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 王宮内、王族が住む青辰殿せいしんでんにシンリが入り、自室へと歩いていると、すぐ向こうからよく見知った人物が近付いてくる事に気が付いた。


「あ……ゲン兄、様」


 漆黒の髪、若いながらも威厳が滲み出る相貌。意志の強いその瞳は前をただ見据え、板張りの廊下を真っ直ぐ歩み来る。この青年こそ、王が病の今、この国のまつりごとを一身に支え、周りからの信頼も厚い第一皇子、ゲンリであった。御年二十五となる、シンリの腹違いの兄である。


 モトイも彼に気付き、慌てて廊下の脇に下がり額付ぬかづいた。

ゲンリがようやくシンリに気付く。シンリは礼を執らない。長子相続ではないこの国では、兄弟は同列として扱われる。故に、礼を執る必要がなかった。シンリはただ僅かに頭を下げた。二人の次王候補が擦れ違う。その瞬間――


(……あれ?)


 ――シンリは、何やら違和感を持った。

 何かが気になった。以前と何かが違った。それは……おそらく、視線。


(兄様、おれを睨んだ?)


 射抜くような、身震いするような、その眼光。鋭いものを感じて、シンリは振り返った。見えたのは、昔よく追いかけた大きな背中。


「シンリ様?」


 暫く見つめて、モトイの声に一瞬視線を戻す。再び振り返った時には、既にゲンリは角を曲がり消えた後であった。


「……二派に分かれ対立しつつあるとはいえ、何もお声掛けがないとは。お小さい頃は、大層シンリ様を気に掛けていらっしゃいましたのに」


「兄様は、いろいろと忙しいんだよ、きっと……」


 シンリのその言葉はモトイだけではなく、自分にも言い聞かせているようだった。


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