西丘第一高校
ふぅっと息を吐き、目を瞑る。
この部屋の中はルームエアコンのおかげで涼しい。
数刻の後、ガラガラとくぐもった音により彼女の勝利が告げられる。
乾燥した大気の中、喉が水分を求める。口の中はねっとりと絡みつき唾液は出てこない。
酸素はうまく吸えず、うまく吐けない。
一度、深呼吸をするが心臓の鼓動は安定しなかった。
手足は冷え切っているが、汗は止まらない。
「勝てちゃった!」
彼女は余裕見たっぷりといった様子で親指を立てて歩み寄ってくる。
私は立ち上がり、ズボンのプリーツで手を拭う。
灰色のスウェットに作られた、大きな黒い染みが手の油と水分を取ってくれる。
「このままもう一勝してよ。私が楽になるからさ。」
緊張した私は、笑って話す先輩に答える余裕がない。
左手に強く息を吹きかけ、湿り気を乾かす。手は冷たいがプレーに支障なさそうだ。
先輩の声に比べて一回り大きな機械音が、私が次の試合に出るということを教えてくれる。
「緊張してる?」
試合を終えた彼女はとてもきれいな笑みを浮かべていた。
試合をしている時間は短く、一方的な試合だった。顔に疲れが見えない。
「かなり。」
うらめしような声を作って答える。苦笑いはうまく出来ただろうか?
あきれた顔をされた。そして彼女はわざとらしく、これでもかと長い長いため息見せる。そして左の手のひらをこちらに向け、少し掲げる。
その意図に気が付き、同じように手を挙げる。
パチンッ と子気味よく、いつもより少し強く手を打たれる。
彼女は私が座っていたところに腰を下ろすと腕をくんで顔を俯けていた。
彼女が伝えたかったことにも気づき、苦笑いを浮かべる。
大きく広いテーブルの上、獲物を持つ右手にはいつもより力が入る。
その先で支える左手は、さっきよりびしょびしょだった。
それでも、だからこそ、心の中は驚くほど平静を取り戻していた。
そして私は、鋭く、滑らかに右手を突き出す
直後、 パァンッ!と、大きな音を発てて球が散らばった。
こんばんわ。ぽっけんです。
これから連載をしていこうと思っている小説のサイドストーリーを書けたらな、という思いでやってみました。ごくごく普通の内容ですが、よろしければ御一読、御感想お待ちしております。