過去への贖罪
今回は短めですが、明日の早い時間に次話を投稿予定です!
「さて、リーフィス」
俺は振り返り、強い口調で彼女に語りかける。
「……なんですか」
あきらかにぶっきらぼうで不機嫌そうに、不貞腐れたように顔を逸らしながらリーフィスは言い捨てた。
ーーそれは上官にとる態度ではないな。
俺は右手でリーフィスの左頬に触れ、くいっと正面に向けさせた。
「何故戦況が芳しくないのにもっと早く俺を呼ばなかった」
そして真剣な表情で顔を近づけながら、詰問するように強く彼女に言い放つ。
するとリーフィスは、一瞬はっと驚いたような顔をした後、今度は俯きながらどんどん顔を赤くさせて黙り込んでしまった。
…………ん?
俺は返答を求めているのだが……
リーフィスの行動に理解が追い付かず首をかしげながら考える。
…………。
ーーーーあぁ、そういうことか。
手助けなんてお節介されたうえに、わざわざ説教までしてくるなんてと顔を赤くして怒っているのか。
確かにリーフィスは実力はあれどまだ15歳の女の子だから、そういう反発をしたいお年頃でもあるよな。
しかし、だからといってそれで手心を加えようといった気はない。
実際、リーフィスの行動は軍の統率者としては不適切極まりないものだったからだ。
「いや、なぜもっとはやく俺を呼ばなかったのかと叱ったのだが。正確に言えば俺に救援を呼び掛けたのも君の意思ではなくアレスティアの判断だったな。君はアレスティアを城から逃がしたのみで……、救援要請をアレスティアに託したわけではないのだろう? つまりはアレスティアの報告がなければ、君は延々と孤軍奮闘を続けて息絶えていたということだ。それに本来であれば、遅くとも城門を破られそうな時点で即刻救援を要請すべきだった。それなのに……、あまつさえ城内が敵兵まみれになってもなお孤軍奮闘を続けるなど愚の骨頂だ」
俺は魔王軍魔元帥として、リーフィスを叱った。
「…………ごめんなさい」
その意味を感じ取ったのか、リーフィスが伏し目がちではあるが素直に謝る。
よし、いい子だ。
ここからは……、今だけ魔元帥という立場を捨てて、
大切な娘を諭すように……、彼女の父親のように接するつもりだ。
「お前にもしものことがあったら……、俺が困るんだよ。大切なんだ……お前が……」
呼び方も”君”ではなく”お前”に変えて、より父性を感じられるように……、それでいて優しく抱きしめながら語りかける。
そうすると腕の中でリーフィスが力を抜いて……、ゆったりと身体を預けてくれるのを感じた。
俺が彼女を娘のように扱い、父親のように接するのには理由がある。
なぜなら……
リーフィスの本当の両親は既に殺されているからだ。
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