File 1-4
終は突然黙ると、受付の方に歩いていった。かと思えば、受付のお姉さんに話しかけた。受付のお姉さんは急に話しかけられて驚いていた。
「美しい受付嬢よ。その紙を拝見させてもらってもよろしいかな?」
突然の申し出に受付のお姉さんはチェッカーの方を見た。チェッカーがうなづいたのでお姉さんも安心して紙を手渡した。
「それは?」
僕が終に尋ねると、終はわからないことをバカにするでもなく丁寧に説明してくれた。どうやらこの女は人に説明をするのが大好きなようだ。
「これは、職業の受付表だよ。ここがどういう場所だか覚えているかね?」
「職業を斡旋してもらえるところ?」
「うーん。惜しい。当たっているようで違う。ここは職業、いわゆるジョブを変更するところなんだよ」
「ジョブ?」
「ああ。ジョブだ。君のいた日本ではおなじみのシステムじゃないのかね?」
終は日本のことをなぜ知っているのか知らないが、すごい知識の量だ。
「ゲームかなんかで出てくるんですよね。まぁ僕はあんまり知らないんですけど」
「ふむ。なら、説明しようか。人にはジョブというものがあり、皆それによってできることが異なったりするんだよ。例えば魔法使いなら攻撃魔法と多少の回復魔法が使えるようになる、とかね」
「はー。そうだったんですか・・・。ってことは僕がジョブを変えても意味なかったんですか!?」
「君の目的にもよるがね。本当にお金を稼ぐ手段を探していたなら、これもまた惜しいと言わざるをえない。だが、正しい道でもある」
「惜しいけど正しい?・・・どういう意味ですか?」
終の言葉はいちいち難しい。ちゃんとわかるようにいってほしいものだ。
「なんらかのジョブについたなら、町の人たちの依頼。クエストを解決することによってお金を稼ぐことができるんだよ。あの酒場にある掲示板でね」
酒場にあったのはそのクエストを受注するための掲示板だったのか。
「なるほど。ということはこれから僕はそのクエストをこなすことでお金を稼いで暮らしていかなければいけないんですね」
「・・・そうだといいね?」
僕の言葉にまたしても終はニヤリとして意味のわからないことを言った。隣でプカプカ浮いているリムも僕を哀れむような目で見ている。一体なんだというんだろう。
「?」
「・・・まぁいい。それでは、話の続きと行こうか。今回はこのジョブの変更受付表で大体事件は解決したようなものだよ。チェッカーくん!」
終はチェッカー警官を再び呼びつけると、トコトコと終のところへとやってきた。
「はい。なんですか上終さん」
「犯行に使われた凶器を出してくれないかね?」
「わかりました」
えらく素直に従うものだなと思いながらその一部始終を見守っていると、チェッカー警官は透明な袋に入れられたナイフを持ってきた。
「リム」
「はいよ。姉御」
何を言われるでもなく、リムはナイフに向かって先程と同じ魔法を使った。
「黄色です。姉御」
「ふむ。リムは一応引き続き詳細な解析を頼む」
「了解。姉御」
「それでは。えーっと。元僧侶のエクセルさん?それに現僧侶のマスラオさん?ここまで出てきてもらってもかまいませんかな?」
リムがナイフから出てきた魔法の系統を支援魔法だと言った途端、終は何かに確信を持ったようで、二人を呼び出した。彼らが容疑者なのだろうか。
「それに小野道くんも」
「僕もですか!?」
「当たり前だろう。一応君も容疑者なのだから。それも最筆頭のね」
「うぐっ」
「心配するな。念のためだよ。念のため。それに周りにも示さなくてはならんだろう?君が犯人などではないのだと」
終は僕の肩に手をポンと置いてそう言った。それは確かにその通りで、僕自身の潔白を示すのにも、それは必要なことではあった。
またリムに何かをさせるのかと思ったが、リムは必死に魔法の解析に勤しんでいる。僕と元僧侶のエクセルさん、現僧侶のマスラオさんが終の目の前に連れてこられ、今から尋問が始まろうとしているようだった。
「終わったぜ!姉御!」
リムの様子を伺いながら黙っていた終によって作られていた沈黙がリムの言葉によって破られた。どうやら魔法の詳細な解析が終わったらしい。
「ナイフの方は高度な認識阻害魔法だ。場に漂っていたのは高度な回復魔法が二種類。それ以上はワカンねぇすまねぇ。姉御」
「いや、それだけわかれば十分だ。リム」
そういうと終は笑った。その笑みは不気味で、本当に僕を助けてくれるはずの人の笑みなのか疑問を感じたぐらいだった。
「それでは答え合わせと行こう。スキル、探偵。発動」
終がそういうと、終を中心としてうすら暗い色を持ったなんらかの空間が広がっていき体を通過したのを感じた。そしてその直後、計ったかのように終が説明をしてくれた。
「このスキルは特別なものでね。この世界では僕しか確認していない。効果は簡単。私が正しい推理をして犯行を暴いたならば、相手は拘束される。もちろんその推理は事細かなものでなければならないがね。そしてもし私が間違えた推理をした時には・・・」
「・・・した時には?」
僕は思わず終の言葉に聞き返していた。
「このスキルは1週間使えなくなる。まぁ、今まで間違った推理をしたことなどほとんどないがね」
大した自信だと思ったが、ほとんどという言葉には少し引っかかった。これだけ自信満々な終でも間違ったことがあるのだろうか。
「とにかく、これから私は事件の全容を解明する。君たちはそれを黙って聞いていればいいというわけさ。ちなみに、そんなの証拠がないだろというセリフはこのスキル使用空間内でも有効だ。使いたれば使ってくれても構わない。異論はないかね?」
終の言葉に対し異論を挟むものなどいなかった。というかみんなその雰囲気に圧倒されていた。彼はその風貌に負けず劣らずの中身をしている。
「ふむ。それでは私の愚考、お披露目と行こうじゃないか」
終はその白いローブをはためかせそう決め台詞とも取れる言葉を放った。
僕の命運を握った上終終の推理が始まる。




