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「「お帰りなさいませ」」


 この屋敷にいる者全員でその人物を迎える。それは、彼女がこの一族の当主であるがためであった。

 頭を下げた人々の中を、少女は颯爽と歩く。白銀の長い髪が、風に揺られ月夜に輝いていた。同じく白銀の髪を持つ者たちの道を抜け屋敷に入ったところで、ひとりの少年が彼女の元に歩み寄ってきた。


「お帰りなさいませ」


 少年も同じように頭を下げる。十五ほどの、これまた白銀の少年。顔を上げさせて、彼女はその少年を引き連れ自室へと入った。途端にしとねに倒れこむ。一息ついたところで、少年が茶器を持って彼女の元にやって来た。


「お疲れ様でございます」


 淹れたての茶を少女に差し出す。甘い香りが彼女の鼻腔を掠めた。


「ありがとう。良い匂いだわ」


 彼女が少年に微笑む。褒められ、少年は少し頬を赤らめた。


「……大層お疲れのご様子。本日はどのようなご用件だったのですか?」


 少年はおずおずと口を開く。彼女は茶を一口飲み、少年を視た。【かんなぎ】。彼女の目に映るのは、魂の名前。それは、少年の【真名】。彼女は、それを視ることができる数少ない存在であった。


「やっと、よ」


「……え?」


 彼女がポツリ呟いた。言いたいことがわからず、少年が首を傾げる。


「やっと、新しい王を迎えることが出来るわ」


 他でもない、彼女が見出したのだから。


「では……」


「これから、忙しくなるわね」


 一族を挙げて儀式の準備に取り掛からねばなるまい。しかし、その忙しさは彼女にとってとても喜ばしく幸せなものだ。思わず顔が笑みを湛える。全身から気持ちが溢れ出すようだった。それを見た少年もつられて微笑む。

 彼女は障子戸を開けた。目に飛び込んできたのは、燦爛と輝く月の光。今宵は、満月だ。それら全てが目出度めでたいことだった。


「……総ては、龍王國のために」


 彼女はこれからのことに胸を躍らせ、暫くその月を眺めていた。


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