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英雄姉を好む  作者: 七歌
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一章『姉と、日常。』その5

「……なぁ、来夢、ちょっと相談があるんだけど」



 昼休み。

 授業中にも散々考えていたことを相談しようと、いやし謹製の弁当をカバンから取り出しながら冬夏が言うと、来夢が不思議そうに首をかしげた。



「珍しいわね、あんたが相談なんて」


「そうか? わりと相談してるだろ」


「ちょっと付足す。『どうでもよくなさそうな』相談を持ちかけるのは珍しいわねって話」



 来夢は顔を見て相談の内容を読み取ったらしい。

 そのことに冬夏はちょっと驚いた。



「よくどうでもよくない相談事だってわかったな」


「あのさぁ、あたしこれでもあんたと十年付き合いあるんだよ? 毎日顔見てればそれくらいわか――」



 と。

 言葉の途中で、ぴた、っと一時停止ボタンを押されたかのように来夢の動きが止まった。

 その頬に朱がさしたかと思うと、来夢は何とも言えない表情で顔を横に向ける。



「……毎日みてるんだから、わかるわよ」



 ややこもった口調。それに、今度は冬夏が疑問符を浮かべる番だった。



「なんで一回区切ったし、今」


「べ、別にぃ。なんか変な意味にとられそうだなぁって思っただけ!」


「変な意味にとれる要素、あったか?」


「あたしはそう思ったの! あったの!」


「はぁ……?」


 さっぱりわからなかったが、来夢があると言うのならあるんだろう。

 無益な争いになりそうなので、それ以上考えるのを止めて冬夏は話を戻した。



「で、相談なんだけど」


「待った。とりあえずいやしさんたちと合流しよ。待ってるだろうし」


「合流したら兄貴も居るだろ?」


「ふぅん。春秋さんに関することなんだ、相談って。ますます珍しい」



 その通りなのだが、他人に言い当てられるとどうもむかっと来てしまう。

 春秋の話は、本当に冬夏にとって鬼門のようだ。


 それでも。

 一応やろうと決めたことなので、一つ深呼吸してから冬夏は言う。



「……そうだよ。兄貴のこと。……仲直り(仮)しようと思ったんだ」


「かっこかり、ってなによ」


「特別仲良くするつもりはないけど、いやし姉ちゃんが喧嘩の事で怒ったりすることがない程度には表面上仲良くしてみよう、って意味で(仮)なんだ」


「相変わらずいやしさん基準ねー……ま、いいけど。

確かにそれは春秋さんが居ると相談しにくいか。じゃ、放課後はどう?

いやしさんの事は春秋さんに任せて、ちょっと相談しよ」


「それがいい、かな?」



 春秋だけに護衛を任せる、ということには特に何も異論はない。

 今までちゃんとやってきた実績がある。

 それに、春秋は単純な戦闘力だけで言えば、下手したら冬夏と来夢が二人で守っているより安全なのだ。



「どっか適当に店でも行くか。喫茶店……いや、購買部でいっか」


「せっかくだし喫茶店行こうよ。せっかくだし。冬夏のおごりで」



 来夢はにんまりと企む様な笑みを浮かべる。なぜかちょっと頬も赤くなっていた。



「なんで二回せっかくだしって言ったんだよ。なにが『せっかく』なんだ」


「『せっかく冬夏にたかれそうなんだし』?」


「……わかったよ。相談するのはこっちなんだし、おごる」


「やった! じゃ、放課後ね。とりあえず、いやしさんの所行こ」



 足取り軽く、弁当箱を持って来夢が先に行く。

 それを追いかけるように、冬夏も教室を出た。


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