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一ミリも空気の読めない鈍感男、知らずに修羅場を迎えてしまう③

評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「いい加減にしなさい!!!」



 その声は広い円卓会議室にも十分すぎる程響き渡った。

 黒衣の仮面の男、セレナ、フランの三人は一斉に声のした入り口付近を見ると、そこには忘れ去られたマリーゼとシンシアが顔を真っ赤にしながら佇んでいた。


「貴方達! 突然すごい剣幕で怒りだしたかと思えば……ッ、そのように……、そのようによくも私達がいるのに恥ずかしげもなく……ッ!!」


「そ……、そうです! 二人してそんな羨ま……ッ、ではなくて!!」


 息を切らしながら大声を張り上げるマリーゼ。主に追従するように非難するシンシア。

 しかしそんな二人とは対照的に、セレナとフランはまだいたのかといわんばかりに溜息をついた。

 そしてセレナが仕方なさそうにゆっくりと口を開く。


「マリーゼ皇女殿下……、私の後をつけて覗き見てたんですの? 申し訳ないですわね……、いくら私が可愛らしいせいとはいえ皇女殿下を女色家にしてしまうとは……」 


「私にそのような趣味はありません! そして先程から私達はいました! 貴方達が無視していたんでしょう!?」


 セレナの見当違い甚だしい言葉にマリーゼは更に赤面しながら声を上げるがーー


「そういえばそうでしたかしら……?」


 対するセレナは本当に忘れていたようにそう呟いた。

 まぁ、その実は本当に忘れていたのだが。


「マリーゼ皇女殿下、ただ追いかけてきたわけではないのだろう?」


 これでは話が進まない、埒が明かないと考えた黒衣の仮面の男がそう言って彼女達に割って入った。

 彼は既に先程のセレナの行いなどまるでなかったかのように平然としていた。

 それがセレナの癪に障ったのだが、セレナはひとまず口をつぐみマリーゼの話を聴くことにした。


「……えぇ、そうです。そこにいるステラヴィゼル公爵家セレナ=ルイーズ=ステラヴィゼルと天啓の勇者が末裔フラン=ローゼル=レヒベルクの処置について伝えに来たのです」



xxx



 やはりそうかーー、セレナは思った。

 全ての黒幕はレーベラだとはいえ、私はいままであれだけのことをしたのだ。私に罰が下らないはずがない。それにあの日ーー、私が鬼と成り果てると決めた日から、いつかこうなることも覚悟していたではないか。何も驚くことではないし、狼狽える必要もないと、彼女は自分自身に言い聴かせながらマリーゼへと口を開く。


「覚悟していましてよ、マリーゼ皇女殿下。私は確かにお父様とお母様をこの手に掛けた尊属殺人犯。さらに言えば皇女殿下が差し向けた兵を蹴散らし、貴女を死に至らしめる寸前まで追いやった。それだけじゃない、そこにいる皇女護衛騎士団長様にも散々たる無礼を働きましたわね。とてもではないですが爵位剥奪の上、極刑は免れられませんわね」


 目を瞑りながら何もかも諦めた(てい)でセレナはそう言い終えた。


 --が。


 しかし、彼女が一呼吸置いた後のことだった。

 突然彼女は目を見開き、真剣な表情をしながら熱心に説き伏せるようにマリーゼへと言葉を続ける。


「ですがここにいるフラン=ローゼル=レヒベルクは違う。彼女は私に弱みを握られ、脅されて仕方なく私に従っていたまで。しかも実際にお父様とお母様の殺人にまでは手をかけていない。幇助犯ではありますがそれも私に脅されてのこと。さらに言えば天啓の勇者が末裔を処罰することになればヴェルビルイス帝国内の混乱は免れない。もしかすると貴女方皇族の求心力も地に落ちるやもしれませんわね。ステラヴィゼル家に利用され尽くしただけの見目麗しい憐れなフラン=ローゼル=レヒベルクを犯罪者と認定した、不届き極まりない唾すべき暴君一族であると」


 セレナは頭を精一杯に回転させながら、そのように雄弁をふるってゆく。

 私はどうなってもいい。しかし目の前のフランは私に利用されていただけだ、何一つ罪はない。最期にせめてフランを護って逝くこと、それが罪深い今の私に出来る唯一の罪滅ぼしだと言わんばかりに彼女は必死の形相でマリーゼを説得するーー、が。


「いやそうではありませんマリーゼ皇女殿下。私は私自らの意思でセレナお嬢様に従っています。きっかけはセレナお嬢様の言う通りだったのかもしれません。しかし私はセレナお嬢様の悲惨な処遇を聴いて、私自身が手を貸したいと心から思ったからこそ御両親の殺害にも協力しました。彼らは当時セレナお嬢様を犬畜生のように扱い、身体中痣だらけになるまで暴行し尽くしておりました。そんな状態のセレナお嬢様を何もせず放っておくなど、たとえ神が許しても天啓の勇者様が末裔である他でもない私が許しません。まぁ、全てはレーベラの仕業だったわけですが。それでもどうしてもセレナお嬢様を処罰なさるというのならば、私にも責任の所在はありますのでどうか私も極刑に処してください」


 セレナの気持ちなどお見通しだと言わんばかりにフランも自身の主人を庇う。そしてセレナを極刑に処するのならば私も同じようにしろと半分脅すようにマリーゼへと食って掛かる。

 

 そんなフランの涙ぐましい様子を見て、セレナは必死に泣きそうになるのを堪えた。

 そうしてなんとか涙を流すことなく、平然とした態度を装いながら言葉を続けた。


「ふっ……、私は何という罪深き女なのでしょうね。ここまできてもまだ大罪人である私を庇う程に、彼女を屈服させてしまっていたようですわ。もしかしたら知らずに洗脳の類まで施してしまっているのかもしれません。私が亡き後、帝国で腕利きのカウンセラーをつけていただくようにお願い申し上げますわ」


 なのにーー


「何を馬鹿な。私は既にセレナお嬢様の剣となり盾となると誓っています。これは誰に強制されたわけでもない、紛れもなく自らの意思です。よってセレナお嬢様がこの世からいなくなるのであれば私の存在意義はありません。仮に私だけ処罰されなかったとしても自ら命を絶ち、喜んで殉死いたしましょう」


 フランは全然、これっぽっちもセレナの思惑通りに動いてくれなかった。

 大人しく罪を私に背負わせなさい、そうしなければ貴女に対する罪滅ぼしにならないーー、そう思ったセレナは我慢がならず、フランを睨みつけながら叱りつけてゆく。


「私は卑怯にも貴女の弱みを握って、散々虐げてきたんですのよ!?」


 しかしーー


「それがどうかしましたか、セレナお嬢様? 私は私の未来を他でもない私自身の意思で決めます。たとえそれがセレナお嬢様の命令であっても譲れないものは譲りませんよ。……まぁ確かに、少しばかり恰好よすぎる死に方かもしれませんが」


 まるで当然の行いだと言わんばかりにフランは目を瞑りながら口角を上げ、すました顔で言い放った。

 その様子を見てセレナはとんでもない馬鹿女めとでもいいたげにフランを睨み付け直すが、その対象であるフランは少しも動揺する様子を見せなかった。


「くっくっく……、どうする? 一体どうするというのだマリーゼ皇女殿下? 彼女達はどうみても本気だ、セレナは大人しく処刑されるつもりでいるし、フランは塵程の未練もなく後追いでこの世を去る気だぞ?」


 そうして一部始終を見ていた黒衣の仮面の男が心底楽しそうに、煽る様にマリーゼへと語りかける。


「そっ……、それでも何の沙汰もないというのは民に示しが……」


「だからといっても情状酌量の余地は十分にある、少なくとも減刑は当然の処置だろう? それに貴女はもとから今回の件を秘密裏に処理するつもりだったのだろう?」


 男の言葉を聴いた瞬間、マリーゼは神妙な顔つきになった。

 そして覚悟を決めたように、少しの警戒心を持って男へと問いを発する。


「……私達を助けてくれた貴方がどなたかは存じ上げませんが、もしや心の中まで読めるのですか?」


「いいやそうではないさ。 ただ昔からの馴染みで、貴女の性格を考えれば自ずと答えがでたまでだ」


「………………?」


 この方は何を言っているのかと、マリーゼは心の中で思いながら顔を顰めるがーー

 このすぐ後の男の行動により全てを理解し、涙を流し続けることになる。





「まだ分からないのか? マリーゼ皇女殿下」

【追記】次回は9/11 16時30分頃投稿します。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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