新章開始です2
「貴女は何を考えてるんだ?」
「だって…虚空に冤罪で囚われているなんて余りにも巫山戯ているでしょ」
イオリを屋敷で休ませている間に伯父様に説明をしなければならない。
国王らしく威厳に溢れる伯父様だけど素の伯父様は結構お茶目な人なので許可はくれるだろう。
問題はヒューリだ。
「…伯父様にはちゃんと話すから犯罪者とかになるって心配は要らないのよ?」
「そういう問題では…」
小首を傾げて言う私にヒューリは溜息混じりだ。
するとギルがくすくす笑いながら言った。
「姉様、ヒューリは姉様に頼って欲しいんですよ。姉様は余り僕達を頼ってくださらないから」
「な…!?ギル、お前…!!」
ギルの言葉に言葉を無くし、顔を赤くするヒューリ
。どうやらその通りらしい。
「…頼っていいの?貴方達をまた危険な目に合わせてしまう…」
虚空とは人の精神を壊す為の牢獄だ。
イオリには悪いがテイカという人の精神は壊れているか、それに近いものになっているだろう。
そんな虚空に立ち入る今回の問題にギルやヒューリを巻き込むつもりは無かった。
「姉様ばかりに負担は背負わせないよ」
「…俺は貴女の従者だ。少しは俺を頼ってくれ」
穏やかに微笑うギルに少し顔の赤いヒューリがそう言ってくれる。
「…ならまた、巻き込んでしまうわ…2人とも力を貸して?」
「はい姉様」「了解」
2人は私の手を掴みどこか嬉しそうに頷いた。
***
あの後3人で王宮に行き、伯父様に話した。
「…2年前の後始末…しかも今回は特に大きな件案だな?イゼリア」
額を指でとんとんと叩きながら伯父様は言う。
「はい。…虚空には我が国の門より入るとして…テイカ殿が居ないと気付いた場合」
「それはないだろう。虚空に入れるくらいだ。その国には必要ないと思われているか…見る事も忌まわしいと思われているはずだ。確認などしない」
私の言葉を遮り伯父様が考える様に言う。
…確かに壊れる事が前提で入れて居るのだ。
私の父親とて確認されたのはたまたまだ。
「…イゼリア、ちゃんと自分の目で見てそのテイカ殿が無罪なら救っておいで。虚空に居るなら事実確認など詐称されているだろうから」
伯父様は暫く考えた後にそう言った。
それは虚空に立ち入っても良いという事だ。
「ありがとうございます!!伯父様!!」
「…余り長い事入ってはいけないよ?手早く探して、早く帰ってきなさい」
優しげに言ってくれる伯父様は、父親より父親らしい慈愛に満ちた目で私を見る。
…私ももう20歳なんだけどなぁ…
我が国の虚空はまだ生易しいと言われている。
他国の虚空の門を守る門番がそういったらしい。
つまり、テイカ殿はかなり劣悪な状況下にある。
一刻も早く救わねば…って事だ。




