裁きの時です2
カティナの罰を執行するのは執行官。
執行官とは他人の魔力を吸い取ってしまうという特殊な魔力を持つ人だ。
鎖で引き摺られて執行官の元へ連れていかれるのは、さぞ怖いだろう。
「…イゼリア殿、今回の件だが…申し訳なかった!!我等が娘をキチンと見なかったせいでイゼリア殿には多大な迷惑を!!」
カティナを見送る私に深く頭を下げ、謝るカティナの両親。…カティナの両親は良い人なのに。
「お気になさらず。カティナ様はもう大人です。罪は自分で償える…そこに親は関係ありませんわ」
…そうカティナだって17歳だ。
考えられる頭があるんだから責任だって取るべき。
***
あの後、カティナの国の両親は我が国に正式な謝罪と独占貿易の契約を結んで最後まで申し訳なさそうに帰って行った。
…カティナは罰が執行され次第本国に返される事になるとのこと。
「…次は我が父親、かぁ」
そう
罪人は2人。
我がオルシア家もどうなるやら?
良くて爵位取消くらいかなー…
「口枷を外せ。オルシア家当主、裁かれる理由くらいは分かっているな?」
あの後気絶から目覚めるなり、怒鳴り、喚く父親を黙らせる為か口枷がしてあった。
父親の顔は…赤とも青ともつかない、とりあえず凄まじい形相だ。
「知らぬ!!俺は悪くない!!あの女が俺に魔術を!!全てはあの女が悪いのだ!!」
「魔術反応は無かった。調べはついている。見苦しい言い訳をするな!!」
父親の明らかな嘘に伯父様も普段の穏やかさを捨て怒鳴る。私が覚えている限り、初めての、そして最後の兄弟喧嘩みたいだ。
「ぐ、俺は、俺は悪い事などしていない!!罪など償わ…、そうだギル、ギルに代わりを!!ギルバートォ!!お前を拾ってやった恩を今返せ!!」
罪を認めないどころかギルに罪を押し付けようとするなんて何様なんだろう。
ぴりぴりと私が作る空気を切り込むようにギルは父親を静かに見つめて言う。
「…俺は、貴方に恩を感じる事なんて無い。拾ってもらった事に感謝はするけど。…俺に愛情を、知識を、強さを与えてくれたのは姉様だから」
前半は父親を見捨てるのに相応しい声音で、後半は私の方を見て少し照れくさそうに言うギル。
あれ、一人称がいつの間にか[俺]になって…
…そっか大人になってきたんだな…
「な、この…恩知らずがァああ!!ならイゼリアだ!!お前は娘だろう!!父に尽くせ!!」
「ごめん被りますわ。見苦しい様を見せず潔く罰を受けてくださいまし」
ギルの言葉に逆上する父親は私まで出してきてるけど、いや断るよ。
私流石にそこまで聖女じゃないし。
今まで散々好き放題したんだから、ちゃんと責任取らないとね。
「…これ以上無様な姿を晒すでない。お前は貴族籍から抜く。そして虚空へと追放する」
…虚空とは何もない牢獄だ。
人も何もない真っ白な部屋には窓も無い。
時間の感覚も狂い、あまりの孤独ゆえにいつか自分がなんなのかも分からなくなり狂っていく。
この世界で最も恐ろしい監獄だ。
「…こ、虚空…?い、嫌だ兄」
「連れていけ。お前など、知らん」
狼狽する父親の言葉を遮り伯父様が目を逸らす。
伯父様は罪を親類にまで回さなかった。
ただ、死ぬまで苦しむ罰を、咎を与えた。
あの我慢も常識もどこかへ飛ばしてしまった二人にはさぞ辛い罰だろう。
それでも償えられないほどの罪を重ねているが。




