三章『姉と、デート。』その8
「……なにやってんだよ、来夢」
発見した来夢の元へ、冬夏はいやしと共に近づいた。
組んでいた腕は、流石に知り合いに見られていると気恥ずかしいのもあってかいやしの方から離していた。残念。
声をかけられ数秒うろたえていた様子の来夢は、どうにか平静を保ちましたという表情になると、ぎこちない笑顔を浮かべる。
「き、キグウダネー? チョットアソビニキテテ、つい、ミカケテサァー? いいふんいきだったから、コエかけにくかったッテいうかー、ねー?」
「ロボットみたいになってるぞ。
……まぁ、別にいいけど。視線感じたのは今さっきだし、ホントにたまたまだろうって信じるよ」
「そ、そう? 信じてもらえたならよかった」
ほっと胸をなでおろすいやし。
安心が顔に出過ぎていて逆に怪しかったが、信じると決めたのでそれ以上の追及はしなかった。
別に見られて困ることはせいぜい試着室の中ぐらいでしかしていない。
「来夢ちゃん、今からどこか行くの?」
「え、っと、はい。そうです。
一日割と暇してたので、ちょっとくらい遊ばないと休日を無駄にしてる気がしちゃって。
……よかったら一緒に遊びに行きます? どこか」
「ううん、誘ってくれるのは嬉しいけど、荷物もあるし――」
「気にしなくていいよ? いやし姉ちゃん。荷物ならおれが持って帰るし」
「でも、一人で帰らせるのも……」
冬夏と来夢の間で視線をさまよわせながら、いやしはどうしようかと眉をハの字にしている。
せっかく来夢と会ったしこのまま別れるのもどうかと思うが、デートに来たのに途中で解散するのも冬夏に悪い、と思っているのだろう。おそらくは。
だが、そんな風に想ってくれているだけで冬夏にとっては十分だった。
なにより今日一日十分満喫できたし。これ以上独占しているとバチがあたりそうな気すらしている。
「ホント、気にしなくていいよ。先に帰って買い物とかしておくから」
時刻は三時半過ぎ。どちらかといえば四時に近いか。
今から帰って荷物を置いて、夕飯の買い物と準備をしていれば時間はすぐに経つだろう。
「そう……? じゃあ、荷物お願いしてもいい? 夕飯までには帰るから」
「うん、わかった。来夢は、今日の夕飯どうする? 一緒に食べるなら作っとくけど」
「じゃあ、あたしの分もよろしく。おいしい夕飯期待してるわね?」
「姉ちゃんの作った料理の五十パーセントくらいの出来栄えで勘弁してくれ」
それじゃ、と荷物を抱え直し、冬夏はいやしと来夢に背を向ける。
家に帰る頃にはそろそろ春秋が帰ってきてるかな、などと考えながら。




