原作開始……?です!!8
「…!!い、たくない…?」
一か八かの賭けだったから身構えていたがどうやら正解だったらしい。
壁を摺り抜けると髪紐は引っ張るのを辞め、手元に落ちてきた。
「…っ!!…ぁ、ああ…」
私は恐らく誤解していたんだろう。
父親は綺麗なものを壊すのが好き。だけど男性までは対象じゃないと思っていた。
だって今まで見た中で男性は居なかったから。
だから私は始めっから父親はこの件に関係ないと思っていたの。
片目だけ目隠しがズレているレオは私を見て酷く驚いたような顔をしていた。そして私から目を逸らした。レオは手首を縄で纏められていて、そんなレオを構っているのは父親だった。
「…父様、なぜ…屋敷に居たはずでは」
この人は愚かだけど、ここまでだっただろうか。
目が眩むほどの怒り。
「おお、イゼリア…暫し待て。まだ終わってない」
…私が魔法を使えない事が分かってるのか私を前にしてここまで余裕のある父親は初めてだ。
ヒューリは2人の反対側で雁字搦めに縄で纏められている。どうやら縄に魔法が掛かっているみたいでヒューリの意識は無いみたい。
あぁ…やはり前に結界を壊したのはカティナで父親はカティナと手を組んだのか。
原作を何より大事にしてると思ってたのに。どうやら私ですら考えられないくらいカティナの考えは下衆かった事になる。
だってプレイした人ならなんとなく分かるんだ。確証はないから確実じゃないけど。
レオのトラウマを作ったの私の父親だって。
…私のせいなのだろうか。
私が悪役令嬢通り動けば…レオはこんな目には合わなかった筈なのに。
「しかしイゼリアなぜここが分かったのだ?あの女は誰もわからないと」
「黙れ。声も穢らわしい!!」
呪いが魔法を使おうとする私の身体に激痛を走らせる。…知った事か。
この男は今ここで殺しておかないと。
どうせ原作でも碌な末路を辿らないのだ。
私が始末したって誰も構わないだろう。
「イゼリア…ダメだ、落ち着け!!」
なのにどうして?
どうして貴方が止めるのよ。
一番被害に合ったのは貴方でしょう。
「レオ…」
手首の縄が切れそうになるくらい手に力を入れているのが分かる。
「おっ?暴れるのもいいな。くくっ」
「ぐっ…お前が親殺しの罪を…背負う事はない」
そんなレオの事を嘲笑うみたいに言う父親は状況を理解してないのだろうか。
それとも快楽に溺れてそれどころじゃない?
父親に遊ばれているところを見られているなんて最悪の屈辱でしょう?
なんでそんな穏やかな目で私を見るのよ。
やめて、私は貴方にそんな風に見られる資格なんて無いのに。
「退いてよ!!もう馬鹿みたいに盛ってないで!!」
父親の元まで走ると私は父親を蹴り飛ばした。
魔法が使えないなら武力を持ちいればいい。
父親は無様に転ぶと私に向かって怒鳴り散らした。
「お前は!!昔から俺の邪魔ばかりを!!折角のお楽しみを何故邪魔する!?」
「ソレが普通じゃないからに決まってるじゃない!!頭イカレてるんじゃないの!!?」
負けずに怒鳴りつける私に父親は目を白黒させる。
その間に私はレオの縄を外した。(結び目が固くて大変だった)
久しぶりに見たレオはかなり窶れていた。
それでも精神状態は壊れていないらしく最悪の事態は避けられたようだ。…もう十分最悪だけど。
「…ねぇレオ見て、貴方を脅かしていたあの男は私にすら負ける男なんだ。貴方は幼いときに無体な事をされたからまだ怯えてる。」
レオへの妄執はレオの身体中に跡付いている。
私は冷えたレオの手を握って話す。
「貴方は大きくなってとても、とても強くなった。もう怯える必要なんてない。貴方はこんな男に負けるような男じゃない!!」




