File 2-2
「私は異世界探偵、という肩書きで通っていてね。その名の通り、いくつかの世界をまたいで活動をしている」
「世界をまたいで・・・!?」
「ああ。でもその方法を聞こうとしてはいけないよ。言うつもりもないが」
「・・・はい」
「うん。そして、私が異世界を渡り歩いているのには一つの理由がある。それは・・・ある男を追っているからだ」
そこで終は歩みを少し遅くした。
「ある男・・・ですか?」
「ああ。その男は名を御陵という。とある世界では数学教授、また違う世界では物理学の教授、また違う世界では魔法学の教授として活躍していたりもした」
「その男が・・・今はこの世界にいるんですね?」
「そうだ。そして私はその男を捕まえるためにここにいる。いや、もともと謎を解くのは大好きなのだがね?」
それは知ってた。キラッキラの目をして謎を解く、ないしは犯人を追い詰めるんだもの。
「そうなんですね・・・それでその御陵教授の居場所はわかっているんですか?」
「・・・わかっていたらこんなところで油を売っていたりはしないとも。・・・でも、わかっていることはある。それが魔王の七幹部と関係するんだよ。魔王の七幹部はそれぞれ、インウィディア、スペルビア、アワリティア、イラ、ルクスリア、グラ、アケディアという名を冠している。魔王に変わって各地で人間や獣人に事件を起こさせている。そしてそれぞれは感情を操る能力を持っているらしい。それ以上詳しくはわかっていないのだが・・・。なんせ奴らは情報をほとんど残してくれないものでね。会うのさえ一苦労というわけだ」
「終さんでも難しいなんて・・・」
「ああ。でも、流れは完全に僕にあるようだからね。時期に奴らの尻尾を掴んでやるさ」
そう正義のセリフを言う終の目は、完全に獲物を狙う目だった。正義の味方といった感じは、一切と言い切っていいほどしなかった。ニヤリと笑う表情はまさに外道。おそらく、終は僕のスキル、道連れによっていろんな事件に遭遇し奴らの居場所を探る気らしい。
「だといいですね・・・」
「ああ。それで、そしてもう一つ重要な情報が一つ。これはこの前僕が死にそうな思いをしてまで手に入れた情報でね。御陵教授はその魔王七幹部のうちの一人らしいんだ。だから君の目的と僕の目的はほとんど同じといっていいわけさ」
「なるほど。それは良かったです」
と会話を続けているうちに呉服店に着いたようだった。その呉服店は町の中心部にあり、とても高級な店構えをしていた。すごい高そうなんですが・・・。
「ここが、言っていた呉服屋さ」
終が言うから間違いはないんだろうけど・・・明らかに僕には似合わなそうだ。
「でもあの・・・ここって高いですよね・・・?」
「ああ、高い。だが私の助手だからにはちゃんとした服装をしてもらわなければ困る。これから高い身分の人たちと会うことも多くなるだろうからね」
終に連れられるまま僕はその呉服店の中へと入っていった。
「高っ・・・」
僕はどの服を見てもその感想しか出てこなかった。どれもうん十万Gと言う値段だった。
「こんなの買うんですか・・・!?お金は・・・・?まさかまた借金!?」
「違う違う。こっちだよこっち」
終に連れられるまま、店の奥へと連れられていった。奥の部屋に入ると高級そうなソファとテーブル、そしてその脇には燕尾服のおじさんが待ち受けていた。
「ようこそいらっしゃいました。上終様。お待ちしておりました。どうぞお座りください」
「うん。ありがとう。ほら、道連れも座って座って」
「はい・・・」
僕は言われるまま終の隣に座った。燕尾服のおじさんの言葉は丁寧で聞き取りやすかった。この世界の言葉を勉強したての僕としてはありがたい限りだ。
「それで、今回はどのような要件で・・・?」
「うん。私の新しい服と、昨日から私の助手になったこのみすぼらしい男の服を仕立てて欲しいんだ。そうだな・・・5着ずつほど頼むよ。デザインは任せるから」
「なるほど。了承致しました。時間はどのように致しましょうか」
「そうだね・・・今日の夕方ごろに取りに来るからそれまでに頼むよ」
「了承致しました。では早速取り掛からせていただきます」
「ああ。頼んだ。では私たちも邪魔をしては悪いから出て行くとしよう。さぁ行くぞ道連れ。時間は有限だ」
「あ、ちょっと待ってくださいよ!あ、失礼します」
僕は、スタスタ歩き去って行く終に一礼する燕尾服のおじさんに一礼を返して、急いで終についていった。呉服屋を出ると、終はどこか行くあてがあるのかないのか、街をぶらぶらと歩き出した。
「さっきの服って、いくらぐらいするんですか・・・?」
僕は恐る恐る隣で歩く終にそう聞いた。
「一着2百万Gぐらいかな?僕のはもう少し高いが」
「はぁ!?そんなものもらってもいいんですか!?それも五着も!?」
案外太っ腹なところもあるのかと感心してしまった。しかし。
「はぁ??君は何を言っているんだ?そんなバカなことがあると思うかね?制服支給だなんて誰が言ったかね?もちろん君の借金につけておくよ。五着だから、1千万G追加で借金は占めて5千万Gだね」
パキンと心が折れる音がした。悪徳業者やこの人は・・・。そんな心の叫びは誰の元へも届かなかった・・・。
「そ・・・んな・・・」
「なぁに。心配はいらないさ。君を奴隷のようにこき使うなんて真似はしないさ。君はただ僕と一緒に行動してくれるだけでいいんだ。それにそうしていれば君は魔王に一歩でも近づけるだろう?」
つまり、終はこう言いたいのだ。御陵教授を捕まえ、また魔王を捕まえるまで、僕は終の助手でいろと。おそらくこれからもふっかけられて借金は増えて行くばかりなのかもしれなかった。
終の髪から少し顔を出してこちらを見ていたリムは、どんまいとでも言いたげにグッと親指を立てて僕を励ました。うるせぇやい。でも・・・もしかしてリム。君も同じやり口で使い魔を続けているんだね!?
そうアイコンタクトで通じ合った二人なのであった。
終は僕を街のあちこちへ連れ回した。フレジャラビは、チンチラビとほとんど同じ外見をしていた。街並みは本当に点対称に作られているようで、見事なもんだなぁと言う感想が思わず浮かんだ。
そして僕は終と昼御飯を食べた後(もちろんおごりではない、いや、実質おごりなのかもしれないが)、王家の騎士団とやらが常駐するという双子町全体の中心にある建物に足を運んだ。終いわく、「この街の現状がわかるから」らしい。
そうして僕たちは王家の騎士団の、『城』を訪れた。




