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ショートショート

君に、恋をしてもいいですか

作者: 柊 紫音

 週に一度。90分。君の隣に居れる大切な時間。

 

 君に出逢ったのは、講義で行われたペアワークの時間だった。人見知りで、初対面の人と話すのが苦手な私はペアワークが嫌いだ。そんな私を見抜いたのか「ごめん。俺、今日はこの子と組むわ。どうせ俺たち三人だし」って私の横に座った。

 「よろしく。大丈夫。俺、お喋りだから」

 そう言って、にこっと笑いかけてきた。これが私と君の出会い。

 君の人懐っこい笑顔と優しく語りかけるような口調は、いとも簡単に私の心の壁を壊してしまった。

 「君とのペアワークは楽しい。苦手なペアワークが楽しいって思ったの初めてかも」

 その話をしたからなのか、この授業の時、君はいつも隣に座ってくれるようになった。初めは間に一つ空席を挟んで。でもいつからか間の空席がなくなって、君との距離が近くなった。

 趣味の話とか、サークルの話とか、好きな音楽の話とか、バイトの話とか――。君との話が楽しくて、君の笑顔が素敵で、ずっと隣で笑っていたいって思うようになった。

 そう、私は君に恋をした。叶わないだろうって、君と私は不釣り合いだって、初めからそんな風に諦めて、なるべく傷つかないようにしておく。それが私の片想い。長いことそうしてたから慣れた。そう思っていたのに、週一回会えたらそれで良かったのに――。

 

 私はもっと君に近づきたいって思ってしまった。私の気持ちを伝えたいって思ってしまった。

 迷惑になってないかな。そんなことを考えながらメールを送る。返事が早いって喜んで、返事が無いって落ち込んで、今日は火曜日だって喜んで――。そんな日々が続いて、私は居ても立っても居られなくなった。

 どうしても君に、気持ちを伝えたい。例え叶わなくても、それでも君に伝えたい。とはいえ、私には「好きです、付き合ってください」なんて言う勇気なんて無い。だから私は、この言葉を選んだ。

 

 君に、恋をしてもいいですか

 君を、好きになり続けてもいいですか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] ショートショートなので読みやすいです(紫音さんの散文は基本短くまとめられているので読みやすいです、川端康成の「掌の小説」を連想させられます)。 終わり方がいいですね、余韻を残しつつ、結末を…
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