勇者軍の来襲
【9/4追記】最初の入りの部分を改稿しました!
「ルータス様…………」
「このバカ……ッ、ほんとバカ……ッ、酷いよルータス様ぁ……ッ!」
「お姉さんを置いて逝くなんて……、到底許されないのに……!」
「ボクはまだ何も……、ルータス様にしてあげられてないのに……ッ!」
四者四様、タイプの違う超絶美少女である魔王軍四天王一同はずびずびと顔を濡らしながら、目の前に抱き抱える中年男が今まさに死に逝くのを嘆き続けていた。
誰もが目を見張る見目麗しい四人ともに、齢は15歳。
暴氷のリーフィスは長い黒髪、スレンダーな体型と凛とした顔立ちを持つ黒髪貧乳クール系美少女。
憤雷のミンスリーナは見惚れるような金髪と透き通るような白い肌を持つ金髪ツンデレ系美少女。
極焔のラフィーネはセミロングの黒髪に年齢に似つかわしくないナイスバディの黒髪知的系美少女。
業風のスカーレットはショートボブの銀髪にボーイッシュな美しい顔立ちの銀髪ボクっ娘系美少女。
そんな誰もが指をくわえて羨むことしか出来ない、途轍もない程の高嶺の花である超絶美少女の彼女らを、それも四人も侍らせながら今逝かんとする男、その名は魔元帥ルータスーー。
しかしそんな彼に下心や邪な気持ちなどはただの一片たりともなく、娘の様に幼い頃から育ててきた彼女達を、どこまでも優しい笑顔を浮かべながらただただ見つめるのみだった。
何故なら彼は本当に満足していたからだ。
大切な者達を過去最大級の脅威から護り抜けたことに。
その脅威は未来永劫に渡り、鳴りを潜めてくれることに。
一歩離れて佇む、生涯忠誠を尽くすと誓った魔王様に看取られながら逝けることに。
そしてーー、娘の様に感じていた四人の顔を最期に拝めたことに。
ーーしかし、しかしである。
そんな聖人君子のようなルータスとは打って変わって、彼を取り囲む四人の超絶美少女達は彼に対する煩悩に塗れ、彼に対する下心も邪な気持ちも満載で、いわゆるどうしようもない程の俗物であった。
それもそのはずだ。
ルータスは彼女らを娘として大切に想ってきたが、彼女らは違ったからだ。
彼女らは一回り以上年の離れたルータスに対して可憐な乙女に似つかわしくないいかがわしい想像を常日頃働かせ、酷い時は情欲の対象とすらしてしまっていたからである。
これはそんなルータスと彼女らを含めた超絶美少女達の紆余曲折転生物語。
時は数刻前に遡るーー
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大魔界 ハーヴェンブルク領内
「魔元帥ルータス様、リーフィス軍副官アレスティアが申し上げます! リーフィス軍、勇者軍に苦戦しております!城門は破られ城内に敵兵多数……、リーフィス様は私を逃がされわずかの兵と共に城内で奮戦中……ッ! ルータス様……、とても長くはもちません! 早急に……、早急に援軍をお送りください!!」
息を切らして悲痛と悔しさで涙を流しながらアレスティアは報告する。
置き去りにしてしまった主君に対する申し訳なさでいっぱいなのだろう。
リーフィスの性格からして自分が逃げるために副官を犠牲にすることなんて考えられない。彼女は一見するとクールビューティーに見えるが、その内面は四天王一の部下思いだからな。長年副官を務めているアレスティアもそれが分かっているからこそ余計に悔しいのだろう。
「……了解した。此度の侵略者は神より天啓を得た真の勇者と聴いている。暴氷のリーフィスといえども少し荷が重いとは思っていた」
元より開戦前の諜報活動で勇者側の情報は入手していた。
神より天啓を受け、聖剣バルムンクに認められし勇者ローゼル。
女神より祝福を受けた強靭な身体に神の一撃をも物ともしないといわれる神盾アイグィスの使い手戦士レオル。
幼少期から千の魔法をマスターしており、炎、水、風、土、光の五大精霊を自在に召喚可能な精霊魔法師ラディアナ。
若干17歳にしてシャトランゼル教会最上級聖職者である大司教に抜擢され、あらゆる神聖魔法を使いこなす大司教ロザリア。
どいつもこいつも規格外であり、ハーヴェンブルクにとって天災級の事態になることは容易に想像できた。
「………………………………」
千の聖騎兵にも決して引けを取らないアレスティアの満身創痍な姿を再度確認する。事前情報以上に勇者軍がいかに強大であるか、そして彼女がどれだけ凄惨な光景を見せつけられたかがそこから窺い知れる。
これは……、覚悟を決めなければならないか。
「早急に……、後詰の四天王軍にご加勢いただくよう伝令をお飛ばしください!」
言葉を発しない俺にしびれを切らしたのかアレスティアが催促する。
俺は彼女を宥める様に、諭すようにゆっくりと言葉を紡いでゆく。
「それは出来ない、奴らの力は想像以上に絶大だ。実際に戦った君もそれは痛いほどに感じているだろう? 未来の魔王軍を担う人材をこんなところで失うわけにはいかないんだよ」
一呼吸置いてさらに言葉を続けた。
「俺が城に転移する」
意を決して決意を露わにした。
アレスティアは信じられないものを見たように目を丸くして顔を上げる。
「むっ……、無茶苦茶をおっしゃらないでください! 魔元帥ルータス様といえどもお一人でどうにかできる相手では「暴氷のリーフィス軍副官アレスティア!」ッ……!!」
彼女の抗議を遮り、一喝する。
「偉大なる魔王軍、魔元帥ルータスが君に命じる最後の命令だ。他の四天王軍には動かぬように伝えよ」
普段よりも軍人口調で……、それでいてしっかりと発言する。
――あとは頼んだぞ。
それだけ言い残し、俺は転移魔法の詠唱をし始めた。
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