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黒幕の正体④

評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

 黒衣の仮面の男がそう声をあげた瞬間だった。



 何の予備動作もなしに、男はセレナの目の前へと瞬時に移動してしまった。

 焦るフラン。ぎりりと奥歯を噛み締め、すぐにセレナへと命令するレーベラ。

 

 そして何を思ったかーー

 即座に男は左手でセレナの右腕を掴み、右手でくいと彼女の顎を持ちあげーー



 包み込むように自身の唇を、彼女の可憐なそれへと重ねてしまった。



xxx



 誰もが目を見開いて男の奇行に驚いて動けないでいる中ーー

 隷属魔法を施していたレーベラのみ、何故か様子をおかしくしていた。

 顔中に汗を滴り落ちる程にびっしょりと浮かべ、目を見開いて狼狽し始める。

 そしてついに彼は耐え切れずーー



「が、がああああああああああああああッ!? 貴、貴様ァ、一体……、一体何をしたああああああああッッ!?!?!?」



 広い円卓会議室にも響き渡る程の奇声を発しながら、頭を抱えてのたうち回るレーベラ。

 

 その顔には、先程までいやらしく嗤い続けていた余裕の表情など見る影もない。

 一転して、耐え難い地獄の苦痛に苛まれて死に絶える寸前、といった表情を浮かべていた。

 さらに彼の片眼鏡の下の瞳は、隷属魔法による紫光を先程より著しく弱めてしまっていた。

 

 レーベラのそんな様子を見て、黒衣の仮面の男はゆっくりとセレナの唇から顔を離して彼を見遣り口を開く。


「なんだお前は、自身の魔法の特性すら知らずに使用していたのか。どこまでも憐れな男だ。確かに隷属魔法は自身の魔力を相手の体内に送り込むことによりその圧倒的魔力量で相手を内部から操ることを可能とし、非常に強力な効力を有する。ーーしかしその反面、大きな欠点があるのも知っているだろう?」


 そう憐れむように黒衣の仮面の男は言い捨てた。


「……はッ!? まっ、まさか!?!?!?」


 そして何かに気付いたレーベラの顔は、これ以上ない程の悲壮感に支配されていた。

 その様子を見た黒衣の仮面の男はにやりと口を歪めて言葉を続けた。


「ご明察、そのまさかだよ。隷属魔法は送り込んだ魔力を跳ね除ける力が相手にある場合、敵意を持った魔力は術者に逆流して死に至らしめてしまう。だから俺は今彼女の口腔から体内に直接、膨大な魔力を注いでやった。それこそ魔力を汚染させきってからしか隷属魔法を施せなかったお前程度ではどうしようもない程の、とてもではないが耐え切れない量の膨大な魔力をな。さしずめ今のお前は破裂寸前のゴム風船……、あと一息といったところだ」


「うッ……ぁッ……、そ、そんなッ!? 一魔族の、貴様如きのォ……ッ、どこにこんな莫大な魔力がァッ!?!?」


 レーベラは狂ったように叫び倒すがーー


「残念だったな。俺は魔力総量だけで言えばハーヴェンブルク不滅の魔王、レヴィア=フランツィスカ=シュレースヴィッヒをも凌ぐ」


 黒衣の仮面の男はそんなレーベラにさして反応せず、さらりとそう言い捨てた。


「ばっ、ばばば、馬鹿なッ!?!? そんなッ……、そんな奴が……ッ! そんな奴がッ、こんなところにいるわけがッ、ああああああああああ!!!!!」


 そうレーベラはあまりに聴き苦しい悲鳴を上げ続けながら、更に激しくのたうち回ってゆくがーー


「さてな、何故かいるんだから仕方ないさ。……さぁ、そんなことよりもどうする? 優しい俺はお前に選ばせてやろう。諦めて彼女に施された隷属印を解くか、それともこのまま逆流する魔力に耐え切れず、内部から破裂して血肉の一片すら残さず消え失せるか」


 レーベラの様子とは対照的に、黒衣の仮面の男は淡々と、それでいて嗜虐的な笑みを仮面の下に浮かべながら問いを発した。


 そんな黒衣の仮面の男の様子を見て、レーベラは思ってしまった。

 

 恐ろしい……、なんと恐ろしい笑みを浮かべる男なのだ。

 この男に逆らえばどうなるかわかったものではない。

 もはや目の前の奴隷などどうでもいい、知ったことか。

 そして隷属魔法を解呪することなど自分には出来ないが、一旦男の言う通りに従う振りでもしたほうが賢明だーー


 そう考えたレーベラは必死の形相で懇願する。


「と、解くッ! 勿論解くともッッ!! だからこれ以上……ッ! これ以上魔力を注ぐのはやめてくれッッッ!!!」


 だがーー

 レーベラに待っていたのは無慈悲な一言だった。




「駄目だな」




xxx




「ぐッ、ぐあああああああああああああああああああああ!!!!!」


 そう黒衣の仮面の男が冷酷に返答して、再び目の前の可憐な少女へと接吻した瞬間ーー

 

 レーベラは見るも無残に内部から爆発四散し、後には肉片の一片すら残さずに消え去ってしまった。

 唯一彼が先程までそこに存在したという証は、その場を濡らす彼自身の夥しい量の血液と衣類のみ。

 もはや完全に化け物と化していた彼など、まるで最初から存在すらしていなかったかのように場が静寂に包まれてしまった。


 そして誰もが目の前で起こった信じられない出来事にかたまっている中、静寂を破ったのは黒衣の仮面の男だった。

 彼はその場にもういないレーベラに向かってゆっくりと口を開いた。


「出来もしない約束をするお前の真似をしてやったが、される側の気持ちは少しでも理解したか? お前は数えきれないほどの重罪を犯した。そんなお前を俺が生かしておけるはずがないだろう? それにお前を生かしておく必要もなく……、お前程度の隷属魔法では術者が死ねばこの通りだ」


 黒衣の仮面の男がセレナに目を向けると、セレナの胸の隷属印は綺麗さっぱり、さらさらと消え失せた。

 そして隷属印が消え失せると同時に、セレナは眠る様に目を閉じた。

 そんな彼女を黒衣の仮面の男は抱き抱え、いまだ信じられない、奇跡だと言わんばかりの表情を浮かべたフランへと歩み寄り、優しく引き渡して言葉を続ける。


「大丈夫、気を失っているだけだ。じきに元の彼女へと戻るだろう。あの心優しく、気高く、友達思いで美しいセレナ=ルイーズ=ステラヴィゼルにな。彼女の醜悪な鬼は隷属印とともに、もうこの世から完全に消え去ったのだから」


「あ……、ありがとう……、本当にありがとう……ッ! セレナお嬢様……ッ、良かった……、良かった、本当に……ッ」


 先程までは確かに親の仇が如く、目の前の男を敵対視していたフランだった。

 しかし今は過去の出来事などまるでなかったかのように、涙をその美しい顔一杯に流しながら無事にセレナが帰ってきたことをただただ喜び、ひたすらに目の前の男に感謝し続けていた。

 そのセレナを抱きしめる腕は強く、どこまでも強く、もう絶対に何があっても手放したりはしないと言わんばかりにーー

 フランはいつまでも涙を流しながらセレナを抱きしめ続けた。


「いつみても女の涙は慣れそうもないな」


 そんな彼女達を見遣り黒衣の仮面の男は、哀し気な表情を浮かべて背を向け、懐から取り出した煙草を燻らせながらそうそっと呟いた。

誰だよこのイケメンはよォ!(発狂)

次回投稿は9/1、17時頃になります(【追記】プリコネってゲームが悪い、すまぬ!)。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!!

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