穴の破けた風船みたいに
あなたがいま、穴の破けた風船みたいに
明るく自由な空から重たく暗い水面へ
フウラリ クゥラリ 落ちていくのを
不安げに体揺らして 堕ちていくのを
つめたいまなざしでわたしはみている
知っているよ、くるしいのでしょう
体から身軽な空気が抜けていくのが
穴を破いた罪悪が心を蝕むのが
あなたは自責に耐えられないでいるのだ
暗い水底までおいで そうすれば
あなたの捨てた選択肢は追いかけてこないから
逃げられるよ 手を握って慰めてあげる
あなたの体がみるみる急降下し 水面まで
もうすこしだというとき、口の端持ち上げ
今にも泣き出しそうな茶色の瞳を
のぞきこんで 気づいた
ちがう、あなたではない
逃避を救いと誤解したのは
泣きそうな瞳に安堵していたのは
おんなじひとを見つけて縋りたかったのは
あなたではない、そうではなくて
水面に映った わたしだったのだ