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黒衣の仮面の男、ついに正体を現すが更なる修羅場に巻き込まれてしまう②

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「セレナッ!」



 一体、この男は何を言っているのかーー



 最初はこの場にいる誰もがルータスの発言に耳を疑い、そのように感じたはずだ。

 当然セレナも例に漏れなかった。

 だからこそ、まさか死者を愚弄する気か、馬鹿にするなと彼女が目の前の男に怒りを覚えたのも至極自然なことだった。


 しかしーー

 背後からの聴き慣れた懐かしい声が、あり得るはずのない人物達の涙声がーー

 そんなことがあり得るはずがないと思いながらも、恐る恐る彼女を振り向かせるのだ。


「ま……、まさ……か…………?」



 そしてそこにはーー、確実に葬り去ったはずの彼女の両親が涙を流しながら佇んでいたのだ。

 


xxx



 いまだ何が起こっているか把握できず、目を見開いて狼狽するセレナ。

 ルータス以外の三人も驚愕の表情で彼らを見つめるのみ。

 唯一様子を異にしていたルータスの顔には、満足げでありながらも優しい表情が浮かんでいた。


「そ……、そ……んな……ありえない……、確かに……私は……、私は……この手で……」


 そんな馬鹿なことがあるはずがないと、セレナは自身の行いを振り返ってゆく。

 確かに私はお父様とお母様を殺した、殺しきったはずだと。

 今までの恨みを晴らさないでおけるかと、あれほど嬉々として何度も何度も刺突し尽くしてやったではないかと。

 そして墓標もたててやることもせず、犬畜生の如く土を盛って処分してやったではないかと。

 外道のお前ら如きにはこれで十分過ぎると、あれほど息巻いてすらいたではないかと。


 そのようにセレナは何度も何度も自身の記憶を確かめた。

 しかしいくら思い起こしても確認できたのは、自身の復讐劇が完璧に、確実に、微塵の疑いもなく実行されたという事実のみ。

 だからこそーー、だからこそ彼女はそんな、どうしてこんなことがといつまでも狼狽し続けていたのだがーー

 

「そう、君は確かに手をかけた」


 そんなセレナにルータスは背後より声をかけ、彼女の考えは間違っていないと首肯する。

 しかし、彼の口から続いた言葉は更に耳を疑うものだった。

 


「俺の造った偽造体(ダミー)にな」



xxx



「偽……、偽造体(ダミー)……?」


 ルータスの言葉の意味がわからず、セレナは振り返って思わず復唱してしまう。

 そんな彼女を見て、ルータスはふっと微笑むように笑った後にゆっくりと首を縦に振る。


「話をかいつまんで説明するが……、俺は3年前の行方不明になったあの日、レーベラのような者の集う組織に襲われた。今から思えば、奴らにとって魔物討伐に勤しんでいた俺という存在はこの上なく邪魔だったからなのだろう。その際に奴らの存在と目的を知った俺は、わざとやられたように見せかけて姿をくらました。そうした方が奴らについて調査しやすいと考えたからだ。それから俺は行方不明となり、正体を隠しながら奴らの調査を続けていたというわけだ」


「何故……、私達には伝えてくれなかったのですか?」


 ルータスの説明に我慢ができず、マリーゼが口を開いた。

 そんな彼女に対して、顔を向けてルータスが言葉を続ける。


「レーベラ達の仲間が一体誰にとって代わっているのか分からないからだ。それに己の存在自体を悟らせないという手法は諜報活動において最上の策。特に味方にすら認識されていない状態だと効果は尚更だ。マリーゼ皇女殿下、貴方には悪いと思ったが魔力を隠蔽しながら諜報活動を続けさせてもらった。貴方達を、そしてこのヴェルビルイス帝国中の民を守るために仕方なかったことだとどうか理解して欲しい」


「……それでスヴェン達が総力を挙げても見つからなかったのですね」


 ひとりで納得したように、独白するようにマリーゼは呟いた。


「だがそのおかげで奴らの尻尾を捕まえることができた。国の要であるステラヴィゼル家、君達のおかげでな」


 マリーゼから視線を変えて、セレナへと顔を向けるルータス。


「……私達を監視していたということですの……?」


「ステラヴィゼル家だけではない、有力貴族の周辺には常に気を巡らせていた。国中を大混乱に陥れるためには、君達のような力を持った人物の豹変ほど効果の大きいものはない。奴らが狙うのはそこだろうと目星をつけていた。なかなか尻尾は見せなかったが……、きっかけは君の執事サマだ」


「フランが……きっかけ……?」


「天啓の勇者が末裔、フラン=ローゼル=レヒベルクが突然ヴェルビルイス剣術学院を中退。髪をバッサリと斬り落として、ステラヴィゼル家の令嬢でありかつての同級生だった君の執事となった。それだけでも大きな異変だ。そこで気付かれないように監視していると、君が彼女に何もかもを打ち明けたあの日、君の受け続けていた仕打ちと今回の御両親殺害計画について知ったわけだ。あとは実行当日に気配を消して屋敷に忍び込み、君達が御両親と対峙する前にーー、俺の造りだしたコイツと御両親を入れ替えたのだ」


 ルータスはそう言い切ると、右手を向けて詠唱を始める。

 しばらくすると彼の右手から波打つオーラが湧き出した。

 そして放たれるオーラは次第に大きくなり、徐々に人型に形どられて、ついにはーー 


「ルータスが……二人……ッ!?」


 ルータスと全く同じ容姿へと変化したのだ。

 姿形が全く同じ人物が造り出されたという事実に、ブリードとカルラ、そして言葉を発したマリーゼ以外は驚きで言葉を発することができなかった。

 そんな中、己の偽造体を造り出したルータスのみはそんなことには構わずに説明を続ける。


「俺の造りだす偽造体は能力以外の何もかもを完璧に複写できる。それは外見は勿論のこと、思想や信条、性格、感情や行動までありとあらゆる事柄に至る。勿論、隷属印により支配を受けている状態までもな。だからこそレーベラを欺きとおし、ここまで泳がせて情報を引き出すことに成功できたのだ」


「そんな……、そんなことが可能なんですの……?」


「確かに、セレナお嬢様の御両親にしては弱すぎるとは思いましたが……。思念体を造り出すような魔法は見たことがありますが、ここまで完璧に見分けがつかないものは……。それも貴方は、二人分も造り出したというのか……?」


 フランは自身の記憶を辿りながら、ルータスへと問いを発した。

 対するルータスは、言い聴かせるように、まるで笑い話だとでもいうように彼女らへと返答してゆく。


「そうだ。結局のところ、俺はレーベラの計画を余すことなく完膚無きにまで台無しにしてしまったというわけだ。つまり奴は完全に、完璧に無駄死にしたわけだ、いい気味だろう?」


 更にルータスは言葉を続けた。


「だから当然、そちらにいらっしゃる二人は正真正銘君のお父様とお母様だ。それもレーベラの死によって支配から完全に解放された、君が知るどこまでも心優しく娘想いのお二人に戻った状態のな」



xxx


 ルータスがセレナにそう語りかけると同時に、ブリードとカルラは自身の娘へとゆっくり歩を進める。

 両親の接近に気付いたセレナは再度振り返り、呆然と立ちつくしながら彼らを見つめるのみだったがーー

 そんなセレナに対していまだ涙しながら、ブリードからゆっくりと口を開きだした。


「セレナ……すまない……本当にすまなかった。そちらのライゼルフォード家の御子息に全て話は聴いたよ。私達はレーベラに操られて、お前をとんでもないめにあわせていたと。今更どんな顔をしてお前に会えばいいかなど、私達には分からなかった。そんな資格などないと何度も躊躇した。しかし、お前に謝罪だけはせねばならないと恥を忍んでこの場に現れたことを許してくれ……」


「セレナ……、貴女は私達の失態など全く理由にすることもなく、あまつさえステラヴィゼル家の誇りに懸けてあのように立派な死を決意するとは……。まったく、なんという高潔さなのでしょうね。貴女は間違いなくステラヴィゼル家に末代まで語り継がれる程の気高き人物です。そして同時に、愚かな私などから生まれたとはとても思えない、かけがえのない至宝です。今更貴女に母親面する気などまったくありませんが、立派に育ってくれたことに対する感謝の意を貴女に伝えたかった……」


 そうして涙ながらにセレナへと語りかけるブリードとカルラ。

 今更親としてセレナにあわせる顔がないというのが二人の共通認識だった。

 しかし自らに与えられた責務を果たさねばならないということも、二人揃って同じだったのだ。

 だからこそーー、だからこそ恥を忍んで二人は娘に会いにきたのだった。

 彼女に謝罪するために、彼女に立派に育ってくれたことを感謝していると告げるためにーー、そして己に許された唯一の贖罪を果たすために。


「お父様……、お母様……ッ!!!」


 そんな両親の悲痛な思いを汲み取ったのか、セレナも涙ながらに返答してゆく。


「いいんですの……、いいんですのよ……ッ! 私も……、お父様とお母様の異変に気が付けなかった……。私にも当然に非がありますわ……。それに……、今こうして私の前に戻ってきてくださったではありませんの……。それだけで……、私には十分過ぎますわ……ッ!」


「セレナ……、セレナ……ッ!」


 セレナの言葉を聴いて感極まったブリードとカルラは、思わずセレナを抱きしめるに至った。

 それに対して何の抵抗する様子も見せず、身を任せるセレナ。

 

 その後ヴェルビルイス帝国の支柱であるステラヴィゼル家の面々は、感動の対面を果たしたことにより、揃いも揃って大声で泣き続けた。

 周囲にはステラヴィゼル家執事であるフランだけでなく、この国の皇女であるマリーゼ、その護衛騎士団長であるシンシア、そして反対勢力であるライゼルフォード家の子息までいるというのにーー

 延々と、終わりなくいつまでも泣き続けたのだった。 



xxx



「結局、私達は貴方に何もかも助けられてしまったというわけか」


 ひとしきり彼女らが泣き続けた後、もらい泣きしていたフランが口を開いた。

 対するルータスは手持ちのハンカチを取り出して、彼女の涙を優しく拭いながら言葉を発する。


「これからは君達がこの国を守る番だ。先程レーベラが言っていただろう? 奴らの仲間が国中で暴れ回る算段だったとな。この件については後で話がある」


 わかったと、すぐにフランは返答した。

 彼女にも思うところがあったからなのだろう。

 目の前の男に助けられっぱなしでは駄目だと、そう決意したからこそルータスへと語りかけたのだから。


 しかし、それとは別にフランは彼に用があった。

 そして、それがこの後の修羅場の火種となるとは、この場にいる誰一人として予想できなかった。


「……それはそうと、一つ確認しなければいけないことがある。セレナお嬢様が私に何もかもを打ち明けた日、貴方が監視していたということについてだ」


「そうだが……、どうかしたのか?」


 この後に続くフランの一言が、全ての発端になってしまうのだ。




 ーーということは、セレナお嬢様の裸も見たんだな?

次回、美少女四人のおっさん争奪戦がスタートします(ゲス顔)

ようやく書きたかった展開の手前まで辿り着けました、、

続きは10/22の20時頃になります。

【再追記】

ごめんなさい、後1時間以内にはアップしますので延長させてください、、、

よって続きは21頃になります、すいません、、


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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