2話
人に迷惑をかけながら声のした方へ進んでいると、少し開けたところに出た。
そこには確かに声の主であるお兄ちゃんがいたんだけども、
「えー、だって彼岸花ってこの時期が一番キレイなんだよ?今の君みたいに。」
「もうっ・・・そんなこと言われても・・・確かにお兄さんはすごくカッコいいですけど・・・///」
「ちょ、ヒナさんや?デート中でしかも彼氏の真横でナンパされて何頬を染めてんの?」
──何故お兄ちゃんはナンパなんかしてるんだろう(ビキビキ)
──と言うかあれ本当にお兄ちゃん?(ビキビキ)
「なんかね~、君を見てたら護りたくなると言うか、妹への保護欲?とにかく君のこと大事にしたくなったんだよ。」
ブチッ!!
何かが切れたような音が私の中から聞こえてきた気がしたけど、まいいか。
ガシッ!
「え!?ちょ」
「オホホホホホ。すいません、私の身内がどうもご迷惑をおかけしたみたいで。大変失礼しました。」
「え?あ、はい。」
「この人にはしっかりと言い聞かせますので。それでは失礼致します。(ペコリ)」
「(゜ロ゜)(゜ロ゜)(カップル)」
「は!?急に何だよ!?あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ引っ張るなあぁぁぁぁ」
私はお兄ちゃんの襟首を鷲掴みしてその場を離れた。
──
「さてと、お兄ちゃん?」
人の多い通りを離れて、静かな公園まで来た。
ここに来るまでいっぱい変な目で見られたけど。
「っぶあっはぁ!何だよ一体!首が絞まって死ぬかと思っただろうが!俺もう死んでるのによ!」
「・・・あなた本当にお兄ちゃん?」
さっきのナンパといいこの汚い口調といい、私の知ってるお兄ちゃんとかけ離れすぎてる。
「あ?何だよ。俺に妹なんていたのか?」
ゴッ!
──あっヤバイ
ガスッ!
──今の言葉の意味を考えないといけないのに、悲しすぎて考えることができない
パァン! ズンッ!
──声をあげて泣きそうになる
シュッ!
「ぐぼぁ!・・・待て待て待て待て!!お前幽霊を何だと思ってんだ!俺らにだって生きてるやつと同じように人権はあるはずだろうが!」
「ぐすっ・・・ふぇ?」
涙混じりの変な声が出た。
「泣きながら人をボコボコにするとか何だお前!いい加減離せ!」
あ、あれ?
何で私お兄ちゃんの胸元掴んで手を振り上げてるの?
「え、こ、恐い(涙声)」
「こっちの台詞だっつの!」
「・・・今この手を離したらあなたはどこか行くの?」
「あったり前だ!さっさとお前から逃げてナンパを再開するんだよ!」
「じゃあ離さない。あなたには色々と聞かなきゃいけないことがあるし。」
少しずつ落ち着いてきた頭で今までを振り返る。
顔や声、彼岸花が好きだって言うのはどう考えてもお兄ちゃんだ。
・・・だけど、
「ねぇ、あなたの名前は?」
「あ?お前に教える名前なんてねぇ・・・やめろやめろ手を振りかぶるな!!」
「名前は?」
「さあな。こちとら名前どころか生きてたときのことなんて全く記憶に無いんだよ。」
──俺に妹なんていたのか?
さっきの言葉から予想はできたけど、やっぱりそうなんだ。
「わかった。じゃあ今からあなたを家まで連行します。私たちの家に。」
「はああああああ!?」
やっとの思いでできた大好きな兄との再会は、とてもとてもひどいものでした。