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竜王の世紀  作者: 南木
序章:ようこそ竜王様
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チュートリアル:王女シズナの告白…その2『ヒロイン』

今期の一言:男はみんな賭博師だ。でなきゃ結婚なんてしやしない。

フレデリック・リット



結婚【けっこん】

結婚とは、夫婦になること。類似概念に婚姻こんいんがあり、社会的に承認された夫と妻の結合をいう。学術的には「結婚」はもっぱら配偶関係の締結を指し、「婚姻」は配偶関係の締結のほか配偶関係の状態をも含めて指している



「認められません!」

「いいえ、私はカズミ様と結婚したいのです!」


まず激高したのは、滅多なことでは怒らない氷竜のリノアン。

それに対し一歩も引かない構えを見せる姫君シズナ。

んでもって告白された我らが竜王カズミはというと…


(さてさてさてさて。六根清浄サンポール…なんだっけ?まあいいや。)


心の中でエラーを速攻でリカバリー(?)して、あっという間に落ち着いた態度をとることが出来た。改めてシズナに向き合うカズミ。突然の告白にも驚かず、緩みもせずどこまでも真剣な眼差しで見つめる。



「…シズナさん。君がそこまで必死になるのは何か理由があるんじゃない?違うかな?」

「それは、その…。」

「図星だったようだね、話してくれないかな。あっと、ここで話すのもアレだよね…部屋に戻ろうか。」



カズミが思うには、たとえ異世界であろうといきなり結婚してくれというのには

それなりの理由があるのではないかと考える。普通、たとえ一目ぼれだったとしてもまずは「結婚を前提でおつきあい」からだろうし、結婚がそんな単純なものではないことはシズナだって自覚しているはずだ。


厨房から夜の廊下を歩いて部屋に戻る間、

シズナはなかなか理由を話そうとしなかった。

恐らくリノアンがいるから話せないのだろう。

リノアンもシズナを大いに警戒し始めているため、

余計話しにくい空気を作ってしまっている。




「竜王様…やはり私が……」

「リノアン。ここからは僕とシズナだけの問題だ。君はゆっくり休むといい。」

「ですが…!」

「竜王命令だ。」

「……っ、承知いたしました。」


(ごめんね、リノアン。)


またしても部屋の中まで一緒に入ってきそうだったリノアンを無理やり追い払い、カズミとシズナは二人きりで竜王の私室の戻ってきた。リノアンを竜王命令で無理やり下がらせてしまったことに少々後ろめたさを感じるが、こうでもしないとシズナが落ち着いて話をすることが出来なくなってしまう。

シズナをベッドに座らせると、自分はその向かいに立ったまま話を始めた。



「…シズナさん。君はミラーフェンという国のお姫様だってさっき話してくれたよね。ということは…だ。シズナさんは政略結婚…要するに望まない結婚を押し付けられていたでしょう。そして、望まない結婚をするくらいなら僕を選んだ…。違うかな?」

「は、はい!まさに、その通りなのです!」



この時代は人権よりも国家の利益が優先することは自然なことだ。

そして王女は他国の者と婚姻を結び、国同士の結束を図ることに一番の価値がある。そこには本人の意思など全く関係ない。


「わかってはいるんです。私は国や民を守るためにすべてを捧げなくてはいけない。例えそれが私が望まないものだとしても、私には従う以外の選択肢はありません。それが王族である私の使命……。逃れられない運命…。」

「なるほど、そのあたりは心得ているようだね。立派だと思うよ、うん。」


カズミは思った。この時代の人は少なくとも自分の世界の同年齢の人よりも立派な精神を持っていると。しかしそれは、立派な精神がないと生きていけないからと考えると、それはそれで問題だとも思ってしまう。

少なくとも平和な時代に武士道や騎士道とかは必要ない。


「カズミ様…?」

「あ、ごめん。ちょっと思うところがあってね。

で…結局こうして竜の国に連れてこられてしまったから、

もうシズナさんはそういった義務からある程度解放されたわけで。

ふむふむ……そんなに嫌なの、結婚相手の人?」

「はい!それはもう!この際言っておきますが、生理的に嫌なのです!

お父様…いえ、国王様のご命令でなければあんな人との結婚などごめんです!」

「うわ~、はっきり言うね。いっそ清々しいほどだよ。

どこの誰だか知らないけど、ここまで嫌われるとなんか可哀そうだね。」

「相手の方の名はオラシオ・ティボー・セヴラン・セスカティエ。

グランフォード地方で一、二を争う大国、セスカティエ王国の第三王子です。

年齢は確か…30代前半で性格はその……お察しください。」

「把握した。君もまたとんでもない貧乏くじを引いちゃったようで。」


おそらく、このままではハー○クイン系ではなく凌辱系物語一直線だ。

逃げ出したくなる気持ちもよくわかる。


「君としてはそんな男と結ばれる位だったら、僕の方がましだと…。」

「それは違います!!」

「え?」


カズミは今までの自分の勘が殆ど当たっていたせいか、シズナが今までになく真剣に「違う」と言ってきたことに驚いた。一体何が違うのか全く理解できていなかったが、実はカズミは最も重要なとっころで大きな勘違いをしている。



「私は…結婚のお相手がだれでもいいとは思っていません!

それほど私は…無責任な女ではないつもりです。」

「ご、ごめん……君には失礼なことを言ってしまったようだね。」

「いいえカズミ様は全然わかっていません!」


そう言うとシズナは、ベットから立ち上がり

呆然と立つカズミの体にいきなり抱きついて、その胸に顔をうずめた。

たったそれだけで、落ち着いて余裕があった彼の心は、

まるで大震災があったかのごとく未曾有の混乱にさらされることになる。



「私は…カズミ様が好きなのです。カズミ様でなければ嫌なのです!一目ぼれだから…身体と心が弱っているから……そう思われるかもしれませんが、私にとってカズミ様はまさに運命の人なんです!これだけ言っても、私の想いは…私の思いは…っ!伝わらない…のでしょうか?」

「シズナさん……でも…」

「私のことはお嫌い…でしょうか?魅力のない女性…なのでしょうか?」

「そんなことはないよ!」


カズミもまた、シズナの体をぎゅっと抱きしめる。


「僕から見てシズナさんはとっても魅力的だよ。儚げで、でも芯は強くて、それに顔だってとてもかわいいし…。むしろ僕なんかにはもったいないくらい。きっと世界には僕以上に君に合う男性は数えきれないほどいるはず。それなのに、その場にいたからってだけでシズナさんをもらってしまうのは、君の将来的な幸せを失わせてしまうんじゃないかって……。」

「…私が、魅力的?…本当ですか?」

「本当さ!僕なんかじゃ到底釣り合わないくらい…!」


竜王で釣り合わないってどんだけー


「嬉しいです。カズミ様にとって私が魅力的に見えるなんて。…私にだって意地があります。今すぐ結婚できなければ、婚約でも構いません。いえ、側室…愛人だって結構です!カズミ様と結ばれるためならどんなことでもしてみせます。ですからどうか…私をずっと傍においてください。」

「そっか…。」


どうやら、カズミは何か決心したらしい。

抱きかかえていた手を腰から腕の方へ移すと、

そのままシズナをベットに押し倒した!


「…っ!カズミ様!」

「シズナさん…何でもするって言ったよね。」

「はい、覚悟はできていますから…」

「そう。」


覆いかぶさるような形で見つめられるシズナの表情は、やや怯えてはいるものの、それ以上にこれから起こるであろうことに対する期待と羞恥で染まり始めていた。


が、残念ながらカズミはシズナの期待を裏切ることになる。



「三か月…我慢できるかな?」

「へ?」

「君との婚約期間は三か月…90日だ。その日まで僕も君も、結婚したいという気持ちに違いがなければ、その時は正式に結婚しよう。やっぱり出会ってその日に結婚というのはいくらなんでも軽すぎるからね。もっとお互いのことを知ってからでも、遅くはないと思うよ。大丈夫、僕は逃げたりしないから。ゆっくりお互いのことを理解していこうよ。」

「…わかりました。

カズミ様がそうおっしゃられるのであれば、私は喜んで従います。」

「ありがとう。僕はまだこの世界に来たばかりだから、まだまだ不安なことがたくさんある。でも三か月たてばきっと慣れてくると思う。だから、これから一緒に頑張っていこう。」

「はいっ!」


その気になれば今すぐにでもゴールインできるというのに、カズミは敢えて遠回りを選んだ。それはただカズミがまだこの世界に慣れていないからというだけではない。


実は、カズミは元の世界で三回も失恋を経験している。

そのせいか、彼は恋愛に対してかなり慎重になってしまうのだ。

今度こそ失敗したくない。そのためには確実に確実を重ねていく。



「さあ、もう夜もだいぶ遅くなったようだし、そろそろ寝ようか。目が覚めたばかりで眠くないかもしれないけど、ちゃんと寝ないと健康に良くないからね。」

「わかりました。」

「うん、じゃあ…おやすみ。また明日。」


ようやくシズナとのやり取りが一段落したので、

あらためて一日を終えるため就寝に入る。

時間的に日付はもうとっくに変わっているだろう。

明日はまたやることがたくさんありそうなので、しっかり寝ておかなければ。


今になって初めて堪能できるベットの寝心地はとても素晴らしかった。

これならば、眠気も相まってすぐに夢の中にダイブできる。


「あの、一緒に寝たいので失礼しますね。」

「ふぇ?」


ところが、何を思ったかシズナは自分のベットではなくカズミのベットに強引にもぐりこんでくる。実は結構図太いんじゃないかと思いつつ、ここまでやられるともう追い出す気になれなかった。



「うふふ…カズミ様と一緒にいると体だけでなく心まで安らかになってきて…、あ、いえ!私がここまで大胆になれるのはカズミ様だけですから!」

「もう……仕方がないな。ほら、もっと寄って。」

「はい♪」



そのまま二人はお互いの体のぬくもりを感じながら眠りに落ちた。



カズミが竜王の体に憑依して最初の日はようやく終わる。

非常に長い一日だったが、それだけ成果はとても多かった。



竜族国家アルムテン




竜王復活により、今大いなる歴史の流れの中心にその輝きを放つ。









シズナ「ところで竜と人類の間に子供ってできるんですか?」

カズミ「………できるんじゃないかな。」

シズナ「子供ってどうやって作るんですか?」

カズミ「そこから!?」

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