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「またこのような所に居たのですか、シンリ様!」


 静寂の中に突如青年の声が響く。その声は、庭園の脇にひっそりと建つ小さな四阿あずまや、その欄干に腰掛けた少年に向けられた。小柄な身体に大きな広袖を羽織り、一心不乱にその腕に抱えた書物を読む、黒髪の痩せた少年。彼、今年で御年十六歳となる、この国の皇子の名をシンリと言った。


「シンリ様、シンリ様! 聞いておられますか?」


 申し訳程度に風除けの壁が付いている、この季節にはさぞ寒いであろう四阿の中、シンリの元に駆け込み、青年は再度声を掛ける。そうしてやっとシンリが顔を上げた。大きな漆黒の双眸が青年に向く。


「……ああ、どうしたの? モトイ」


「『どうしたの?』ではありません! 今日も廟儀びょうぎを休んで何をなさっているかと思えば、また書物ですか! このような所に長くいるなど、その大事な御身がお風邪を召されたらどうなさるおつもりですか!」


 今気付いたようで不思議そうに青年を見るシンリに向かって、声を荒げる。

モトイ。それが、青年の名前であった。シンリの傍付を命じられた若き官吏である。よく書物を持ち自室を抜け出しては、その集中力が続くまでどこぞで読み耽るこの主に、毎日振り回されていた。


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