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竜王の世紀  作者: 南木
第1章:グランフォード動乱
26/37

第15期:三か月前の課題

今期の一言:愛することは信じること いつかその胸に抱かれ眠った夢を見る


会議が終わり、その後始末が終わった後カズミは

一人で当てもなくアルムテン城の廊下をさまよっていた。


「う~ん………だめだ、落ち着かない。」


このところとにかく大小さまざまな問題が津波の如く押し寄せ、常にカズミの余裕を洗い去っていく。本来ならこうして無駄に歩き回っている時間すら無駄にできないのだが、心がわだかまっている今、冷静な判断を下せなかったら大変だ。どこか心を落ち着けられる場所はないものだろうかと、ひたすら彷徨う。



「竜王様、こちらにおいででしたか。」

「ん?……セルディアか。戻ってたんだね。」


中庭の前で呼び止められたカズミ。声がした方を振り向くと、

イスカに駐屯していたはずのセルディアの姿があった。


「はっ、先日イスカの治安維持が一段落致しましたので。竜王様には報告したいことがいろいろ御座いまして、会議が終わるまで執務室で待っていたのですが、一向にお戻りになられないものですから。」

「ああごめんごめん。ちょっと気分が落ち着かなくてね……。

急ぎじゃなかったら後でもいいかい?」

「承知いたしました。しかし竜王様…よほど精神的にお疲れのようですね。」

「あ、わかる?」

「どう見ても無理をなさってる顔にしか見えません。どうでしょう、よろしければ私的に落ち着ける場所をご案内いたしましょうか。私でよろしければ話し相手になりますから。」


(やはりそうか、リノアンにもたびたび指摘されてたからなぁ)


セルディアの後を歩きながら、自分が人に見えるくらい消耗していることに改めて気が付く。竜王の力のせいだろうか、体に異変をきたすことはなかったし、疲労もあまりない。しかしながら、(メンタル)はもともと人間の物である。過度なストレスは悪影響だろう。


(それにしても……)


セルディアの後ろを歩くと、なんとなく彼がいつもより頼もしく見える。それはもしかしたら、彼が自分よりもやや上のお兄さん的な存在に見えるからなのかもしれない。実際、彼は現在三十代後半であり、カズミとは十歳以上の歳の差がある。おまけに周囲の竜たちは年齢こそカズミよりはるかに上だが、精神年齢では同世代のような者が多い。ただ、それを差し引いても、彼の背中はなぜか言い表せない安心感がある。自分もあのような大人になりたいものだと思いながら歩いていると…



「竜王様、どうぞこちらに。」

「おお…!」


セルディアに案内されて扉を開けると、そこは城の屋上だった。目の前にはいつも部屋から見慣れた景色が広がっているが、違うのは360度すべて景色だということだ。すでに三か月以上この城で過ごしているカズミだが、ここに来る用事はなかったため今まで来たことはなかった。


「ここならばほとんど誰も来ませんので、

御一人になられたいときにはおすすめかと。」

「ありがとう…。やっぱり外は落ち着くよ。」


城壁の縁に身を預け、ふぅと一息つくカズミ。この青空を見上げていると、なんだか自分が悩んでいたことがバカバカしく思えてきた。そう、ストレスがたまっているならその都度発散すればいのだ。士官学校にいた時もたびたびそうしてきたのに、今では自分で自分に枷をかけすぎている気がする。


「時間があったらセルフカラオケでもしてみようかな、ふふふ…。」

「はぁ。」


凄い勢いで気が抜けて行っているカズミを見て、

セルディアは若干呆れていたとかなんとか。


「それはよろしいのですが、奥方の体調は如何なのでしょうか。」

「奥方……シズナさんのことか。まだ結婚してないんだけど。………そうなんだよね、一応命には別条はないし、回復のために寝ているだけなんだけど…。」

「心配はしていないのですか?」

「してるに決まってるさ。今はそっとしておいてあげたくて。」

「ふ~む……」


ここで突然セルディアはシズナの話題を振ってきた。


「竜王様とシズナ様は、三か月の婚約期限を設けたと聞いております。」

「その通りだよ。」

「私の勘違いでなければ…そろそろ三か月を過ぎると思うのですが、ご結婚はなさらないので?」

「………そう、今まさにそれで悩んでるんだよ。僕としては…シズナさんと結婚できるならこれほど嬉しいことはないし、シズナさんだって受け入れてくれるはずだ。」

「結構ですね。聞いている限りでは悩むことはないように思われますが?」

「…怖いんだ。」

「怖い…ですか?」

「そう。結婚したら…なんかそこで終わっちゃう気がして…。」

「どうやらカズミ様は、

何か恋愛に対してトラウマの様なものをお持ちなのでしょうか?」

「そうなんだと思う。何しろ前世では三回も失恋してるから……。」


三か月という期間はあまりにも短すぎた、カズミはそう思っていた。あの時、シズナと出会ったときは竜王を取り巻く環境がここまで劇的に変化するとは思わなかった。シズナとも日々の生活を通してふれあっていければいいと思っていた。

ところがだ、休む間もなく次から次に転がり込む課題の数々にカズミは振り回され、シズナと中を深める時間は殆ど確保できなかった。起死回生とばかりに挑んだ先日のピクニックも、いいところで中断する羽目になったばかりではなく、シズナの心身に多大な負担をかける結果となり果てた。もしかしたら、この先も構ってあげられない日々が続く可能性もある。そうなったとき……彼女の期待が絶望に代わってしまう日が来るかもしれない…。それが、怖かった。



「まったく、竜王様らしくないですね。」

「え、僕らしくない?」

「失礼な言い方ですが、竜王様の強みは何があっても最終的には前向きで楽観的、苦労はするときになってからすればいいみたいに考える傾向がありますからね。」

「……聞いてるとなんかバカっぽく思えてくるんだけど。」

「いいではないですか。男はみんなバカな生き物なのですよ。それは人類も竜族も魔族も神族も関係ありません。カズミ様はシズナ様の前であまりにも完璧であろうという気持ちが強すぎるのかもしれません。ですがシズナ様の求めているものは……そんなものではないと思いますよ。」

「セルディア……」


セルディアの言葉で、カズミは何かを気付かされたようだ。確かにセルディアの言う通り、カズミはシズナのこととなると自分に対して厳しくなりすぎる。本当に親しい仲ならば、取り繕う必要なんてないんだから。



「っとまあ、恋人を寝取られた男がこんなこと言って何にもなりませんがね!あっはっはっはっは!」

「ちょっ!?せっかくいい話だったのになんか台無しだよ!っていうか、ええっ!?寝取られた!?冗談でしょ、君どう見ても凄いモテるタイプだよね!?」

「何を仰るんですか、

私がこの国にいるのは寝取った野郎に復讐するためですよ。」

「それは聞きたくなかったなー!」

「ま、本当か冗談かは秘密な話はここまでにしておきましょう。

私は仕事に戻りますゆえ、また後程…」

「結局どっちなのーー!?」


最後にセルディアはいい雰囲気をわざとぶち壊して戻っていったしまった。

真面目で堅物っぽい彼の、意外な一面を見た気がする。


「もしかしたらセルディアも恋愛でいろいろ苦労してきたのかもしれないな……。

さ、僕もいつまでも弱音を吐いてはいられない!」





その日の夕方、カズミの私室にて。


「どう、シズナさんの体調は?」

「あっ!竜王様!お姫様はまだ寝てますよ。

顔色は結構よくなってきてますけど。」

「そっか、それはよかった。」


部屋に戻ると、木竜のクレアがシズナの傍で付きっきりで見ていてくれた。木竜の医師の見立てでは術の使い過ぎで術力を使い果たしてしまったらしい。休めばそのうち回復はするが、回復するまでの間体が弱っているため別の病気にかかりやすいとのこと。


「今日はもう大丈夫、あとは僕が全部やるから君は戻ってもいいよ。」

「はいっ!かしこまりましたーっ!」

「ちょっ、クレア……し~――っ」

「あう…すいましゅん…」


寝ているシズナをびっくりさせては困ると思い、あわてて人差し指を口の前で立てる。クレアはしまったといった風に手で口を押え、赤面しながらその場から立ち去った。


クレアが出て行ったのと入れ替わりでリノアンが入出する。

手にトレーを持ち、その上には木竜特製の薬膳料理が乗っかっていた。


「失礼いたします竜王様。」

「ああリノアン、持ってきてくれたんだね。ありがとう。……これは、僕がここに来たときに最初に作ったかぼちゃのミートグラタンか。良く出来てるじゃないか、だれが作ったんだろう?」

「私が…あの時の記憶を参考に作ってみました。

シズナ様のお口に合えばよろしいのですが。」


薬膳料理と一緒に、小鉢に入っているのはあの時カズミがシズナに作ってあげた料理。それをリノアンは記憶を頼りに何回も試行錯誤して作ったモノらしい。しかも皿にはどうやら火竜術が掛かっているようで、保温効果もあるらしい。


「それと、こちらは先日カズミ様から教わったばかりのジュースです。」

「おっ…さっそく作ってみてくれたんだ。気が利くね。」

「書記官として当然のことをしたまでで御座います。」


(最近そのフレーズよく使うな)


近頃リノアンは、カズミがほめるたびに「書記官として当然」と返してくる。どうやら、カズミに自分は優秀な書記官であり、褒められるまでもないとアピールしているらしい。ただ、別にうれしくないわけではないらしく、リノアン自身は気が付いていないが褒めてあげると細く長い尻尾の先端をふりふりする癖がある。これを指摘して恥を掻かせるのも可哀そうだし、リノアンの気持ちが分かりやすいので,

あえてそのことは言わないようにしているカズミであった。


それと、リノアンが作ってきてくれたジュースというのは、お湯で若干薄めたはちみつに新鮮なレモンの皮を浸して温めたもので、カズミの故郷の民間療法として伝わっていた子供向けの薬湯である。飲めば体が温まるので、結果として体の免疫力が上がるのだ。



「書記官として当然、か。リノアンがいてくれて本当に良かったよ。」

「ありがたき幸せ………竜王様。やはりどうあってもお変わりありませんか。」

「どうあってもって、何が?」

「本当に……シズナ様とご結婚なさるのですか?

竜王様なのに…貴族とはいえ人類と……。」

「そのことか。」


ただ、やはりリノアンはまだシズナとの関係に否定的だ。

こういうところはとても頑固で、なかなか自分の考えを曲げようとしない。


「もちろんだよ。約束…だからね。」

「ですが竜王様、人類は私たち竜族に比べてあまりにも短命です。特に竜王様はこの先何千年どころか万単位の歳を生きる可能性もあるのです。例え……シズナ様が、竜王様とお幸せになれたとしても…その期間はあまりにも短すぎます。それにですよ、竜族の中にはシズナ様よりも優秀で魅力的な女性も大勢います!たとえ約束だからと言えども……もう少し慎重になられた方が!」

「……ねえ、リノアン。確かに竜の中にはシズナさんよりも優れた竜は大勢いるだろうし、綺麗な人だっているかもしれない。でもね、僕のことを一番愛してくれるのは…シズナさんなんだ。」

「……!」

「リノアンにだって、好きな人はいるよね。」

「は…はい、私にも…意中の方はおります。」

「その人には、どんな人よりも尽くしたい、そう思わないかい?」

「はい、思います!」

「だったら分かるはずだ、今の僕の気持ちが…ね。」

「あ………竜王…様。」


そこまで言ってようやく理解してくれたのか、リノアンはしゅんと縮こまり、

やがて悲しい顔をしながらその場を立った。


「分かりました…竜王様のお気持ちがそこまで固まっておいででしたらもう私からは何も言うことは御座いません。では、私は執務に戻りますので、何かあればすぐにお呼び下さいませ。」

「リノアン………本当に、ありがとう。」

「…………失礼いたします。」


リノアンは静かに部屋から退出した。


「リノアン、ひょっとすると僕のことが好きなのかな?あー、いやいやいや…さすがにそれは自惚れすぎだな。それにこう言ってはなんだけど、今この時期に竜をお嫁さんに迎えると竜族間で派閥争いが始まるかもしれないし、きっと竜王の権力を笠によくないことをしでかす奴も出るはずだ。竜族はまだ種族間の隔たりが大きい…いずれは何とかして解決してしまわないと。」


「う………ん、カズミ…様?」

「起きた?ふふ、おはようシズナさん。良い夢見られた?」


ようやくシズナが目を覚ました。ベッドからガバッと身を起こすと、

赤ら顔で慌てふためいてカズミに謝罪の言葉を述べる。


「あっ…!お、おはようございます!!私ったらまたカズミ様にご迷惑を――!」

「迷惑なんかじゃないよ。シズナさんは疲れてるだけなんだ、もっとゆっくり休んでいた方がいいよ。お腹はすいてない?ここにリノアンが作ってきてくれた食事があるから、よかったら食べなよ。」

「リノアン様が…」


くううぅぅぅぅ――


鼻腔に漂う焼いた小麦の匂いと甘い蜂蜜とレモンの香り。

彼女の胃袋が主を差し置いて歓喜の声を上げたようだ。


「あ……ぁぅ…」

「くす、早く体力をつけて元気にならないとね。」

「は、はいっ!喜んでいただきます!」


食欲はあるみたいなので、カズミは一安心した。

トレイごとシズナの方に渡――そうとしたが、


「……あ、そうだ。」

「カズミ様?あ、あの……?」


何を思ったかカズミはトレーを自分で持ったまま、シズナの真横に腰掛けた。


「はいシズナさん、あ~ん♪」

「えぇっ!?あの、その…カズミ様が、食べさせてくれる…ということですか?」

「うん。嫌ならやめるよ?」

「嫌だなんて、とんでもありません!私…その、嬉しくて……」

「わかったわかった、嫌じゃないならほら、口あけて。」

「あ……あ~ん……」


スプーンでミートグラタンを一匙掬い、シズナの口の中にゆっくり乗せるように入れる。恥ずかしいことの連続で顔が大火災を起こして真っ赤っかなシズナを見ていると、カズミまでなんとなく照れくさくなって緊張してしまう。


(初めてだけど、上手く入ったかな?)


シズナの口が、スプーンから食事をゆっくり絡め捕り、口の中で咀嚼する。


「おいしかった?」

「はい……とても。おいしすぎて、夢のようです。いえ、夢でも構いません…。」

「よかった、喜んでくれて。ほら、涙出てるよ。」

「え……」


カズミは左手の親指で、シズナの目から流れ出した滴を軽く拭う。


「どうしてでしょう、こんなに嬉しいのに…

こんなに幸せなのに!どうして涙が…」

「いやー、泣くほど嬉しいなんて、むしろ僕の方がありがとうって言いたいよ。

恋人に『あ~ん』してあげるの、前世でずっと憧れてたんだよね。さ、もう一口どう。」

「あ~ん♪……はふっ、こちらの薬膳も、味が工夫されてますね♪ところでカズミ様……その、あ~んするのに憧れていたとおっしゃいましたけど前にいた世界ではカズミ様に恋人や意中の方はいらっしゃったのですか?」

「そうだね、ちょうどいい機会だからシズナさんにも話しておこうか。」


カズミは、スプーンで口に移す作業を継続しつつ、どこか遠い表情で話し始めた。


「僕は贄浦の士官学校予科高等部で三年間学校生活を送る間、一年ごとに別の恋をした。でも残念ながら、それらは全部失恋に終わってしまったよ。」

「そうだったのですか…。その方たちも竜を見る目がなかったのですね。あ……でも、その方々がカズミ様を振ってくれたおかげで、私とカズミ様が結ばれるのですから、感謝しなくては――あ~ん♪」

「こらこら、そーゆーことは心の中にしまっておいてほしいな(汗」

「こ、これは失礼いたしました!」

「まあいいや続けよう。最初の女性は一年上の先輩で、才色兼備で家柄も高尚な高嶺の花。勇気を出して告白しようかと思ったんだけど、僕の親友もその人のことが好きだと言ってきてね……結局告白の機会を彼に譲ってあげることになって、親友はその子と恋人同士になったわけだ。次に、同級生にみんなのアイドル的な存在だった人気の美少女がいて、実習訓練で助けてあげたのをきっかけに仲良くなれたから、思い切って告白したんだ。けれどもその子にはすでに意中の人がいたため、あえなく玉砕。その後、その子は意中の人と結ばれて、めでたしめでたしで終わり。最後に、後輩の新入生に大人しめだけど献身的な子がいて、先輩として勉強を教えてあげるうちに仲良くなって、なんとその子の方から告白してきて晴れて恋仲になったんだ。しかしその後その子をある友達に紹介したら、その子は徐々にその友達の方に情が移って行っちゃってあっという間にその子とは破局、別の人に鞍替えして終わりってわけさ。さすがにこの時はすごい傷ついて長い期間落ち込んだけど…ま、今では青春のいい思い出の一つだね。」


こうして思うと当時はとてもつらかったのに、今では学生時代の思い出の一つに過ぎない。高々数年前の話なのに、まるで大昔の様に感じるのは不思議だった。そして何よりも、この世界に来てから過去の自分がほとんど他人事にも思えてくる。



ギュッ


「え…シズナさん?」

「大丈夫ですよ、カズミ様。私はずっとカズミ様の傍におります。私は…カズミ様を幸せにできる保証はないかもしれません。ですが…私が絶対幸せになれる自信があります!」

「あはは、なんだそりゃ!そんな告白初めて聞いたよ!でも…そう言ってくれて嬉しいよ。シズナさんさえ笑顔でいてくれれば僕はそれだけで……。ね、シズナさん三か月前に言ったこと、覚えてるよね。」

「はい!忘れるはずがありません!」

「ならもう何も言うことはないよ。……結婚しよう、シズナさん。式はいつできるかわからないけど、情勢が落ち着いたら僕ができる最大限の儀式をして、皆に見せつけてやろう。けれども、そんなこと関係なしに、今日から僕たちは……夫婦だ。」

「…………っ♪」


正式に結婚する。カズミの口からその言葉が出るのをどれほど待ち望んだことか。

シズナはもう離さないとばかりに、カズミの体をあらんかぎりの力で抱きしめ、

涙でくしゃくしゃになった笑顔をカズミの胸板に押し付けた。








翌日、カズミから直々にアルムテンのすべての住人に向けてシズナを正式な妃に迎え入れることを宣言した。中にはまだ反対意見も少なからずあったが、意外なことに族長たちはすべて賛同してくれたおかげで、大規模な混乱はなかった。どうやら、水面下でシズナが全力で根回ししていたらしく、頑固で保守的な地竜や、竜至上主義の色が強い雷竜までが賛成に加わったのは驚くべきことだ。それと同時に、結婚式はアルムテンの情勢が一段落してからということも告げ、アルムテンの危機脱出と繁栄に全力で取り組むことを宣言した。


竜王が人間と結婚するということはすなわち、竜と人間を対等に扱うという証でもあった。もはや竜族が完全上位の時代はとうの昔に終わった。これからはどんな種族とも同じ文明の下で生きるのだ。その道のりは長く険しく、一見すると無謀のようにも思えるかもしれないが、この問題を解決せずして世界征服などあり得ない。



竜王様万歳!お妃様万歳!アルムテンの未来に万歳!




登場人物評


セルディア ハイランダー27Lv

36歳 男性 人間(シエナ人)

【地位】アルムテン軍司令官

【武器】勇者の槍

【好き】演習盤(チェスのようなボードゲーム)

【嫌い】約束破り

【ステータス】力:23 魔力:1技:19 敏捷:17 防御:16

退魔力:14 幸運:9

【適正】統率:A 武勇:B 政治:C 知識:D 魅力:C

【資質】火 氷 風 土 木 海 雷 神 暗

    ◎ ◎ ☆ ○ ― ― ― ― ―

【特殊能力】鼓舞 攻勢 攻城 山岳戦 森林戦 参謀


 元シエナ王国に所属していた軍人。かつては大陸にその名をとどろかせた平民出身の英雄で、数年前に魔族の一派がイスカに侵攻した際に槍を振るってこれを撃退し頭角を現す。槍の腕前だけでなく戦術眼も鋭かったが、生まれが平民だったせいで貴族から疎まれ、最終的には無実の罪を着せられ全てをはく奪されてしまう。冤罪で処刑されそうになったところを親友の助けで脱出、その後当てもなく旅を続けているうちに風竜族長リヴァルに拾われ、アルムテンに移籍した。主にアルムテンの兵士の訓練を担当し、戦闘経験の少ない兵士たちに猛特訓を課して精鋭を育成。

特にアルムテンの地形を生かした山岳戦部隊を中心に軍の制度を整えている。その手腕がカズミの目に留まるのにさほど時間を要さず、軍の運用と言えば彼に真っ先に頼るなどその信頼はとても厚い。性格は堅実且つ誠実、特に職務中は非常にまじめ。だが私生活では一転、無駄に陽気でまるで子供の様だと言われることも。



資質:セルディアがアルムテンに連れてこられたのは、当初は風竜の竜術士になってもらうつもりだったかららしい。確かに竜の育成だけならば魔力の強さは関係ないのだが、やはり本人は術使いが性に合っていないらしく竜を含めたアルムテンの兵士育成係という位置づけに落ち着いた。


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