ヒューリ視点2
少し短めです.……今更ですが初作品なので大目に、大目に見てください。
アレからイゼリアは眠り続けている。
枯渇寸前まで魔力を使ったせいだろう。ギルは明らかに憔悴してきたがそれを俺のせいとは言わなかった。
イゼリアの父親だが、ギル曰く父親はイゼリアに怯えているんだかとか。だからイゼリアの父親はイゼリアには逆らえない。
現在イゼリアは別邸に住んでいる。そして本館から父母が出られないように追加魔法を掛けたらしい。
屋敷のドアのところで父親が喚いているのが見えた。
「姉様はお優しい。義母様のように非情に命じてくださるなら僕は姉様の為なら、この手を汚す事は躊躇わないのに…僕を守る対象だと決めた姉様は僕を頼りにしてくださらない」
隈の浮かぶ顔でギルは呟く。
物心着いた時にはイゼリアは何でも出来て、ギルは守られてばかりだったという。
「そうだな…短い間だが無茶する奴なのは分かった。お前のことがさぞ可愛いのだろう?イゼリアは」
イゼリアが眠り続けて3日目の事だった。
ギルは体力が持たずイゼリアの手を握りながら眠りに落ち、俺も眠りに落ちた時だった。
握っていた手が震え左右で寝ている俺達に戸惑ったような気配が生じた。
「…ヒュー、リ……?」
掠れた声が俺の名前を呼ぶ。
ついでホッとしたようにその瞳が緩まった。
イゼリアが倒れ三日悩んだがこの人ならば、ソレを言っても俺は後悔しないだろう。
「……貴女に生涯の忠誠を……イゼリア」
向かいに居るギルを起こさないようにイゼリアの近くで囁くように言う。
これは隷属の契約
誓えば俺はイゼリアに全てを捧げ尽くす事になる。
魔力のない人間でも人生で唯一1回だけ使う事の出来る重い魔法だ。
「ヒューリ……!?貴方、」
イゼリアを中心として魔法紋が広がる。
戸惑うイゼリアを尻目に俺は契約を勧めていく。
「いい。なぁイゼリア、俺を使ってくれ。貴女になら全てを捧げられる」
この契約を結べば俺は無条件でイゼリアを守る事が出来る。そう例えば俺の命を犠牲にしても。
……この優しい少女はきっとソレを知っている。だからこそ、こういう無茶はしなくなるだろう。
魔力紋が光を失うとイゼリアの手首に緋色の珠玉がブレスレット形になって止まった。
透き通った珠玉は俺が無理矢理契約を結んだのではなく進んでしたからだろう。
この契約は所有者となる者に隷属者の身体や精神を自由に扱えるように珠玉が何らかの形で現れる。
この珠玉に危害を加えれば隷属者は肉体的、または精神的に痛めつけられることになるのだ。
そしてその珠玉は無理矢理結べば濁り汚らしい色に変わる。……稀に契約で生まれた美しい珠玉を売ってしまうような輩もいるようだが。
ブレスレットを確認していると俺の首元が熱くなった
……契約が完成した証だ。
「ヒューリ……!!分かっているの!?この契約は!!」
病み上がりだと言うのにイゼリアは怒る
キラキラと俺の瞳と同じ珠玉が輝く。
「……分かっている。俺を奴隷にしたものより上の拘束力を持つ契約だ。……だがこうすればイゼリアを守る事が出来る」
……そう初めて好きになった少女だ
簡単に死なせはしない。
早く強くならなければ。この優しく残酷な初恋の人を守るために。




