恋する乙女の四天王、微塵の躊躇もなく転生を選ぶ②
ーーーーーールータス様。
私達は四者四様、この世の終わりとばかりに打ちひしがれていた。
諦観する者。故人を偲ぶ者。
殉死を画策する者。未来への決意を固める者。
その考えは様々だったけれど、皆共通して言えるのは、ルータス様が死ぬほど大好きだったということ。
もう二度とルータス様に会うことはできない。
その現実が重く……、途轍もなく重く、重くのしかかる。
--が。
「……会えるぞ?」
金髪の幼女、魔王レヴィアのこの一言がーー
打ちひしがれていた四人全員を悉く立ち直らせた。
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「ルータスに会う方法ならあるぞ」
「なっ……、レヴィア様、今なんと!?」
レヴィア様の言葉を聴くや否や、四人全員が目を皿にしてレヴィア様に詰め寄った。
そう、丁度あれだ。
ハイエナの群れが可哀想な獲物を見つけて嬉々として即座に群がる感じ。
傍から見れば秀麗な金髪幼女へと気持ち悪いくらい素早く、競うように群がる変態女の集団かもしれない。
だが気にかけている場合ではない。
「だっ……、だからルータスに会う方法じゃろ、あるにはあるぞ……」
あの天下無敵のレヴィア様ですら、今の私達にたじろぎながら言葉をつなげた。
「禁忌の術式のひとつである転生魔法じゃ。奴の魔力総量はただの天災級どころの話ではなく超規格外の天災級じゃから……、神々が許す転生先の年月は千年後くらいじゃな。もっとも、ルータスはこやつらを無力化してくれおったから脅威は去ったし……、余は当然その頃まで生き続けておるから今度は王配として奴を召し抱えるのもありじゃな、むふふむふふじゃ」
そう言い切るとレヴィア様は下心丸出しの笑みを浮かべた。
どうみても眉目秀麗な幼女がしていい顔ではなかった。
--が、こちらもそれどころではない。
「「「「ど……、どうやったら使えるんですか、その転生魔法は!!!」」」」
更に幼女へと顔を近づけながら鬼気迫る顔で、息をはぁはぁと荒げて目を見開く四人の美少女達。
私達の事情を知らなければ完全にミートゥー案件ね……。
「す、凄まじい喰いつきようじゃなお主ら……ちょっとひくぞ……。余を誰だと思っておる? 禁忌の術式を編み出したのは他でもない、この魔王レヴィアじゃぞ? 生みの親である余が転生魔法如き使えん道理はないわ」
レヴィア様は更に言葉を続ける。
「ま、奴の正確な転生時期はわかっとらんし……、会えるかどうかは確証できんがな。それでも行……、その様子だと聴くまでもないのう」
レヴィア様は説明途中で気づき自己解決する。
「お主らひくほどルータス好き好き大好きっ娘じゃしな、余にお主らを止める理由はないわな」
そういやらしく笑みを浮かべながらレヴィア様が揶揄すると、むっつり金髪少女が赤面しながら喚き散らす。
「ちょ……ッ!? 私はあの中年自己犠牲勘違い男に説教しなきゃいけないってだけ「転生魔法まで使ってか?」ッッ!? ぐッ……!?」
レヴィア様に遮られて言葉に詰まり、悔しさと羞恥が混ざった表情を見せるミンスリーナ。
貴女ね……、わかりやすすぎて女の私でも可愛いと思ってしまうわよ、これ……。
「だったらミンスリーナだけは転生魔法を使うのはやめるかぁ~?」
これ以上ない程楽しそうに笑みを浮かべながら、レヴィア様は愉悦に浸っているようだ。
「言っておくが後でやっぱりもう一回転生魔法を使ってくれ~、なんて願いは聴けんぞ~? 禁忌の術式を使うのはかなり困難を極めることじゃからの~?」
嘘をつけ。
さっき禁忌の術式は自分が開発したのだから使えない道理はないって豪語したばかりじゃない……。
とんだ性悪ね、このロリb……幼女。
「…………イ……、イクワヨ……」
やがて羞恥に耐えながら、蚊の鳴くような消え入りそうな声で言葉をつなげるミンスリーナ。
「ん~???」
「わっ……、私も行くっていってるの!!!」
なによその顔……
茹蛸もびっくりの真っ赤っ赤具合じゃない。
ラフィーネとスカーレットも呆れ返って笑っているし……
もうあれね、私の中で貴女は茹蛸のミンスリーナって通り名に改名しておくわ。
「それがモノを頼む態度かの~? ちゃ~んと素直に”なんで行きたい”かも言わんと連れてってやらんぞ~? 憤雷のミンスリーナちゅわ~ん???」
「……ッッッ!!!!!」
なっ……、なんて性悪なのかしら……
敵に回したら恐ろしすぎるわレヴィア様……。
ミンスリーナは俯いて沈黙していたが、やがて羞恥に耐えて泣きそうになりながらも、なんとか吹っ切る様に言い放つ。
「わっ……わっ…………、私はルータス様と一生添い遂げた「さぁて、お主ら準備はいいかの?」いかr……ッッッ!?!?!?」
「ハッハッハ、歴戦の戦士も名を聴くだけで震え上がるという憤雷のミンスリーナもその実は乙女で健気でかぁ~わいいもんじゃの~???」
お腹を押さえて高笑いするレヴィア様。
なんて自由奔放な方なの……
「こっ……、こっ……、殺してやるこのロリババアッ! あんたを殺して私も死「さてゆくぞ、準備はいいか?」n……ッッ!!」
本当にいいようにおもちゃにされてるわね貴女……
ちょっと同情するわ、ちょっとだけど。
「ま、後の世のことは任せい、上手くやっておく」
そう最後に言い残すと、レヴィア様は私達に右手を向けて詠唱を施し始める。
やがて朱色を帯びた眩い光の玉が私達の周りを囲んでゆく。
さて、私達も覚悟を決めた。
大丈夫、使い古された言葉だけど愛の力は無敵なのよ。
必ずルータス様と同じ時代に転生できるわ。
もしできなかったら……、そうね。
たとえ神に抗うことになったとしても、消滅する寸前まで完膚無きにまで叩きのめしてありとあらゆる拷問を尽くしてでも、無理やりルータス様と同じ時代に転生させるよう仕向けてやる。
そんな決意と神への殺意を胸に誓っているとーー
ついには、身体が消えゆく感覚が私を襲いーー
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「……さて、後始末をせんとな。」
ルータスが無力化した勇者達を見ながらレヴィアは静かに呟いた。
「エッセンフェルトでの罪滅ぼしもこれで少しは出来たのなら良いが。いずれにせよ余が生き永らえた意味も少しはあったと思えば気が楽じゃな」
レヴィアは儚げにそう言い残して城を後にした。
しかしレヴィアはまだ知らない。
彼の男が転生後も多くの命を護り、大英雄となることを。
相も変わらず男はあちこちへ無自覚にたらし尽くすことを。
そしてーー
千年の時を越えて諦め果てる己を男が助けてくれることもーー
次回よりついに転生!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
数日以内に次回の投稿をいたします。
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