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竜王の世紀  作者: 南木
序章:ようこそ竜王様
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チュートリアル:長老とのお話『三日月和壬は何者なのか』

今期の一言: 我が命我が物と思わず 武門の儀、あくまで陰にて 己の器量伏し、ご下命如何にても果すべし なお 死して屍拾う者なし 死して屍拾う者なし 死して屍拾う者なし 

――――『隠密同心 心得の条』より

 あなたは、今日初めて会った人のために、命をなげうつことはできますか?



「バスは予定通り出発できたそうです」

「……そうか。無事に空港までたどり着ければいいが」

「僕の友人を信じてください。きっと、安全に送り届けてくれることでしょう。それに、僕たちがここで頑張れば、もっと安心できるでしょう」

「本当にすまない」

「いいんです。僕が人のためにできるのはこれくらいが精いっぱいですから」


「来たぞ! お客さんだ!」

「ずいぶんと早かったようですね。」

「何人だ?」

「目視で30人ほど!」

「すると一人頭5人倒せばいいのか」

「けっ、楽勝だぜ」

「でもそれだと相打ちだからノルマは6人以上じゃないと」

「ちがいない」

「それにたぶんもっと増える?」

「仕方ない、全員覚悟を決めろ。これは決して無駄死になどではない。

王女様をはじめ……ミカヅキの同胞たちの命がかかっているのだ。」

「班長、演説はそこまで。そろそろ射程内のようです」

「よし! 全員地獄でまた会おう!」



「カズミ……後は頼んだ……」





 新聞記事


 8月12日(日) ソグデ王国で軍部によるクーデターが発生。


 ソグデ王国軍最高司令長官は本日現地時間17:00に政府中枢を占領。

 現政権を排除し、軍部主導による政治を行うと宣言した。










 三日月和壬:男性


 7月4日生まれ 血液型B型

 平均よりやや低めの身長に、実年齢より一回り下に見える顔に

 ぱっちりとした大きな瞳が特徴の好青年である。


 彼はごく普通の家庭で生まれ、中学までは普通に義務教育の中で育った。

 その後進学したのが『贄浦陸軍士官学校予科高等部』




 つまるところ、兵隊の卵育成所だった。



 全国にある士官学校予科の中で最も過酷な指導が行われると噂される贄浦で、普通科生として3年間勉学や訓練に励み、最終的には学年二位の成績で卒業しその優秀な成績で幹部養成の軍大学に入学するまでになる。

 中学までの成績は実はそれほどいいわけでもなかったし、これと言って目立つ成績を修めたこともなかった。

 そんな彼がそこまで成長できた理由はいろいろある。


 まず和壬のクラスの担任教官がとても教え上手で、非常に尊敬できる人物だったこと。

 ともすれば理不尽な体罰を振るったり、怒鳴り散らす教官が多い中担任教官は正義感が強く、指導も非常に丁寧、生徒の面倒見も良かった。

 和壬は教官にすっかり懐き、少しでも多くのことを学ぼうと心掛けた結果、卒業直前には現役の士官と変わらないほどの優秀な生徒になる。

 彼は予科を卒業した後もその人を恩師として慕っていたそうな。


 そしてもう一つ、和壬には大親友がいた。

 これから和壬を語る上で何よりも欠かせないのが、助け合う友人であり同時に勉学訓練で切磋琢磨する好敵手の存在だ。



 友人の名は千住院一澄(せんじゅいんかずみ)


 千住院家は元華族の家系で、その上国内における三番目に大きな財閥でもある。幼いころから英才教育を施され、海外留学経験もあるエリート中のエリートであり、入学試験の成績も開校以来初めての全教科満点をたたき出すという天才少年だった。

 おまけに顔も文句が付けようがないくらい美形で、身長も180を超え、家柄を鼻にかけることもなくく誰とでも分け隔てなく接するなど「お前どこの主人公だよ」と言いたくなる完璧超人である。


 和壬とは名前の読み方が同じだったのですぐにお互いに親近感を覚えた。クラスも三年間同じだったし、放課後はいつも一緒に行動していた。


 和壬は完璧超人の一澄と共に勉強や訓練に励んだために、自然と引き上げられるように力を伸ばしていくことが出来た。

 一方の一澄も和壬は数少ない自分と同等の実力の持ち主だったので、彼に追い越されるわけにはいかないと今まで以上に頑張ることが出来た。

 いつしか二人は予科最強の名物コンビと呼ばれるまでになり、その友情はともに軍大学に入ったあとも変わらず続くことになる。




 二十歳にしてすでに順風満帆の出世コース。何事もなければ高官の地位は約束されているも同然だった。

 だが、このころから和壬は自分の歩む道が本当に望んでいるものなのか分からなくなってきたのだという。

 元々、キャリアを目指して予科高等部に入学したのでなく、直接人を助ける仕事をしたかったから…そう思っていたはずなのに、いつしか自分を磨きあげることばかりに夢中で、将来のことについてはこれっぽっちも考えていなかった。

 しかし、自分はすでに引き返せないところまで来てしまっている。ここで歩みを止めるわけにはいかなかった。


 和壬は心にぽっかりと空いた穴を抱えながらも、ひたすら目の前の道を進み続けた。




 そんな和壬に転機が訪れたのは、二十歳になってすぐの頃だった。


 東南アジアにある国の一つであるソグデ王国にて、建国の日を祝う行事に自国の要人が招待された。その要人の一人が友人である千住院一澄の父だったこともあり、軍大学の生徒数十名が護衛という名目で同行することとなった。


 当然、和壬にも声がかかり、飛行機でソグデ王国に向かった。


 建国記念日の1週間前には現地入りし、その間に王室の人々とも話す機会があり親交を深めた。それはまるでバカンスのようなゆったりとした任務だったので、和壬ものんびりと羽を伸ばして観光を楽しんでいた。



 ところが建国記念日当日………




「うごくなあぁっ! この国は本日より我々軍部が主権を握る! この聖戦に逆らうものには容赦はしないぞ!」


「兵士が!? 武装した兵士がたくさん!?」

「クーデターだ! 皆殺しにされるぞ!」


 国王と内閣に不満を持っていた軍部が、一部の野党と結託して大規模なクーデターを引き起こした。建国記念の祝賀会ですっかり油断していた王国の要人たちは、あっという間に粛清されてしまう。

 国王をはじめ、王室一族は見つかり次第捕えられ、内閣首相は軍部高官に話し合いを求めるも拒否され射殺。祝賀会に出席していた各国の要人は慌てて王宮から脱出していった。



 この時和壬は、ひょんなことから知り合った王室の第一王女と一緒に、市街地の屋台でのんびりとお菓子を頬張っている最中だった。初めのうちは何が何だかわからず右往左往していたが、やがてラジオ放送から軍部が王室を排除して政権を握ったと知ると、王女を連れて真っ先に大使館に避難した。

 偶然とはいえ、王宮の外にいたことが幸いして難を乗れたのだ。


 邦人は全員無事大使館への避難を完了した。急いで本国に救援要請をした結果、近くの国から本国行きの航空機を手配して、6時間以内に安全な空港に迎えに来ることになった。


 だが、ここで問題になったのが和壬が連れてきた王女の存在である。


 初めのうちは軍事政権にばれないうちにこっそりと運び出す予定だったのだが、どういうわけか、軍に王女の居場所が知られてしまった。

 ソグデ軍の司令官は王女の身柄を要求。断れば邦人を皆殺しにすると伝えてきた。外務省ははじめのうち、自国民の安全を優先するために大人しく引渡そうと考えたが…………


「殺されるとわかっているのに身柄を引き渡すなんてもってのほかだ! 頼ってきた人を見捨てるなんて卑怯なことはできない!」


 と、千住院一澄は役人たちを一喝。王女は自国に亡命してもらうことになった。しかしこのままではソグデ軍と全面戦争に突入することになる。そこで一澄が考えたのが……




「和壬、すまない。王女の身代わりになってくれないか」

「カズミ……」

「親友としてこんなことを言うのはとてもつらいけれど、王女と邦人を無事に脱出させるには、ここで時間を稼がなくちゃならない。君にはその時間を…ここで少しでも稼いでほしい」

「う~ん……すこし、考えさせてほしいんだけど」

「悪いけど時間がない! 頼む、この通りだ!」



 結局、親友の頼みを断りきれなかった彼は、一人大使館に残ることとなった。



 邦人が空港までたどり着くまでにかかる時間はおよそ2時間半ほど。

 バスでの脱出なので、30分以上時間を稼げばひとまず安心だ。他の友人が次々にバスに乗り込む中、和壬は一人別室で変装をする。

 ウィッグをかぶり……化粧をし……服を着替えて……

 まさか人生の最後を女装して迎える羽目になるとは思いもよらなかった。幸い体格が非常に似ていたので、変装はかなり良く出来た。近くに行かないと見破るのは難しいだろう。



 そして同日19時30分。大使館にソグデ軍の攻撃が始まった。



「将軍、どうやら奴らは王女を見捨てて逃げたようです」

「ふん……薄情な奴らだ。だがおかげで手間が省けた。そうとわかればとっとと攻撃開始だ。王女はなるべく生かしたまま捕えろ」

「了解」



 先遣部隊35名が大使館に突入。対する王女の護衛の兵士5人は遮蔽物から反撃を開始した。


 やがて建物内をけたたましい銃声が支配した。


「さてと僕も……じゃなかった、私も黙ってるわけにはいかないな」


 和壬もまた、狙撃銃を構えて狙撃態勢に入る。一応彼にとって実戦は初めてだが、狙撃の腕は折り紙つきだった。



 パンッ


 乾いた音とともに発射された弾丸は、正面玄関から侵入した敵兵の腹部に命中。大口径の弾丸が、腹部の内臓をねじ切りながら背後へと貫通し、風穴を開けた。


「……あたったかな」


 人生初の戦果、そして人生で初めて人を殺めた。不思議と罪悪感はわいてこない。撃たなければ自分が撃たれるだけだ。

 それ以降も見事な腕前で次々と敵を撃ちぬく。恐ろしいことに無駄玉を一発たりとも撃ったりはしなかった。



 驚くことにソグデ軍第一波の攻撃は失敗した。対する大使館側は一人が左腕を撃たれて重傷を負った。



「うわあぁぁぁぁぁ」

「大丈夫か戦友! 今手当てするぞ!」

「いや、そんな暇はないかもな」



「先鋒部隊、被害が甚大なため退却!」

「役立たずめ! 窓や裏口からも突入させろ!」



 休む間もなく第二波が押し寄せる。

 四方八方から次々に現れる敵兵相手にさすがに押され始めた王女側は、一人また一人と戦闘不能に陥ってしまう。そして1時間の抵抗の末、和壬を守っていた兵士は全滅。和壬自身も銃弾が尽きてしまい、敵の銃を奪って抗戦するありさまだった。



「そこまでだ王女!銃を捨てろ!」

「………」


 だが最終的には武器を失って囲まれてしまう。彼は、もはやこれまでと悟った。


「……残念だったね。トリックだよ」

「何!? その声、王女じゃないぞ!? お前は一体!?」


 おもむろにウィッグを投げ捨てる。王女だと思っていた人物は、まさかの男だった。





「なん……だと……」

「いかがなさいますか司令官……」

「ああ、少々まずいことになったな」


 一方で後方から無線で指揮をしていた司令官は非常に困ったことになった。なにしろ、今回の攻撃で60人以上の損害を出していて、ただでさえ責任問題なのに

王女の偽物に騙されたとあれば……考えなくても末路は見えている。


「……砲兵支援を要請せよ。目標はあの大使館だ」

「なっ……! 司令官もしや!」

「いいか、この事は口外するなよ、さもなくば貴様の命はないものと思え」





「あ~っはっはっはっはっは! 実に愉快だよ! まんまと騙されたね!ざまーみやがれって!」


「お、おのれ! よくも我々をたばかったな!」


 怒りに燃えた兵士たちが、銃の引き金を引こうとしたまさにその時だった。




ドカアアアァァァァァン!!



『!?』



 建物を強い衝撃と轟音、それと爆風が襲う。


 大使館に撃ちこまれた自走砲の砲弾は大使館のエントランスを直撃し、その支えを木っ端みじんに打ち砕いた。

 建物の中にいた人は皆、訳が分からぬままがれきの下敷きとなる。


 そして、三日月和壬の体も、轟音と共に闇の中に押し込められてしまった。





 新聞記事


 8月13日(月)

 ソグデ王国にて発生した軍部のクーデター事件。

 国王一族をはじめ要人は軍により捕えられ、軍部の発表によれば数日中に民衆の前で公開処刑が行われるとされている。なお、当日建国記念行事に出席していた邦人は無事『全員』救助され、航空機で国際空港に向かっているとのことです。



詳細を書くとそれだけでラノベが一冊書けそうなほどの分量を大幅にはしょってるんだよねこれが。by竜王

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