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黒幕の正体③

評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

ヴェルビルイス城 円卓会議室



 マリーゼが息絶えると思われたまさにその瞬間だった。

 

 どこからか男の声がしたと思いきや、突如マリーゼの周辺に黒い霧が立ち込めた。

 やがて霧は黒衣の仮面を身に着けた男へと姿を変えて、その男はすぐさまセレナの右手を振り解いてマリーゼを解放した。

 そして男は同時に現れた護衛騎士団長のシンシアに気絶したマリーゼを託し、同じように現れたフランとともにレーベラへと対峙する。


 そんな超常現象を見たレーベラだったが、さして驚きもせずにゆっくりと口を開いた。


「おや、招かざる客人がお見えのようですな。地に伏しながら靴を舐め上げる変態趣味の護衛騎士団長様、主人の御両親を手にかける人の道を外した極悪非道の執事様、そして……、私が使役していたヘルハウンドの群れを殲滅した仮面の男ですか。貴方は魔族ですな。転移魔法を使えるということはそこそこ高位の魔族ではありそうですが……、相手との力量差もわからず口だけは達者でいらっしゃるようだ」


「……一部始終余すことなく見させてもらったぞレーベラ、いや人の皮を被った化け物め。仮面男よ、一時休戦だ。セレナお嬢様を助けてから貴様とはゆっくり決着をつけてやる」


 そうフランは言い捨てて、いまだ片眼鏡の瞳に紫色の強光を宿したレーベラに対して戦闘態勢をとる。


「おお、怖い怖い。そんな恐ろしい形相で睨まれては困りますな、天啓の勇者が末裔、かつ殺人幇助犯のフラン=ローゼル=レヒベルク様?」


「……減らず口をッ! 全てお前の仕業ではないか!!」


 レーベラがフランを煽ると、フランは怒り心頭に発してレーベラへと咆えるが……


「何と言われようがブリードとカルラ殺害の実行犯はここにいるセレナお嬢様、そして天啓の勇者が末裔であるフラン=ローゼル=レヒベルク、貴女であることには変わりはありませんよ。もっとも貴女の主人は……、もはや私の命令に絶対服従の、可愛らしい忠実な奴隷と化してしまってはいますがね」


 平常心でいられないフランを手玉に取る様に、嘲笑うかのようにレーベラはフランを煽ってゆく。

 そのどこまでも人を舐め腐っている態度で平然と、淡々と話すレーベラに我慢がならず、フランは先程解放した魔力で身体を強化してレーベラへと斬りかかる、がーー。



 突如セレナがフランの前に立ち塞がり、両手を左右に広げてレーベラを護ってしまった。

 


xxx



 躊躇して足を止めるフラン、愉快そうに嗤い続けるレーベラ、無表情で立ち塞がるセレナ。

 そしてセレナのその胸には強く発光した隷属印がいまだ施されている。

 そう、今やセレナはレーベラの操り人形であり、命を投げ捨ててでもレーベラを護ろうとすることはこの場にいる誰でも容易に理解できた。


「セ……、セレナお嬢様……」


 当然フランも例に漏れることなく、彼女は操られて変わり果てた主人を見て、ただただ呆然と立ち尽くすことしかできなくなっていた。


「くくく……、以前から天啓の勇者が末裔である貴女が魔力を使用しないのはおかしいと思っていましたが……、実はここまでの魔力を隠し持っていらしたとは。何故そうも頑なに魔力を隠していらしたのかはわかりません。しかし貴女がどれだけの実力を有していようが、貴女の主人であるセレナお嬢様は既に私の手に堕ちています。この意味が……、よもやお分かりでないとは言いますまい」


 そうレーベラが言い終えると、セレナは自らの首にナイフの様に右手を突き付けてしまった。

 その右手には身体強化魔法が施されており、そのまま首へと突き刺せば容易く絶命してしまう状態だった。


「や、やめろッ! わかった! それだけは……、それだけはやめてくれ!! 私がセレナお嬢様の代わりになる! お前の奴隷と喜んで成り果てるッ! だから……、だからセレナお嬢様だけは解放してくれ!!」


 そんなセレナの状況を見て、泣き叫びながらフランはレーベラに懇願した。


「これはこれは……、泣かせますなフラン様。身を挺して主人を護るその心意気、ステラヴィゼル家執事として何一つ恥じない秀逸ぶりでございますぞ。そうですな……、では貴女様にも隷属印を施させていただければセレナお嬢様は解放いたしましょう。なぁに簡単なことでございます。少しの間魔力を抜いて大人しくしていただければ済みますから。そうすれば必ずセレナお嬢様を解放すると約束いたしましょう」


 そう言い終えたレーベラはにやりと笑みを浮かべた。


「フラン様! そんな筈がありません!! こんな奴の言うことなんか「いいんだ、それでいい」ッ……!?」


 そんな約束を奴が果たすわけがないとシンシアが声をあげるが、フランは後ろ手に彼女を制しながら言った。


「美しくも儚い友情ですなフラン様……、ではその仕込み刀を捨ててゆっくりと此方へ歩み寄ってもらいましょうか。一応忠告しておきますが、妙な真似をすれば貴女の大切なご主人様は無残な生首になってしまいますことをお忘れなきよう。そして仮に不意打ちで私を殺められたとしても、すぐに後を追うように命令してございますれば。あぁ、そうでした。勿論そこの魔族の貴方も動かないでいただきますよ」


「……わかっている。仮面男、お前も絶対に大人しくしていてくれ」


 そうしてレーベラの言った通りに、フランは仕込み刀を捨て去り、ゆっくりと歩み寄ってゆく。

 もしかしたら、万に一つの可能性でセレナお嬢様を解放してくれるかもしれない。

 そう一縷の望みにかけて、願い続けながらーー



xxx



 --だが。

 フランがほぼ、何もかも諦めかけたその瞬間だった。




『君の主人を助ける方法ならある』




 突然、彼女の脳内にそんな声が流れた。

 フランはこんな状況であるにもかかわらず冷静で、顔色を変えることはなかった。

 そしてこれは仮面男の仕業であり、念波かなにかだと推測して頭の中で返答する。


『……信じられるか。 お前は私達の宿敵の魔族ではないか』


 そうフランは言い捨てるが……


『君の御先祖様に施した隷属印は、俺の大切な者達を護るために自らの命と引き換えに施したものだ。天啓の勇者一行を無力化するために仕方なかったことなのだ。それに俺を信じられなければ、このまま君も君の主人も、揃いも揃って奴の憐れな奴隷だ。それが分からないほど愚かでもないだろうに。まったく本当にどこまでも主人思いの、泣かせる立派な執事サマだよ君は』


 黒衣の仮面の男がこのように言い返すと、それが事実ならばこのままレーベラに全てを委ねるよりは可能性があるかと、フランは耳を傾かせてしまった。


 ーーしかしその後、彼女は予想外の言葉を耳にする。


『だが一つだけ質問させてくれ』


『……?』


『例え話だ。あるところに溺れた可憐な少女がいた。その少女は意識を失っており、傍にいるのは少女が敵対視している男のみ。男が助けを呼んでいる暇もなく、このままでは少女は息絶えてしまう。さぁ、この場合男はどうすべきだ?』


『……なんだその質問は、そんな場合じゃ『いいから答えるんだ』ッ……』


『……人命に勝る事物はない、救助のため人工呼吸をすべきだろう』


『それが例え異性であり、少女が敵対視している男だとしてもかい?』


『くどい、そうだと言っている。しかしそれに何の関係が……?』


 そうフランが返答した途端、背後より黒衣の仮面の男が突如声を上げた。






 ーー承知した。しかと言質はとったぞ、立派な執事サマ、とーー

何を言ってるんだこの男は……


次回投稿は8/30、17時頃になります。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!!

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