追いやりましたのよ。到底言い逃れのできない、これ以上ない程に立派な大逆罪ですわ」


「ッ! あの時セレナお嬢様はレーベラの策略で魔力を汚染させられ、正常な判断能力が欠けていたのですッ!! それにその件については、医務室であれほど謝罪してくださったではありませんか! 私も皇女殿下も、セレナお嬢様に並々ならぬ事情があったことは理解しているつもりです! だからこそ、その件については不問に付すという話「それでは私の気が済まない、という話でもありましたわ!」ッ……、ですがッ!」


 帝都周辺の森において、あれほど酷い目にあわされていたシンシアが精一杯にセレナを擁護するがーー

 しかし当の本人は、シンシアの熱弁の途中でそのように声を荒げて言葉を遮ってしまう。


「仮に私が公正に裁かれた場合、確かに情状酌量の余地ありとして死罪にまでは及ばないかもしれませんわ。……しかし爵位剥奪の上、官有の奴隷処分位の判決は確実に下るはず。マリーゼ皇女殿下、先程の貴女の反応からするに、私への処置に温情を施すつもりだったのでしょう? ですがわが国の代表たる貴族、ステラヴィゼル家令嬢である他でもないこの私が、そのような御涙頂戴の不当な処置など受け入れられると本気でお思いですの?」


 そして私を馬鹿にするのも大概にしろと言わんばかりに、セレナはマリーゼへと視線を変えて返答を迫る。

 

「…………ですが、本当にそれでいいのですか?」


 重苦しい雰囲気の中、マリーゼはこれ以上ない程辛そうに、絞り出すように声を低くして確認する。


 それに対してセレナは全く躊躇する様子を見せず、軽く笑みを浮かべながらゆっくりと首を縦に振った。

 それは無駄な問答をすることなく、自身の自尊心を考慮してくれたマリーゼに対する彼女なりの感謝の意だったのだろう。

 更に今度は両親に向き直り、セレナは優しい笑顔を見せてゆっくりと口を開きだした。


「お父様、お母様。せっかく生きていてくださったのにこのような決断をしたこと、深く申し訳なく思っていますわ。しかし民の手本ともなるべきこの私が、自ら法を捻じ曲げ不正を働くことなどあってはなりません。私を本当に想ってくださるのならば、潔く法の裁きを受けさせていただきたいですわ」


「ッ! セレナ……ッ! お前は……、お前という娘は……ッ!!」


 公正な法の裁きを受けて、極刑に次ぐ程の罰を少しも躊躇しない自身の娘に対してーー

 ブリードとカルラはこれ以上ない程に目頭を熱くして、涙を浮かべながら愛しい娘の名を口にした。

 

 よくぞこのように立派な娘に育ってくれたという感謝。

 そんな娘がこれから凄惨な目にあうことになるという過酷な現実。

 そして何より、自分たちが何を言っても高潔な彼女が意思を曲げてくれることなどは決してないという確信が、彼らにとめどなく仁愛の涙を流させるに至ったのだ。


 そんな親子の絆を見せつけられていたフランを含めた若き女性陣は、何一つとして言葉を発することができなくなっていた。

 もはやどうすることもできないのだ。

 これ以上血縁関係にもない自分達が口をはさむような野暮なことなど、どこまでも高潔でありたいとする彼女の想いをただただ踏みにじるだけだと。

 そう考えていた三人が唯一できたことは、重苦しく口を閉じて涙ぐむのみだったとしても誰が責められようか。

 

「全く貴女達は揃いも揃って……、とてもではないですが大罪人に対する態度ではありませんわよ」


 そんな彼女達に対して、セレナは呆れ返るように笑いながらそう言い放ち、更に言葉を続ける。


「……もう気付いているかもしれませんが。官有奴隷となった後、競りで買い手がつけば私は慰み者となるでしょう。そうなれば私の裸体など、まるで無価値なモノになると言いたかったんですわ。自分で言うのもなんですが、私はこの通り優れた容姿。それに落ちぶれた元公爵家令嬢とあれば、是が非でも手に入れたいと思う変態貴族も少なくはないはず。……まぁ、お父様の報復を恐れてあまり過激なことはしないとは思いますけれど。実際のところ、召使い程度の扱いで済むやもしれませんわね」


 セレナの言う通り、咎人として官有奴隷となった女性はその様に処理されるのが一般的だった。

 しかし重苦しい空気を少しでも変えようと、それほどまでに皆に心配して貰うほどのことではないと、できるだけ彼女は明るく伝えることに努めた。

 そんな彼女の思いやりが理解できたからこそ、周囲の誰もが感極まって更に涙を流し始めるのだがーー


 

 またしてもこの男によって場の雰囲気ががらりと変えられてしまい、後の修羅場へと繋がるのだ。





「ならばーー、今回の褒賞としてセレナ=ルイーズ=ステラヴィゼル、君を俺が貰い受けよう」

公爵家令嬢を貰い受けようとする男、一体これからどんな酷い扱いをする気なんだ、、、(すっとぼけ)

次回は10/24 16時に投稿予定です!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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