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レオナード視点5

今夜も男に嬲られるのだろうか。

幻も現実もごちゃごちゃになったように呪いをかけられて日付感覚すらおかしくなる。


「遊びに来たぞぉ?レオナード」

どうやら今夜も俺は悪夢を見なければならないらしい。

逃げようと決意したのも徒労に終わる。

俺が逃げようとすると俺を拘束している縄が紫電を帯びて動けないように麻痺させるからだ。

聞きたくもない男の声を聞きながら、もしかして俺はこうやって緩やかに壊されていくのではないのかとどこか冷静に考えていた。

そんな時だった。

「ふぅん?従者と…誰だろう悪役令嬢かなぁ?」

そう呟いた少女がどこからか一人の男の髪を掴んで引きずって連れてきたのは。

少女は縄で男を雁字搦めに纏めるとまた部屋から出ていった。

…あの銀髪はヒューリ…か?

待て、じゃあココにイゼリア…か?来てるのは?


ここは魔力の少ない俺ですら分かるほど何個も何個も魔法を掛けている事がわかってる。

イゼリアは魔力が少ない。

掛かっている魔法を防ぐのすら危険だろう。

だが俺には助けに行くことが出来ない。

「くっ…やめろ!!離せ…!!」

今までの経験から暴れれば暴れるだけこの悪趣味な時間が伸びるのは分かっていた。

案の定男はニヤニヤ笑いながら俺の髪を掴んで大人しくさせようと壁に叩きつけた。

「レオナードぉ…お前は俺には勝てんだろう?大人しくしていれば優しくしてやるぞ?」

「あ…ぅぐ…ッ!!」

視界がクラクラする。

頼む無事で居てくれ。イゼリアではなくギルであっても俺にとっては大事な友人なんだ。



***


「…っ!!…ぁ、ああ…」

衝撃を受けたような声が耳に届く。

ドレスも綺麗だった髪もズタズタになったイゼリアが片目だけの視界から見えた。

それはそうか…。

イゼリアは父親の趣味を知ってはいたが実際の現場を見るのは初めての筈だ。

こんな屈辱的なところを見て欲しくはなかった。

だがイゼリアが生きていて良かったと心の底からホッとした。

「…父様、なぜ…屋敷に居たはずでは」

手で口元を覆いながらショックを隠しきれない様子でイゼリアが目の前の男に言う。

「おお、イゼリア…暫し待て。まだ終わってない」

俺で遊んでいる男はイゼリアの方を見てニヤリと笑うと律動を早くした。

「しかしイゼリアなぜここが分かったのだ?あの女は誰もわからないと」

「黙れ。声も穢らわしい!!」

男の様子にイゼリアの纏う魔力がぶわりと広がった。

強い明確な殺意が俺にまで伝わる。

魔力を練るイゼリアの身体に裂傷が走る。だがイゼリアは戸惑う事なく魔法を使おうとする。


「イゼリア…ダメだ、落ち着け!!」

ダメだ。親殺しの咎など、誰がこんな華奢な手に…何より恋しい人に背負わせられる。

「レオ…」

誰よりも綺麗な金の瞳に魅入られそうになる。

呆然としたような声に心が痛む。

「おっ?暴れるのもいいな。くくっ」

「ぐっ…お前が親殺しの罪を…背負う必要はない」

この殺意が伝わっていないのか男は未だにイゼリアの方を向かない…既にどこか狂っているのだろうか。


「退いてよ!!もう馬鹿みたいに盛ってないで!!」

俺の言った言葉にイゼリアは唇を噛むと父親の方へ向かって…それは凄い勢いの蹴りをいれた。

男はそのままの勢いで、その肥えた身体をごろりと転がした。

そして顔を赤くして怒鳴り散らす。

「お前は!!昔から俺の邪魔ばかりを!!折角のお楽しみを何故邪魔する!?」

「ソレが普通じゃないからに決まってるじゃない!!頭イカレてるんじゃないの!!?」

俺の傍に来て手の拘束を外すイゼリアも怒鳴る男に躊躇なく怒る。こんなイゼリアは初めて見る。


「…ねぇレオ見て、貴方を脅かしていたあの男は私にすら負ける男なんだ。貴方は幼いときに無体な事をされたからまだ怯えてる。」

そして男から視線を外すとイゼリアは祈るように

懇願するように言う。

「貴方は大きくなってとても、とても強くなった。もう怯える必要なんてない。貴方はこんな男に負けるような男じゃない!!」

真っ直ぐ俺を見る瞳は金から黒に移り変わる寸前の濃い藍色をしていて、まるで夜空の色だ。

イゼリアから視線をずらして、ずっと長い間俺を苦痛と屈辱と恐怖で縛っている男を見る。

顔面(イゼリアが蹴った場所)が赤く腫れ、醜く弛んだ身体。俺に触れた手は柔らかく剣を持った事も武道を嗜む事もないだろう。

ちゃんと見れば研鑽を積んだ俺に勝てるはずもない男だと霞がかった頭がまるで晴れるみたいに急に現実が帰ってくる。

この男が怖くて、いつもまともに見れなかった。

無力な自分が何より憎くて。だが今なら違う。


「ありがとう…イゼリア。…本当に貴女は俺を闇から救いあげてくれる」


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