伯父視点
時折未来視でもしてるのかと疑うくらい私の姪であるイゼリアは頭が良い。
その高い身分を悪用することもなく育ってくれた。父親である弟や義妹である母親に全く似ていない事だ
…弟であるあの男は自分の娘が私にどこか似ているせいか恐れているようだが
あの子に会ったのは今から四年ほど前だ
オルシアの血を継ぐ少女が使用人と和気藹々と話し、領民を虐げる事無く暮らしているという報告に私は驚いた。子は両親を見て育つのだという考えを見事に覆した姪
私の弟は肥大したプライドを持っていて私によく張り合ってきた。そして自分が何より偉いという自分勝手な考えを持っていた
女性の事を玩具のようにしていたし見た目が麗しければ性別を問わず壊すまで残虐な真似を平気でする男だった。それ故父上は全ての膿をこの国の汚点でもあるオルシア家に封じたのだ
その結果、悪の大家とも言えるオルシア家の今代当主夫妻はオルシア家らしい悪とどこまでも下衆な考えを持ってこの国に根を張ったのだった
権力だけはあるオルシア家に逆らえる者は居らず貴族位にあっても悲惨な目に合うものや、民も苦しんでいる事は分かっていた
だがオルシア家を断罪すればこの国の裏社会は荒れることが分かりきっていた。その場合の被害は甚大なものと予測され、それ故罰する事も出来なかったのだ。
そして弟の手によって私の息子は幾度となく暗殺されかけた。証拠はないが弟がしたと私は思っている(私に子が居なければ次の王位を継ぐのは常識的に考えると弟の子だからだ)
私は息子の身命を守る為に息子に対し無関心な振りをした。悲しげな息子の顔を見る度幾度となく無力さに嘆いたものだ
妻はそんな私を心配そうに見てはなにくれとなく息子の近況を教えてくれた
…そんな不倶戴天の敵でもある家で何故こんなマトモな娘が生まれたのだろうと報告書を片手に悩んだものだ
何年か前に唐突に出来た弟をとても可愛がっているようで私直属の暗部が持ってくる手紙には日々恙無く幸せに暮らしていると書いてあった
そんな穏やかな姪が怒り当主夫妻を館に封ずる魔法を使ったのには驚いたものだ。仕事以外で外に出れなくなった夫妻は屋敷で地団駄を踏んでいるようだ。それでも手紙のやりとりなどは出来るから悪事を重ねてはいるようだが尻尾を掴むことは出来ない
今、そんな姪の周りには隣国の王子も何故かいたりで良い子なのだが地味に頭を悩ましてくるが詰まらない王宮で姪の手紙や報告書は楽しく読めるものだった
「……なぁ妃よ、私はアルフォンスをイゼリアに会わせて見たいのだ。あの子は私が無関心に接したせいで周りからも軽んじられているだろう?」
イゼリアにはあの近衛騎士団のレオナードも心を許していると聞く
あの子なら私の息子に悪影響を及ぼす事はないだろうと隣で休む妻に聞いてみる
「オルシアの娘……陛下のお目に止まるのなら会わせてみれば如何でしょう。私は止めませんわ」
穏やかな妻は否定をしなかった
私は早速イゼリアに手紙を書き始めた
あの子は恐らく読むなり暗部の者に愚痴るだろうがそれすら微笑ましい
手紙には分かり易く簡潔に書いた
《近々息子と会ってくれないか》と。




