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黒幕の正体①

評価を……評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

 ーー私が愉悦に浸っているまさにその瞬間だった。



 ----ッ!?


 突如私の胸に紫色の光を帯びた隷属印が浮かび上がり、焼けるような痛みが走って満足に身動きが取れなくなってしまう。

 自然と皇女殿下を掴んでいた右手からも力が抜け落ちて、彼女の足が地についてしまった。

 そしていつのまにか私の首絞めによって意識を失ってしまっていた皇女殿下は、眠る様にその場に倒れ込んだ。

 

 突然の出来事に何が起きたかわからず、私は対処できずに狼狽えてしまっていたがーー

 この後に背後から声をかけて現れた人物を見て、さらに驚愕してしまう。



「やっとか、いささか骨が折れましたな」


  

xxx


 私は力を振り絞って、ばっと声のする方へ振り返った。


 そうすると、かつり、かつりと革靴を鳴らし、老齢で端正な出で立ちをした男が私達に歩み寄るのを確認した。


 長身で細身のスラっとしたスタイル、手入れの行き届いた白髪。

 完璧に着こなされた燕尾服に綿手はどこまでも白く光りゆく。

 見間違えることなどない、こいつはステラヴィゼル家元執事のレーベラだ。

 そしてレーベラは、その片眼鏡をかけた整った顔には似つかわしくない狂喜の笑みを浮かべていた。


「貴方はレーベラ!? 行方不明になっていたかと思えば……、今更何をしに来たんですの!?」


 そう、彼は私達があの"ゴミ共"を始末した日に行方不明となっており、ステラヴィゼル家の総力を挙げて捜索し続けていたが未だ発見できていなかった。

 私が奴らに屈している際には何一つ諫言もしなかった上に、一転して自身の主人の危機を察知すれば躊躇なく逃げ去るのかと、なんたる情けない男かと思っていたのに。

 

 今その男は私の眼前でいやらしく笑いながら歩を進めて言い放つ。


「何を……? 決まっているではないですか」


 そうして私に顔を近づけて奴が返答した。




「セレナお嬢様を隷属させに来たのですよ」




xxx



「何を馬鹿……ッ、なァ!?!?」


 レーベラが言い放つと同時に隷属印が更に強く光を発した。

 同時に先程から続く痛みと身体の不自由さが強まり、私は言葉を発することすら出来なくなってしまう。

 

 そんな苦しむ私を見て、レーベラは愉快そうに言った。


「よくぞここまで心の中の鬼を練り上げ、体内の魔力を汚染させきって下さいました。おかげさまで私程度でもここまで強力な隷属印を貴女に施すことが出来た。元ステラヴィゼル家執事の爺として、セレナお嬢様の成長は感涙に及びますぞ」


 魔力の……汚染……?


「胸に焼けるような痛みが走っているでしょう? 身体の自由が極端に利かなくなったでしょう? 身体から力も抜け落ちて、もう言葉を発することすらままならなくなっているでしょう? そうして最後には意識を手放して自らを自らの意思で忘却の彼方へと追いやってしまいーー、主人である私に絶対服従の操り人形と化してしまうのです。貴女様の御両親、ブリードとカルラのようにね」



xxx



 なん……ですって……?

 私は半信半疑で奴の言った残酷な言葉を反芻する。

 

 とても信じられないし、とても信じたくはないがーー

 強く発光し続ける胸の隷属印と、もはや指一本すら動かすことも出来ないでいる自身の現状から、奴の言ったことが事実であるとついには認識してしまった。


 そんな絶望する私を嘲笑うかのようにレーベラが言葉を続ける。


「なかなかに傑作だったでしょう? でもご安心なさってくださいセレナお嬢様。家門の誉れしか眼中になく、娘を惨たらしく痛め続け、あまつさえ犬畜生の如く四つん這いにさせて犬喰いをさせる親など問題外、憎まれて然るべき存在でございます。ですからセレナお嬢様があの日行ったことは全くもって正しい、十二分に正気の沙汰でございました」


 一呼吸おいた後、更にレーベラは言葉を続ける。


「さてセレナお嬢様、私の筋書きで今後の貴女の役割はこうです。強い正義感と憂国心を持った超名門家のお嬢様が、ある日突然とち狂って両親に手をかけてしまった。さらに、そのことを咎めた皇女殿下に逆上して亡き者にしてしまう。そして大逆罪人へと成り果て、打ち首、晒し首の刑に処されるのです」


 な……ッ!? 一体何を言っていますの……!?


「冥土の土産に何故私がこんなことをするのか教えてあげましょう。実はもはや私は完全に人間ではないのです。私だけではない、このヴェルビルイス帝国には既に何人もの人間が取って代わられ、人の皮を被った化け物へと変貌しているのですよ。そんなこと、貴女方は夢にも思っていないでしょうがね。何故なら我々は人間が生み出す強力な……、ありとあらゆる負の感情を大好物にしている正真正銘の化け物だからです」



xxx



「セレナお嬢様が処刑される寸前に意識を解放させて差し上げましょう。処刑場で何も知らない愚かな大衆から罵声を浴びせられ、断頭台で拘束され身動き一つ取れずに、無慈悲で容赦のない刃が迫り来るのを憐れに待ち受けるのみという最高のシチュエーションでね」


 嘘……


「そして何もわからずに、ただただ泣き叫び、恐怖と絶望に苛まれながら死に逝くのです。そう、丁度私が貴女の御両親の意識を、その娘と執事に殺される瞬間に解いたようにね。あの時は極上の負の感情を馳走になりました」


 嘘……、嘘ですわ……

 そんな……そんなことがあるわけ……

 そんなこと……あっていいわけがない……

 それではお父様とお母様を殺めた私は……



 何も知らない、憐れなお父様とお母様を容赦なく手にかけた殺人鬼ではないですか……ッ!



 そうして真の親の仇を見つけたのに私が唯一出来たことは、悔し涙を目一杯に浮かべるのみだった。


「貴女はいい声で泣き叫んでくれるのでしょう、セレナ=ルイーズ=ステラヴィゼル。私は今から楽しみで仕方ありませんよ。そうしてヴェルビルイスの民を不安と恐怖で煽り、国中が混乱に陥り、我々の御馳走が無尽蔵に増えてゆくーー、あぁ堪らない、今から涎がとまりそうにありませんな」


 更にレーベラは言葉を続ける。


「さぁ、もうすぐだ。もうすぐ貴女は完全に私のモノとなる。なぁに、死の寸前までは存分に可愛がって差し上げますよ。そうですね、齢十五の処女でそのまま逝くのはあまりに不憫ですから……、女の悦びも、男の悦ばせ方も存分に教えて差し上げてから死なせてあげましょう」


 そんな……

 嫌……、嫌よ、嫌……

 それでは私もお父様とお母様のように……

 この男に玩具にされて死に絶えるんですの……?


「そうですよセレナお嬢様、貴女方は親子揃って私の玩具でございますれば」


 そんな私の心を見透かして、にたりと笑うこんな……

 

 こんな……醜悪な男に……


 何故……この私が屈しなければ……



 あぁ……




 でも……もう…………





 意識が…………






 私の……意識はもう……………………

くたばれ、外道(ド直球)

次回投稿は8/28、17時頃になります。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!!

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