黒衣の仮面の男、転生先でも無自覚に美少女達を誑し尽くす②
評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「セ、セレナお嬢様!? こっ、これは……ッ、そのッ! というか貴方も離してくれ!!」
突如背後から自身の主人であるセレナに声をかけられ、羞恥で顔を赤らめながら慌てて目の前の男から離れようとするフラン。
しかし黒衣の仮面の男はそんなフランを見てにやりと笑みを浮かべながら、彼女を逃すまいとひしと抱きしめてしまった。
フランは必死で逃れようとするが、全くもって男の拘束する腕はびくともしなかった。
次第にフランはこれ以上の抵抗は無駄であることを悟り、逃れることを諦めつつ、相変わらずなんて馬鹿力だ、こんなところで発揮しなくてもいいのにと心の中で悪態をついた。
その後フランから煙草を奪い返して、ゆっくりと揶揄うように男は口を開きだした。
「それは出来ない相談だな。これは君の今出来る精一杯の御礼なのだろう? ならば存分に享受させて貰わないと勿体ないじゃないか」
「なッ!? それは先程の……で……ッ! とにかく、もう終わりだ終わり!!」
後に続く言葉が恥ずかしかったのか、フランは途中で口ごもった後にもう終わりだと告げるがーー
「何故だ? 先程はあのように情熱的なヴェーゼを施してくれたではないか。見目麗しい女性にそこまでさせたのだ、男は返礼としてひしと抱きしめてやらないとならないのは至極当然のことだろう、なぁセレナお嬢様?」
黒衣の仮面の男はそう平然と言ってのけた後、一転してセレナへと目を向けた。
視線を向けられたセレナは目を瞑って笑い捨てた後、男と同じように、二人で決してフランを逃すまいと言わんばかりに右に倣ってフランを揶揄いだしてしまう。
「全くもってその通りですわね、我が国の紳士であれば当然の行いですわ。それに私も驚きましたわ。あの剣術一辺倒の天啓の勇者様が末裔であるフラン=ローゼル=レヒベルクが、あろうことか人前で見せつける様に、あんなに恥ずかしげもなく堂々と口付けに熱中しているだなんて。それも背後から近づく主人である私を気に掛けるどころか、気付くことすらなかっただなんて」
「ちょ……ッ!?!? まさかずっと見ていたのですかッ!? それに私は熱中など……ッ!!!」
フランは拘束されているため、顔だけセレナの方を向きながら必死に抗議するがーー
「そうかい? そうか、ならば御礼であるから嫌々俺の唇に自身のそれを合わせてくれたのか。あんなにロマンチックな接吻を施してくれて、その後俺の胸を借りてくれたのも全て演技だったということか。それに見た感じ……、初めての接吻だったように見えたが、それもこんな憐れな勘違い男である俺のために演出してくれたということだな?」
今度は前面の黒衣の仮面の男が、わざとらしく落ち込みながら悲しげに言葉を投げかける。
その様子を見て、フランはこれ以上ない程に困り顔をしながら動揺してしまっていた。
普段の冷静な彼女であれば、このようなわざとらしい演技に動じることはなかった。
しかし、目の前の男に強く抱きしめられ続けていること、後ろで意地悪な自身の主人が散々に揶揄い尽くしてくること、そしてなによりも自身の胸の高鳴りが邪魔をして、彼女の正常な思考が妨げられていた。
早く否定しないと、そんなつもりで貴方に口付けしたわけではないと、彼に伝えなければーー
もはや幾許かの余裕もない彼女は焦るばかりで、とにかく自身の想いを口に出してゆく。
「い……ッ、違う、違うぞ! 嫌々などでは断じてない! それに私はこれが本当に初めてで……ッ!!」
そんな彼女を待っていたのは、後門に立ち塞がる主人からの更なる揶揄いだった。
「それはそうでしょうとも。あの伝説の天啓の勇者様が末裔、フラン=ローゼル=レヒベルク様が顔も知らぬ男に初めての口付けを自分から施し、なおかつ嬉し涙を流しながら男の胸に頭を預けて余韻に浸るなど、そのような可愛らしい乙女のような行いなど断じてなさるはずがありませんわ」
そう言ってこれ以上ない程、心底楽しそうにセレナはフランを持ち上げて揶揄い続けた。
最高の悪戯を思いつくことに成功した子供のように、悪い笑顔をにやにやと浮かべながらセレナはフランに視線を送り続けた。
「ッッ!?!?!? う……ッ、あ……ッ、そ、その……」
「成程成程、実に納得がいった、感謝するぞセレナお嬢様。危うく勘違い甚だしい思考に陥り、柄にもなく嬉しさで舞い上がってしまうところだった」
晴れ晴れとした笑みを仮面の下に浮かべながらそう語る黒衣の仮面の男。
「えぇ、どういたしまして。ちなみに今も恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせて俯いていらっしゃるのも当然演技でなされているんですのよ? 勘違いなさらぬよう。決して……、決してですわよ? 私が先程言ったことが全て、何一つ、塵程も違わぬ事実であるからして、このように羞恥で消え入りそうになっていらっしゃるのではありませんわ」
それに対して更に楽しそうにフランを揶揄い続けるセレナ。
「やはりそうか、流石天啓の勇者が末裔だな。これほど見事な演技ならばどんな名女優も霞んで見えてしまうぞ」
こうなればもう無法地帯といっても差し支えないだろう。
前門の黒衣の仮面の男、後門のセレナ=ルイーズ=ステラヴィゼルに挟まれて、可哀想でどこまでも憐れな子羊であるフランは揶揄い尽くされ、ひたすらに餌食になってゆくーー、が。
やがてそんな彼女も羞恥の限界を迎え、つい口走ってしまった。
ーーセ、セレナお嬢様だってしていたではありませんか! それも二回も!!
ぜったいに許さんぞ鬼畜生ども!!!(宇宙帝王並感)
次回投稿は9/3、17時頃になります。
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