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竜王の世紀  作者: 南木
第1章:グランフォード動乱
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第10期:指導者はつらいよ

今期の一言:戦争は、始めたいときに始められるが、

      やめたいときにはやめられない。 -ヘミングウェイ


「二人とも、この状況を一からきちんと説明してもらおうか。」


『はい……』


真顔ながらもやや怒りを含んだ声色のカズミの前で、火竜族長サーヤと雷竜族長レーダーがボロボロの身体のまま、申し訳なさそうな言葉でその場に立っている。

カズミの後ろに佇む書記官リノアンも氷竜族長ウルチも、若干気の毒そうな顔で詰問される二人を見ていた。


周囲には所々、隕石が落ちたようなクレーターが空き,黒煙を上げてくすぶる建物や粉砕された瓦礫が転がっている。元々ここはそこそこの規模がある町だったのだが、今では見る影もない。住んでいた住民は殆ど助からなかっただろう。






話は再びリムレット郊外の荒野の戦いに戻る。


サーヤとレーダーが戦場に到着すると、サーヤは同胞の火竜を倒さんと襲い掛かる

人間たちを超強力な火炎攻撃で一方的に撃破すると、それ以上はあまり攻撃せず逆に攻撃を続行しようとしていた火竜たちを止めに向かった。



「あなたたち!今すぐ戦いをやめなさいませ!私に何も言わず戦争を開始するなんて言語道断ですわ!わかりましたら、すぐに私のもとに集まりなさいな!」


《あの声は…姉御(サーヤさま)!》

《や、やべぇ!すぐに戻るぞ!でないと思い切りぶたれるぞ!》


サーヤは広い戦場を飛び回り、戦いをつづける竜たちに戦いを今すぐやめるように言って回る。彼女の声はたちまち竜たちの耳に入り、あわてた竜たちはすぐに攻撃を中断。サーヤのもとに火竜も風竜もどんどんあつまってくる。竜たちは人間に後ろを見せることになって危険かと思うかもしれないが、イスカ守備隊の冒険者や傭兵たちは誰もがボロボロの状態であり、とても追撃する余裕はなかった。


ところが、サーヤの指示に従わない命知らずな奴もいた。



「あら?まだ攻撃をしているのが……っ!!あれはレーダーさん!?ちょっと待ちなさいな!私たちは仲間達を止めに来ただけですのに族長まで攻撃に参加するだなんて…!は、はやくとめませんと!」


そう、他でもない雷竜族長レーダー。

生粋の戦闘教である雷竜たちの中でも、飛びぬけて好戦的なこの族長は

サーヤとは逆に自ら戦闘に参加して殺りくを開始していた。



《オラオラオラー!片っ端から消し飛ばしてやんよ!》


《レーダー族長!》

《おう!エリカ!無事だったか!》

《いや……あまり無事じゃねぇんスけど》

《生きてりゃ無事だろ。損くらいの傷は唾つけときゃ治る。》

《それよりも族長…あたしのせいでワルス達が!》

《おうよ!かたき討ちだ!とりあえずこの辺めぼしいもの無さそうだから

あそこに見える街でもぶっ壊そーぜ!続けー!》



《レーダーさーーーーーん!!止まりなさい!!

それ以上の破壊行為は許しませんわ!》



あたりに動く者が見えなくなるや否や、リムレットの町に向かうレーダー。そして、破壊行為を止めるべく後を追うサーヤ。二人の目的は別なのだが、地上から見ている者にはそんなことは分からない。


「大変だ!竜たちが町に向かってゆくではないか!

こうしてはいられない、すぐに戻らなければ……!」

「お……おい!ライゼン!ちょっと待っ…!」


雷竜数体と巨大な火竜が町に向かっていくのを見て、イスカの将軍であるライゼンは生きた心地がしなかった。町には彼や戦っている者たちの家族がいるのだ。家族たちに無事でいてほしいからこそこうして自分たちは、荒れた地で命がけで戦っているのだ。このまま町が攻撃されたら……


そう思ったライゼンは、持っていた道具入れから術道具をひとつ取り出した。


『転移磁石』


これは二つで一組の鉄鉱石を加工した術道具で、一方をなるべく開けた場所に設置し、もう一方は自身が所持する。この術道具に術を込めると、瞬間的においてきた方がある場所に転移することが出来る。その際の誤差は2メートル以内となかなか優秀だが、狭いところや密閉された空間に転移してしまうと思わぬ事故を引き起こす恐れがあるため、基本は屋外に設置することになる。また、ある程度術を使える人間が使用者化あるいは知人にいることが最低条件であり、道具の値段も決して安くはないが、非常に便利な道具であることは間違いない。


なお、磁石の寿命は物によってまちまち。

一回だけの使用で壊れることはあまりないが、

何回も使っていざと言うときに不発と言うことも起りうるため、要注意。



この術道具を使って、ライゼンは一瞬でリムレットの町に帰還する。

町にいた守備隊はそのほとんどが郊外に行ってしまっているため、

残っているのはほんの数十名程度しかいない。


「守らねば……!」


彼は決死の覚悟で城壁の上へと歩みを進めた。




だが、いくら覚悟や勇気があろうとも一人の人間にできることには限界がある。



「貴様ら竜に、この地は渡さぬ!!」



ライゼンの叫びは、次の瞬間……雷の轟音にかき消され、

彼のいた場所は城壁もろとも木っ端みじんに砕け散った。






前にも述べたかも知れないが、竜の体を構成する部位はどれもこれも人間にとって貴重な高級素材だ。鱗で鎧を作ればほとんどの武器による攻撃はもちろん、術による攻撃ですらも軽々弾く防御力。牙や角は伝説の武器の素材となり、削ることで万病に効く薬の元にもなる。これだけすべての部位が無駄なく活用できる生き物は他にはクジラくらいだろう。当然人間が簡単に勝てる相手ではないが、討伐できればその恩恵は凄まじい。クジラが一頭取れただけで三つの漁村が一気に潤うのだ、竜を狩れたのならその経済効果は計り知れない。


アルムテンは竜を崇拝する人々が、たまに身だしなみを整える際に零れ落ちる鱗や髭、けがなどでかけてしまった角や牙を人間が自由にすることが許されている。

竜にとっては鱗や抜け落ちた歯にはあまり価値はない。しかしながら竜を崇拝する民は、竜が寿命で亡くなったとしてもその死骸から素材を剥ぐということをしない。当然だ。それは崇拝する竜への侮辱である。

(ただ、竜自身が自分の死骸を有効利用してくれと願った場合は例外であるが)

そのため、冒険者たちが竜の体をバラバラにする行為を非常に嫌う。

そして竜たちも、自分たちの同胞たちを嬉々として解体する人々を憎んでいた。


考えてほしい。いくら有用だからと言え、人間の死体をバラバラに解体し

肉は残らず喰らい骨や皮は道具として加工する者のことをあなたはどう思う?



《今までの貴様らの所業を悔やむ時間すら与えてやらんもんね!》


雷竜族長レーダーの放つ雷光は、直撃した個所の物を跡形もなく消し飛ばす。竜の襲撃に逃げ惑う住民たちも何十人、この攻撃に巻き込まれて死亡。その威力は人間の術士でも限界まで力を高めてようやく出せるくらい、それを一度に十数発もさも当たり前に放つのだから始末が悪い。


このままではリムレットの町は数分でこの世から消滅してしまうだろう。

だが、その暴挙を止めるべく火竜族長のサーヤが追い付いてきた。



《おやめなさいレーダーさん!これ以上の破壊行為は無意味ですわ!》

《知ったことか!こいつらは……今まで俺たちの同胞を何人も殺してきたんだぜ!

それをお前は見逃してやれってのか!?ふざけんな!》

《確かにイスカの冒険者どもの残虐行為は私も許せませんわ。現に同胞の火竜や風竜たちの亡骸を解体していた無礼者たちには、苦しみすら与えず消し炭になっていただきました。ですが……ここにすむ者たちは戦闘要員ではありません!戦う相手ではないのです!それでも破壊行為をやめないのでしたら、私があなたを止めましょう》

《んだとコラ!サーヤてめーいつから人間の味方になりやがった!邪魔するってんならお前ごと纏めて消し飛ばすまでだ!》



なんと、この場で滅多に見られない族長同士のガチンコバトルが勃発。サーヤの炎とレーダーの雷がリムレット上空で激しくぶつかり合う。町を守ろうとしているはずのサーヤだが、火竜特有の激しい気性故激しい戦いになると周りが完全に見えなくなってしまう。


二体の竜が放つ超高威力の攻撃は流れ弾となってリムレット各地に容赦なく降り注ぐ。熱風は建物を焼き、電撃は地面を抉り、衝撃波はがれきを砕いた。人間に命中すれば当然一発でお陀仏だろう。



双方とも戦闘力が何よりもステータスとなる火竜族と雷竜族の族長だけあってお互い一歩も引かない大激戦を繰り広げていたが、数分もすると火竜族長サーヤの方が押され始めてきた。そもそも火竜と雷竜では基礎的な部分で雷竜が大きく勝っているうえに、レーダーは戦闘することが生きがいのような竜だ。両者の能力的な差が表れ始めるとサーヤはとてもつらかった。



《はーーーーーーっはははははは!!サーヤてめーやっぱ弱すぎんよ!》

《く、屈辱ですわ…この私が手も足も出ないだなんて…》



が、その時思いもよらぬ攻撃が飛んでくる。




シュバアアアアァァァァァァァァッ!!!!!!



《げふーーーーーーっ!?》



漆黒色のビームがレーダーを直撃した!

ダメージを受けたショックでレーダーはたまらず人型に戻る。


《こ、この光線はまさか…竜王様!うっ…寒気がしますわ……》



なぜかその場の気温が一気に下がったような感覚に眉を顰めながらも、

サーヤはビームが飛んできた方向を見た。


ぎりぎり肉眼でとらえられるくらいの距離に、四足で大地に立つ青白い竜がいた。

そしてその竜の頭の上に人影が見えた。


「二人とも、そこまでだ。」


ようやく、カズミが戦場に到着したのだった。



そして冒頭の部分に戻る。









「なるほど、よくわかったよ。…二人とも、僕は前話したよね。

なんで竜だけで攻撃しないのかって。竜だけで攻撃したからこうなったんだ。」

「承知していますわ。」

「まあ…サーヤは攻撃に参加したとはいえ竜たちを止めるために

必死に動いてくれたんだ。今回の件は不問としよう。

だけどこれからはきちんと周囲を確認しながら戦闘すること。

もし周りに味方の兵がいたら今頃大参事だったんだからね。」

「………そう、ですわね。」


サーヤは改めて自分のしでかしたことにぞっとした。

もし自分の部下の火竜であれ周囲に味方がいたら、確実に巻き込んでいただろう。


「だけどよ竜王様!俺は……この国の奴らをゆるせねぇんだ!奴らのせいでどれだけの竜が狩られたか!」

「その気持ちはよくわかる。

でも君は族長なんだから自制の気持ちを持たないとね。」

「じせい…?」

「ダメだこりゃ。」


これは後で再教育の必要があるなと感じたカズミであった。


「まあいいや、過ぎたことは仕方ない。それに罰則とかを設けてなかった僕も悪いからね。みんなばかりは責められないよ。でもね…二人とも。改めて周りをよーく見て今回の被害について自分たちなりにいろいろと考えてみるといいと思うよ。」

『…………』



近年起った戦は数あれど、国一つが丸々消えてしまう事態は前代未聞と言ってよい。現地住民は半数以上が亡くなってしまったのはカズミにとって頭の痛い問題だった。今後の外交に影響が出ることも考えられるが、それよりも現在アルムテンの傘下にあるグレーシェンやエオメルなどとの友好にヒビが入りかねないし、そうでなくても竜が何人か戦死しているのでアルムテンの実力を疑われることになるだろう。



「さて、ウルチ。君も急いでついて来てくれてありがとう。

大変だったでしょう。」

「ええ…かつてない全速力でしたが、同胞の危機でしたし…なによりも竜王様たってのご希望でしたので。もう少し速ければこれほどまでの損害が出なかったかもしれないと思われるのが悔やまれるところですがっ。」



竜族の中でも飛翔を苦手とする氷竜たちを強行軍で無理やり連れてきたのには訳がある。先ほどサーヤや他の竜たちが感じた気温の低下は、ウルチをはじめとする氷竜たちの術のせいで、正確に言うと気温が下がったのは気のせいだ。これは氷竜たちの使う強力な鎮静の術で、範囲内にいる者のモチベーションを無差別に急降下させ、戦闘意欲を失わせるのである。この術は氷竜単体では使用できず、カズミの力を媒介にすることで初めて発動が可能だ。


「でも…上手くいったね。同調術。」

「しかも事例とは真逆の術でしたから、上手く出来るかわかりませんでしたが。」


少し前、昔の竜王について書かれた資料を漁っているときに偶然見つけた事例によると、かつて竜王は火竜の獰猛な心を術で味方の竜に付与し、戦闘意欲を強引に掻き立てたという。ならば逆もできるのではないかと思い、氷竜との同調術により

気が立った竜たちにブレーキをかけることを思いついたカズミは、実際この場でウルチと力を合わせて見事成功させた。


もっとも、カズミ自身この力が元々どういった作用の物なのかを完全に把握できていないのだが、どうやら竜王の力は空間に干渉できるものがあるようだということは分かってきた。


「調節が難しいのが欠点ですが、選択肢として残しておく分には問題ないかと。」

「これで敵味方の区別が出来ればもっといいんだけどね。練習次第かな?

さ、あとはリヴァルがセルディアたちを連れてきてくれるまで待つだけか。ウルチはレーダーとサーヤを連れて先に戻っててくれないかい。ルントウたちへの報告も含めてね。」

「畏まりました。」

「ふう、まったく…考えなきゃならないことが山積みだ。」

「ご心中お察し申し上げます。」

「なんでだろう、

ウルチにねぎらわれてもなんだか労われた気がしないんだけど…。」

「……おそらく術のせいかと。」

「ところでこの術どうやって解除するの?」

「それは………」

「………」

「…」

「………」

「…す、少し離れれば術力の連携が消えるでしょうから!

私はこれで失礼いたします!」


なお、術を解く方法はまだわからないようだ。









数日後、リヴァルがセルディアを伴ってイスカに到着したのを確認したカズミは、

リノアンたちを連れてアルムテンに戻ってきた。竜王自身、飛翔能力が風竜に次いで高いため飛行して移動する分には苦ではないが、何か起こるたびにいちいちあっちこっち飛び回っていてはとても指導者としての仕事を集中して行うことが出来ない。


「明日は…またお葬式だ。しかも竜のお葬式か…精神的に堪えるなぁ。

それにシエナの方ではルティック領内でシエナ軍と反シエナ軍が戦争を始めたせいで、そろそろ余波が何かしらうちの方に来そうだし。」


腕を組みながら黒い鱗に覆われた尻尾をウネウネ揺らし、ブツブツと考え事をしながら廊下を歩くカズミと二歩下がって従う書記官リノアン。


「それ以外の明日の予定は、

新人部隊長の訓練計画の策定と火竜の居住地区再整備が…」

「無理無理。延期延期。今はそれどころじゃないよまったく。」

「……なかなか予定表のとおりに行きませんね。ルントシュテット長老やベッケンバウアー族長がなんと仰るか……。」


そうはいっても時間は有限なのだから、できることには限りがある。今は敗戦の痛みをどこまで和らげられるかが一番の課題だ。


今回生き残った竜たちと族長二人は特に責任は問わないことにした。

カズミ自身あらかじめしてはいけないという指示を出していなかったというのもあるが、なにより彼らには将来的にはカズミの指示がなくても自分の最善となる行動を自分たちで判断して実行してほしいのだ。そのため、このようなことが起きただけで自律性が失われるのは困る。かといって調子に乗りやすい雷竜と火竜なので、反省してもらわなくても困る。



「あーやだやだ、なんか巡り巡って結局自分が一番悪いんじゃないかって思っちゃうよ。どうしたカズミっ!その頭の二本の角は飾かっ!」

「竜王様…その、あまりご自身をお責めにならない方が…。

何か気分転換などなされてはいかがでしょうか。」

「気分転換か……。」


確かに、このところ働きづめでロクに心に余裕を持てなかった。少し頭を冷やす期間も必要かもしれない。前世でも、日々の訓練で心身ともに疲れ果てた時にはよく気分転換などしたものだ。それも普段行わないようなことを、思いつきでやったりしていた。美術館に行ってみるとか神社にお参りしてみるとか。新しい発見は脳にとってこれ以上ないスパイスとなる。



「ま、それは追々ね…。

今日はもう気分があまり乗らないから休むことにするよ。」

「承知いたしました。」


今はこれ以上もんもんと考え続けてもまったくの無駄だろうと判断したカズミは

自室に戻って休むことにした。



コンコン…



「ただいまー。」

「あ、おかえりなさいませカズミ様!」


自分の部屋のドアをノックして開くと、すぐに笑顔のシズナがトコトコ駆け寄ってきてくれた。


「お疲れですか?今お飲み物とお菓子をご用意させていただきますね。ふふっ……なんだかお顔の色がすぐれませんよ、ご無理をなさらないでくださいね。」

「ん、そっか…。じゃあお言葉に甘えて。」


シズナにまで顔色が悪いと言われてしまうと、いかに自分が疲れているのかわかるというものだ。シズナがお茶とお茶菓子を用意している間にカズミは窓辺に設置された丸椅子に腰かける。ここから見える山の景色は何度見ても雄大で飽きさせない…。別に故郷の景色に似ているというわけではないが、はるか昔の竜王もこの景色を毎日眺めていたのかと思うとなんだか感慨深いものがある。


ふと、机の上に目をやると先ほどまでシズナが口をつけていたと思われるティーカップと、なぜかA4サイズくらいの紙がおいてある。紙には炭片を使った風景画が映し出されていた。


「へぇ~、上手いなぁ。」


白黒とはいえ、山がある風景がやさしく書き写され、

まるで本当に景色を見ているような錯覚さえ起きる。


だが…


「ん?だけどこの絵は…ここから見える景色じゃないね。んん~…?」


よく見ると、書かれている絵は窓から見える景色とは違う。窓から見えるアルムテンの山々は頂上が尖った稜線が続いているのに対し、描かれている景色はそれほど高くない山が緩やかな稜線を描いている。それに、窓から見える地面の景色はアルムテンの街並みのはずだが、描かれているのは……湖?それに花畑らしきヵ所もある。



「カズミ様、お茶が入りました……ってあら?カズミ様?」

「ごめんシズナさん、勝手に絵を見ちゃって。」

「お、お恥ずかしい…下手な絵をお見せしてしまって。」

「下手なものか。美術館に飾ってもいいレベルだよ!なんなら

絵具まで用意してあげてもいいから色を付けてほしいくらいさ!」


そういえばこの世界の絵の具はどうなっているのだろうと考えたカズミだったが、

アルムテンの城にもいくつか絵が飾ってあったので、絵具くらいなら簡単に手に入りそうだ。


「でも、この絵ってここから見える風景じゃないよね。何を見て描いたの?」

「実は…この風景は、私の故郷の風景です。」

「故郷!」


カズミはそれを聞いて大きなショックを受けた。忘れていたわけではないが、シズナは今この地に軟禁されているのだ。この地に連れてこられてからもう何か月もたつはずだ、望郷の念…いってみればホームシックにかかってもおかしくはない。

この鮮明な風景画が、シズナの望郷の思いが強くにじみ出たものだというのなら

きっとシズナは顔には出さなくてもとてもつらい思いを抱えてしまっているに違いない。仮に婚約者がそんな悲しい思いをしているというのは耐えられない。



「よし…、決めた!」

「へ?何をですか?」


カズミは急に立ち上がって、久々に輝かんばかりの笑顔を見せた。


「行こう。シズナさんの故郷へ!」

「え……えぇっ!?」

「さあそうと決まれば予定を立てなきゃ♪天気の予定をレーダーに聞いて、

お弁当とか用意しておかなきゃね!ふっふっふ…楽しみだ♪」

「カズミ様……、くすっ♪」



突然子供っぽくなったカズミを見て、シズナの顔に思わず笑みがこぼれた。




登場人物評


雷竜レーダー 雷竜族40Lv

約900歳 男性 竜族

【地位】雷竜族長

【武器】なし(主に素手で戦う)

【好物】度数がめちゃくちゃ強い酒

【ステータス】力:55 魔力:48 技:24 敏捷:36 防御:41 退魔力:38 幸運:1

【適正】統率:B 武勇:AA 政治:F 知識:E 魅力:D

【特殊能力】士気高揚 攻勢 自然回復(大) 潜水 天変


雷竜族長。戦闘能力がすべての雷竜族の中でもぶっちぎりの強さを持つ戦闘狂。

竜王以外の相手に負けたことは一度もなく、強力な雷の力ですべてをねじ伏せる。

自分の実力を鼻にかけ、よく相手をバカにする態度をとっていたり

強欲で自己中心的な性格なため他の竜族からの評判は非常に悪いが

戦場では常に先頭に立つことから兵士たちからの評判は悪くない。

よく騒動を起こして周りから煙たがられるが、意外と仲間思いの一面があり

危機に陥った仲間をちゃっかり助けていることも多い。

しかし、恩着せがましいためあまり感謝されないのが玉に疵である。

カズミからもその戦闘能力はかなり評価されているものの、

やはりあまりかかわりたくないとは感じているようだ。


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