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ヒューリ視点1

共にいた人々が先に売られ奴隷商人曰く目玉商品らしい俺を首に着いた魔力制限の鎖と手首の鎖ごと纏めてガッと引っ張られる。

「13歳男!!健康でサンドバッグ、荷物持ち、性奴何にでも使えます!!ただし忌々しいこの赤目!!お値段お下げしましょう!!」

あぁ遂にこんな風に売られてしまうのか。


俺の国はこの国より小さく、内部抗争が激しい。

そして王が即位するとその男兄弟は殺されるか裏の世界で陽の目を見る事が出来なくなる。

俺の容姿は都一の美姫と名高い母に似ているらしいのだが、皮肉な事に俺を見た奴隷商人にそれを高く買われたらしい。

王族の付加価値に加え魔力持ち

隣国の被虐嗜好を持った悪趣味な貴族に高く売れそうだと兄上と奴隷商人が笑っていた。

そして無理矢理鎖を繋がれ長い距離をまともな服も着させられず歩かせられた。



この先どうなるかはあの奴隷商人の言い振りからして最悪なものだろう。

下卑た光を目に宿し俺のことを見る者達におぞましさが沸く。

だが落札されそうになったその時だった。

「貴様ら!!奴隷を売るは犯罪だと知っておるのか!!買うも犯罪だ!!牢獄へ繋げ!!」

ドタバタと正義感の強そうな兵がやってきて隣に立っていた奴隷商人や奴隷を買っていた者達を手早く拘束していく。

めまぐるしく変わる状況をどう切り抜けるか悩んでいると目の前に俺と同い年くらいの女の子が立ってきた。

「ねぇ貴方……帰る場所は?」

困ったように聞いてくる少女には悪いが遠い隣国に殺される事を前提として売られたのだ。

「今更……そんな所はない」

思考が暗い方に引き摺られていく。

……何故わざわざ兄上は俺に生き地獄を味合わせようとしたのだ?それでなくともこの13年間兄上は俺と母に屈辱を、絶望を幾度となく強いたではないか。まだ満足してくれないのか。


「姉様、家に彼を引き取ってはいかがでしょう?魔力持ちならば護衛とでも言えば義父様は納得なさるでしょうし」

少女のことを危ない目に合わせない為か周囲を警戒していた黒髪の少年が提案している。

その言葉に少女は小首をかしげ賛同した。

「そうね……貴方さえよければどうかしら?」

「……いいのか?」

国に居た打算的な香水のキツい匂いのする女と違いこの少女はふわりと花のような香りがした。

「ヒューリだ……よろしく頼む」

「私はイゼリアよ。こちらは義弟のギルバート、よろしくね」




裏通りから連れ出され着いた家は大きく豪奢な屋敷だった。その中で趣味良く纏められた部屋に連れていかれ手当をされ、着替えさせられた。

その間、イゼリアに今までのことを話していた。

「……まぁ王宮でも、扱いは対して変わらない5番目の王子だ」

柔らかな布で髪を拭われる。

目立つ銀髪が顕になり、イゼリアの顔色がほんの少し変わって暫し悩んでこう言った。

「ヒューリ、貴方怪我が癒えるまで部屋から出ないでちょうだい」

それは見ることすら忌まわしいということだろうか

唇を思わず噛んだ俺にイゼリアは慌てて口を開く。

「誤解しないで、貴方の家が複雑なように私の家も複雑なのよ。怪我も癒えない貴方に無茶をさせたくないのよ」

そう言ったイゼリアはギルを、俺を見て悔しそうにしていた。


それから、イゼリアは甲斐甲斐しく俺の世話をしてきた。ギルもこまめに遊びに来た。

どうやらこの姉弟は髪を弄るのが好きらしく俺の髪もよく弄ってきた。

「私とお揃いなの。ギルには秘密よ?」

と言ってイゼリアは色違いの髪紐を俺の髪に結んで微笑んだ。


ある時の事だった。俺はギルと遊んでいてイゼリアは俺に図書館に行くと言って部屋を出て行った。あいつの本好きは結構なもので読み出すと何時間も帰って来ない。

ギルはイゼリアが居なくなると不安そうにする。

夕方になるとイゼリアは帰ってきて俺たちに楽しそうに今日読んだ本の話をする。

だがその日部屋に入ってきたのは醜悪な男だった。

「お、お父様……ぐぅ……っ!?」

その男は入るなり猫の子を掴むようにギルの髪を掴むと首を締めるようにして魔力封印具を嵌める。


「おぉ、イゼリアはよくよくやる。お前のような男で遊ぶのは何よりの快楽だ!!ギルバートォ……お前はただ見ていろ!!お前の友人が俺に滅茶苦茶にされるのを!!イゼリアの居ない今は俺が神だ!!俺こそが!!」

叫びながら男は俺の横顔を叩き服を破く。

肥えた男の身体は重く拒絶することすら容易でない。どうしようもないほどにおぞましく汚らわしい。

男が触れた肌が腐っていくような幻覚が襲う。

「ヒューリ!!ヒューリ……!!お父様やめて!!」

声を上げる度ギルの封印具が首を締めていく。

この男は息子を殺す気なのか……!?

あらゆる負の感情が頂点になった時だった

髪紐が解けゲートのように形作ったのは。


「お父様……その方は私の客人だとお伝えしたはず。なぜ私の部屋に勝手に入って客人を押し倒していらっしゃるのかしら」


聞いた事がないほど冷えきったイゼリアの声が部屋に響く。イゼリアはギルの封印具を見て苛立ったように自分の髪を握ると封印具を取り男を睨みつける。

「い、イゼリア!!何故ここに……!?ち、違うのだ!!このものが私を誘惑してきた故穢らわしいと調教していたまでだ!!」

突然現れたイゼリアに動揺を隠せないのか俺の上から退かない男。……良くも言えたものだ。

見ればギルも瞳が金に染まりつつある。

「……調教?お父様私はお父様ととことん話が噛み合わないようですわ。早く部屋から出ていってくださいませんか」

イゼリアはというと微笑っているのに極寒の声音で男を萎縮させている。


突然ぶわりと風が吹き男の身体を吹っ飛ばした。

「イゼリア姉様、申し訳ありません。魔力が暴走しました」

瞳を完全に金に変えギルが棒読みで言う。

「……構わないわ。そうねなんだったらこの部屋壊しても良くってよ」

豚が吹っ飛ぶなりイゼリアは俺のそばに来て俺を抱き締めてきた。酷くイゼリアの身体が温かい。違うな、俺の身体が冷たいんだ。

「す、まないイゼリア、使う気は無かったんだ」

「…だが、どうしても耐え切れなかった…っ!!…済まない、済まないイゼリアお前の身体に負担を……」

イゼリアの魔力はギルより少ない。テレポートなんて魔力を多く使う魔法を突発的に使ったんだ。

副作用は一体どれほど重いだろうか。

腕の中に収まるほど華奢なこの少女が耐えられる副作用で済むのだろうか。

「構わないわ。そのために渡したのだから……大丈夫私が暫く使えずともギルが貴方を守る……ギルは私より強いから安心してくださいね」

だがイゼリアは悔恨に沈む俺を甘やかすこのように言う。ゆるゆると力がイゼリアから抜けていく。


「……ギル、ヒューリを……暫く休むわ……」

ふっとイゼリアが意識を失う

「……大丈夫です。姉様の副作用は魔力が回復するまで眠る事ですから」

ギルは意識を失ったイゼリアをゆるりと浮かばせ、ベッドに運ぶ。

「僕は姉様が起きるまでそばに居ます。ヒューリはどうしますか?」

「……俺もそばに居よう」

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