黒衣の仮面の男、転生先でも無自覚に美少女達を誑し尽くす①
評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
ーーそうしてすべてが終わった後の事。
シンシアは城内の人員に救援を呼びかけ、いまだ気を失っているセレナ、マリーゼ、周囲で気を失っている兵達を医務室まで運び、自身も付き添いで円卓会議室を後にした。
一段落したので、黒衣の仮面の男もその場を後にしようとしたがーー
「貴方には話がある、ここに残ってくれ」
そうフランに呼び掛けられた彼は彼女を見つめて、仮面の下に笑みを浮かべながら承諾した。
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「あらためてセレナお嬢様に代わって礼を言う。セレナお嬢様を救ってくれて本当にありがとう。感謝の気持ちといってはなんだが……、貴方の力になれることならばなんでもしよう」
感謝の気持ちを述べて深々と頭を下げたフランは、真っ直ぐに黒衣の仮面の男を見つめた後にそう宣言する。
彼女のその姿は先程まで涙していた面影もなりを潜め、普段の凛とした佇まいで少しの淀みもない。
そんな彼女の姿を見て、黒衣の仮面の男は口角を僅かに上げながら嘲るように言葉を発する。
「いいのか、フラン=ローゼル=レヒベルク? 俺は君の御先祖様である天啓の勇者ローゼルに隷属魔法をかけた諸悪の根源、君達の憎むべき魔族だぞ? それに君のご主人サマの命令で殺害対象にすらなっている」
そう男は言葉を終えるが……
「なぁに、構わんさ。セレナお嬢様も事情を説明すればわかってくださるはずだ」
フランはそんな彼の言うことが戯言だと言わんばかりに、目を閉じてそう笑い捨てた。
そして即答した後、目を開き直して更に言葉を続ける。
「あのままではセレナお嬢様も私も奴の憐れな操り人形と化していた。そんなセレナお嬢様と私の悲惨な未来を貴方は変えてくれた。それだけで十分すぎる程に私達は貴方に感謝すべきだ。それに……、貴方は先程私と脳内で会話した際、大切な者を護るため仕方なかったといった。レーベラとあのように対峙してくれた貴方の姿を見た今ならわかる。貴方は決して私利私欲のためにローゼル様に隷属魔法を施したのではない。魔族であろうがその心の内はとても優しく、大切な者を自らの危険も顧みず、何の躊躇もなく護れる存在なのだと。実際に千年前、隷属魔法を施したことによって天啓の勇者様一行の無力化と引き換えに自らの命を落としてしまったのだろう? とすると貴方は転生した……、ということになるが」
しかし、そんなフランの言葉を聴いても黒衣の仮面の男は態度を変えずに嘲り続ける。
「ご名答、俺は転生者だ。しかし随分と高評価になったものだ。もしかしたら俺はいまだレーベラと組み続け、君達を手に入れるための茶番劇を演じているのかもしれんぞ? 先程レーベラを完全に消滅させたことも、何かトリックを使い続けているのかもしれないだろう?」
だがその言葉を聴いたフランは先程より大きく笑い、何を言っているんだとばかりに口を開く。
「馬鹿な、笑える冗談だ。そんなことがあり得ないことくらい私にでもわかる。例え貴方が何と言おうが私は信じない。特に……、人命救助のためとはいえセレナお嬢様の唇を奪うことを懸念し、私に例え話をして確認を取る程に私達への気遣いを忘れなかった貴方だからこそ尚更な。……まぁ少しばかり、下心があったのではないかと疑ってしまったが。セレナお嬢様は私と違って可愛らしいからな……」
そう言い終えたフランは、下を向きながら落ち込んでしまった。
そんな彼女の様子をみた黒衣の仮面の男は溜息をつきながら煙草を取り出し、彼女へと語りかける。
「一体何を落ち込んでいるんだ? 君程美しく、尊い人間が」
取り出した煙草に火をつけ、燻らせながら彼は言葉を続ける。
「君は容姿端麗、成績優秀、その上生まれも天啓の勇者が末裔ときたものだ。国中の男共の誰もが放っておかないほどの、何もかも完璧な見目麗しい美少女ではないか。勿論外見だけではない。君は変わり果てた友人を全く見捨てることなく、彼女の剣となり盾となり、あまつさえ強大な敵である俺と戦いもした。そして彼女への強い想いだけで、千年もの長い間破られることのなかった隷属印を解呪してしまったじゃないか。そんな君が自分に自信を持てないなどと自身を卑下し続けるなんて、神が許してもこの俺が君を許さない」
「……ぷっ……、ははっ、なんだそれは……、それでは私を口説いているのか褒めているのかわかったものではないな」
フランは嬉し涙を流しながらそう笑って、男へと悪態をついた。
同時にフランは思った。目の前の馬鹿げた力を持つ魔族は私の悲痛な思いを理解してくれている。
私があの時どんな思いでセレナお嬢様の執事となり、剣となり盾となると誓ったかを知り、その上で私のセレナお嬢様への想いを認めて私を尊い人間だと、卑下することは許さないとすら言ってくれたのだと。
そしてーー
ーーそんな風に私を想ってくれているのならば良かったと。
感慨深く彼の言葉を反芻しながら、フランは一歩、二歩と彼へと歩み寄る。
彼をじっと見据えながら目の前で佇むフラン。
いまだ煙草を燻らせながら不思議そうに彼女を見る黒衣の仮面の男。
だがそれは一瞬だった。
「これが今の私に出来る精一杯のーー、心優しい貴方に対する御礼だ」
そして彼が彼女の行動に驚く前にーー
彼女は煙草を取り上げて自身の唇を、彼のそれに重ねてしまった。
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嬉しいはずなのに、初めての接吻なのに。
ーーなんだか苦いや。
彼女は何か重責から解放されたかのような、険のとれた本来の彼女らしい笑顔を浮かべながらそう思った。
そして彼から顔を離して嬉し涙をいっぱいに浮かべながら、目の前の彼を抱きしめて胸に顔を埋めた。
ーーしかし。
それが束の間の余韻であることを彼女が知るのは、そう遠くない未来だった。
「あらあらフラン? 主人を放っておいて自分は逢瀬を愉しみ尽くすとは。執事の風上にも置けない、なんという不逞の輩なのかしらね?」
この男ほんま……(怒り)
次回投稿は9/2、16時頃になります。
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