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異世界探偵『上終終』の愚考録  作者: ロジカル和菓子
File 1「濡れ衣の刃」
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File 1-1

 一言で見たことのない世界といっても、いったいどんな世界だろうと考えを凝らすのが人間だろう。その考えに一筋の光明を与えるならば、それは獣人という存在だ。


そこかしこに獣耳、獣尻尾を生やしたコスプレでもしているかのような人間(?)が歩いている。顔まで獣の特徴が色濃く出ている者もいれば、耳や尻尾など特徴的な箇所だけ獣になっている者もいた。


 建築はレンガ造りのものから、コンクリートのような素材のものまで様々だったが、ヨーロッパに近い雰囲気だった。もともと住んでいた日本の風景とははるかにかけ離れている。


 自称神からそれ以降の応答はないようで、あの老人の話を信じるならば僕はここで魔王とやらを倒さなければ現世に帰れないらしい。とりあえず情報を収集しようと思うが、まず言葉は通じるのだろうか。


 道で屋台のような店を出している人に話を聞いてみようと近づいてみたが、客と会話している様子を見るに、とりあえず日本語を話すわけでは無いのは確かなようだ。しかも英語でもないようで、内容が一切わからない。


 自称神曰く僕に与えられるはずだったスキルとやらはどうやらもらえなかったらしいので、とりあえず僕はここで生き延びる術を探さなければならない。外国に一人取り残されたような不安が心を覆ったが、へこたれている場合では無い。とりあえず話しかけて見ることにする。


「すみませーん」


  僕は行き交う人たちの中から優しそうなおばさんを狙って声をかけた。


「ーーーーーーー?」


 案の定何をいっているのかさっぱりわからない。


「職業を探す場所を教えて欲しいのですが」


 僕は必死に荷物を運んだり畑を耕すジェスチャーをして意思疎通を図ろうとした。しかし、うまく伝わらないようで、暫くすると立ち去っていってしまった。


 ジェスチャーを入れればすぐに伝わるだろうとたかをくくっていた僕はここで多くの時間を浪費することになった。行く人来る人に声をかけ続けたが、まず異様な言葉を話す僕に立ち止まってくれる人自体が少ない。その上立ち止まってくれたところで、話が通じない。ジェスチャーも通じない。


 こちらの世界に来てから何時間経ったのかもわからない。いや、そもそも時間系統が一緒とも限らなかったが、とりあえず長い時間が過ぎ、日が暮れかかっていた。僕はヘトヘトになりながら何度も何度もトライしたが、誰も僕の聞きたいことを理解してくれない。


 もうダメか、と諦めかけたその時、道に暮れかけた夕日にきらめいた金属製の何かが落ちていることに気がついた。


 僕はそれに近づいて拾って見ると、それはどうやらコインのようで500という文字が書いてあった。10進法は共通なのかとホッとしたとともに、これで何か食べるものを買えるのではないかと思った。すでに一日中動き回って何も食べていなかったのでお腹はペコペコだったからだ。


 しかし、そう簡単に使ってしまっても良いものかと悩みながらも僕はポケットにコインを入れ、今日最後のトライをしてみようと、優しそうな猫耳の女の子に声をかけてみた。その女の子は可愛らしい雰囲気で、銀の髪が別の世界の人間であることを強調しているかのように綺麗だった。女の子に声をかけるなんて初めての経験だったが、仕方ない。覚悟を決めて話しかけ、これまで通り必死にジェスチャーで仕事を探す場所を教えてと頼んだ。


 するとその女の子は暫く考えた後僕を上から下まで見渡すと何かに気づいたようで、同じくジェスチャーでどこか場所を伝えてくれた。長い時間の苦労が報われたと大きな達成感を感じた。


 奇跡のファインプレーじゃ無いかと思いながら僕は伝わらないとわかっていながらもその女の子に礼を言ってお辞儀をした。そして僕は教えられた場所を目指し歩き出した。


 すでに日は暮れ、夜の帳が下り始めていた。



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