ぷちっと、ぷちプチ、プチトマトの逆襲 ~恐怖のトマトは夢に出る~
すこし無理矢理な感じしますが許してください(ToT)
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト!皆大好きプチトマト!――
テレビから流れてくるトマト宣伝のCMの音。
僕はちょっと気分が悪くなった。
僕はトマトが苦手なのだ。そして今流れているトマトのCMであのプチっとした感触のなかにあるドロッとした魔物が姿を現す。
アレが僕は嫌なのだ。
しかも、今は夕食中。一気に食欲が失せた。
「ごめん、もう食べれないや」
「そう?じゃあ、歯を磨いて寝なさい」
「はーい」
僕は適当に返事を返した。
歯を磨いて自分の部屋に向かう。
ベッドに飛び込むと直ぐに意識は闇に包まれた。
◆ ◆ ◆ ◆
「アイツが今回のターゲットか?」
暗い暗い部屋の隅。
低い嗄れた声が聞こえる。
耳を澄まさなければ聞こえないくらいの声。
気付いた者は一人も居なかった。
◆ ◆ ◆ ◆
「ここは………………僕の部屋?」
僕は部屋にいた。
何のへんてつもない自分の部屋。
何故ここに?
まず、その疑問。そして次に違和感。
その違和感はしばらくすると気付いた。
あまりにも鮮明なのだ。夢みたいにぼんやりでなく、くっきりと現実のように………………………。
ガタンッ!
不意に音がなる。それは襖からだった。
何だ………、何なんだ………!
ガタガタッ!!
先程とは比べ物にならないほどに大きい。
怖い。怖い………。
そんな心境に反して身体は動かない。
動け。動け動け動けっ………!
「動けよ………」
しかし、足はすくんで今にでも崩れ落ちそうだ。
するする………。
襖がだんだんと開く。そして同時に………――
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
小さいが確かに聞こえた。酷く掠れていて寂しそうだ………。
するする………。
ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
何で………、何でその歌が聞こえるんだっ!
何を思ったか、僕はベッドの下に隠れた。
ホコリが酷い。掃除をしとけば良かった。
今更だが僕は悪態をつく。
とさっ………。
襖から何か出てきた。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
………何だ………アレ。
出てきたのはトマトだった。
普通じゃない(………)トマト。
それは、トマトから人の足と腕が映えていて本体のトマトには口がある。
その口は醜く歪み――
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
そう呟いた。
「………………ッ!」
思わず悲鳴をあげそうになる。
必死に量腕で口を抑える。ホコリが口に入るが今はそんなことはどうでもいい。
(早くここから出ていけ………!)
頭の中でずっと叫んだ。
その叫びは通じたのか腕を器用に使い出ていった。
ホッとするのも束の間。下は親の居る階だ。
お母さんが危ない!
しかし、遅かった。
「キャァァァァァァあぁぁあっ………!!」
お母さん悲鳴が聞こえる。
僕は急いで階段を降りた。
「お母さんっ!」
「慎二っ!」
お母さんが僕の名前を呼ぶ。………が、動けない。
何故ならお母さんは地べたに這いつくばりその頭にはトマトの怪物の足が乗っていたから。
「慎………二………!にげ………て………――」
ブチャッ………!
潰れた。お母さんの顔はトマトのように呆気なく潰れた。
怪物の顔はよりいっそう歪む。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
「ヒィィィィィッ!」
僕は玄関に向かって走った。
――ぷちっ。プチぷちぷちプチぷちっプチぷちプチプチぷちぷちっプチ………!
(早い………!)
これじゃ、すぐに追い付かれてしまう。
僕は咄嗟に傘をもった。
そして振り向く。
もう目の前には怪物の涎を垂れ流した口が迫っていた。
「クソッタレェェェェエッ!」
そして僕は傘の先で怪物の口を貫いた。
――ギャァァァァァァアァアッ!
不愉快な叫び声が響いた。鼓膜が破れそうだ。頭がガンガンする。
しばらくフラフラして壁にもたれかかる。
しばらくして落ち着いた。目の前には怪物の亡骸が転がっていた。傷口からはトマトを潰したあとの透明なゲルが漏れだしていた。
「なんて質の悪い夢なんだ………」
思わず呟いてしまう。夢なら夢で早く覚めてほしい。そんな事を思いつつ怪物を倒したのとは違う他の傘を手にする。
もう、家には戻らないだろう。お母さんの死体なんて見たくない。
お墓を立てられないのは詳しいが、今はそんな悠長なこと言ってられない。
「お母さん………。僕は安全な場所を目指して旅に出るよ………。さようなら………」
自分の頭が可笑しくなったのかそんなことしか考えられなくなっていた。
もうどうにでもなれだ。
詳しいがことなどわからない。ましてや生き残れるかもわからない。
しかし、希望を持たなきゃやっていけないだろう。
僕、がんばるよ………。夢だけど………。
そして僕は玄関を出た――
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
――ぷちっと、ぷちプチ、プチトマト………。
「………何なんだよこの数………理不尽だろ………。」
そこて見たのは道を埋め尽くすトマトの怪物群れ………。
僕は絶望した。
無理だ。死ぬ………!
カランッと傘を落とした。
その音に反応したのかトマトの怪物が皆一斉にこちらを向いた。「ヒィ………」と情けない声が盛れた。
トマトの怪物はそんな僕を見て新たな獲物を見つけた獣のように口をニタァと歪めた。
そして………………………………
◆ ◆ ◆ ◆
「………ん………はっ……!」
(夢か………)
ベッドを見ると汗でびっしょりだ。ねとねとして気持ち悪い。
時計を見ると午前一時を指していた。
「………トイレ行こう………」
そうベッドから離れる。下に降りるとお母さんの無事を確認してしまう。
何となくだが、あの夢が現実だったような気がするのだ。
だからお母さんの無事を確認すると心の底からホッとした。
そして、用を済ませると部屋に向かう。
もう一度寝ようとするが中々寝付けない。
(………)
おもむろに立ち上がると襖に向かった。絶対に何かある!そんな気がした。
「………………ゴクッ」
生唾を飲む。
怖くないと言えば嘘になる。しかし気にならないといっても嘘になった。
なら確かめてしまおう。そう思ったのだ。
もう思うことはない。
――ピシャッ
思い切り襖を開いた。
何かが足元にコロコロと転がる。
――ぷちっ。
何かを踏んだ。よーく足を見る。
「うぇ………」
プチトマトだった。
その日以来僕はトマトが大嫌いになった。
読んでいただき有り難う御座いました☆⌒(*^∇゜)v