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エリオット視点3

腰に刺さったナイフは思ったより厄介な呪いが付いていたらしく俺はイゼリアを護れて良かったと心底ホッとした。

だがイゼリアは発狂せんばかりに俺の傷口を塞ごうと躍起になる。

血が足りないのかここら辺の意識は曖昧だ。

ふわふわとどこか遠くを見るような気持ちで慌ただしい空気を感じた。



***


「…っ!!ぁ…」

鮮烈な痛みで目が冴えた。

サラサラとした感触が擽ったい。

「ッ!!起きられましたか。呪いは解除しましたが血は戻りません。安静に」

頬に掛かる銀糸はヒューリのものだったらしい。

良くできたビスクドールみたいに整った表情は他人に対すると全くの無表情だ。

イゼリア以外はギルくらいだろうかこの男が表情を緩ますのを見れるのは。

そもそも敬語を使ってる段階ではヒューリは相手に心を開いていないのだろう。

横になったまま向こうを見るとイゼリアが安心したように気を緩ませたのが分かった。


それから少しして兵士達がやってきて拘束されたカティナ王女やイゼリアの父親を連れていった。

…カティナ王女には魔力封じの拘束が更に強固に施された。

それら全てを見届けたイゼリアが身体を崩したのは当たり前のことだっただろう。

ただでさえ魔力が底についている異常な状態だったのにあれだけ傷ついていて良く意識を失わなかったものだ。貴族の令嬢とは思えないほど気丈に振舞ってはいたが限界だったんだろう。

だがあの傷で地面に倒れたら…更に悪化するのは目に見えていた。

「イゼリア…!!」

朝日に煌めく金色。

誰よりもあの瞬間にイゼリアに手を伸ばしたのはレオナードだった。

この五日間で体力と精神力は限界まですり減っていた筈なのにヒューリより動きが早かった。


レオナードに大事に抱え込まれたイゼリアがレオナードの袖を緩く掴んだのが見えた。…それに表情を柔らかく緩めてレオナードが体勢を整える。

「…イゼリアが…随分と気を許しているな…?」

「…イゼリア様はとてもお強くなられた。なれば俺ももっと強くならなければ。恋しい人に何時までも守られているようでは騎士の名折れでしょう」

愛おしげにイゼリアを見つめる翡翠色の瞳は甘ったるく熱情を灯していて。


…だけどきっとイゼリアもレオナードの事を悪く思ってはいないだろう。

どこまでもイゼリアの事を考えて、イゼリアの全てを守るようにして恋慕うこの男に比べて俺は自分勝手に気持ちをイゼリアにぶつけていたと思う。

「…悔しい事だ」

今だってイゼリアを想う気持ちに嘘は無い。

イゼリアを抱き抱え、イゼリアに甘えられている男にほの暗い炎がチラチラと胸に宿る。

だが俺はこの男にならイゼリアを任せたって後悔しないだろう。

この妬心もいつか消え、笑って二人を祝福出来る…そんな予感がするんだ。


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